宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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【545】
「・・・寂しい」
ぽつりと呟いた君の瞳から涙が一粒零れ落ちる。
それがあまりにきれいで、思わず触れてしまいそうになった。
無意識に伸ばした指を、はっと気付いて途中で押し留める。
半透明の君の体。
体を失くしてしまった君のためにかけた術は、君の姿をこの薄暗い部屋にとどめるだけのもの。
触れてしまえば、術は儚く溶けて、君は消えてしまう。
だから、見えるけど、話せるけど、君を抱きしめることも、涙を拭いてあげることも僕にはできないんだ。
「寂しいよ」
濡れた瞳が僕を見る。
術をかけてからずっと、笑ったことがない瞳。
僕は、間違っていたのかもしれない。
君を失いたくなくて必死だったけど、君はずっと寂しいままで。
僕も、苦しいままで。
だから。
「わかったよ。もう泣かないで」
僕は指を伸ばすと君の涙をぬぐった。
君はくすぐったそうに目を伏せる。
少し冷たい、でも昔のままの柔らかな頬に触れて、そしてそっと抱きしめる。
ああ、ずっと、こうしたかったんだ。
きみを失うのが怖くてできなかったけど、君の笑顔を見たいから。
君が僕の背中に腕をまわす。
触れた部分から術が溶けていく。
揺らいで消えていく君に、僕は微笑みかけた。
「いままで、寂しい思いをさせてごめんね。君が寂しくないようにすぐに追いつくから、ちょっとだけ待ってて」
「・・・うん、待ってる」
濡れた瞳のまま微笑み返して、君は僕の腕の中から消えた。
ずっと見たかったその笑顔だけを思い浮かべて、僕はナイフを振りかざした。
お題:「思わず触れてしまいそうになった」
3つの恋のお題:思わず触れてしまいそうになった/闇にさらわれたかのよう/地下鉄のホームで君を見た http://shindanmaker.com/125562 より
拍手ありがとうございます。
連作は難しいですね。
基本こんな短い文章で人物描写までするのは無理があるのは分かっているのですが、つい、設定や名前をつけたくなるんですよね(^^;)。
区切りがあることで印象が変わってくるのは、文章力不足のせいです。
精進します。
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「・・・寂しい」
ぽつりと呟いた君の瞳から涙が一粒零れ落ちる。
それがあまりにきれいで、思わず触れてしまいそうになった。
無意識に伸ばした指を、はっと気付いて途中で押し留める。
半透明の君の体。
体を失くしてしまった君のためにかけた術は、君の姿をこの薄暗い部屋にとどめるだけのもの。
触れてしまえば、術は儚く溶けて、君は消えてしまう。
だから、見えるけど、話せるけど、君を抱きしめることも、涙を拭いてあげることも僕にはできないんだ。
「寂しいよ」
濡れた瞳が僕を見る。
術をかけてからずっと、笑ったことがない瞳。
僕は、間違っていたのかもしれない。
君を失いたくなくて必死だったけど、君はずっと寂しいままで。
僕も、苦しいままで。
だから。
「わかったよ。もう泣かないで」
僕は指を伸ばすと君の涙をぬぐった。
君はくすぐったそうに目を伏せる。
少し冷たい、でも昔のままの柔らかな頬に触れて、そしてそっと抱きしめる。
ああ、ずっと、こうしたかったんだ。
きみを失うのが怖くてできなかったけど、君の笑顔を見たいから。
君が僕の背中に腕をまわす。
触れた部分から術が溶けていく。
揺らいで消えていく君に、僕は微笑みかけた。
「いままで、寂しい思いをさせてごめんね。君が寂しくないようにすぐに追いつくから、ちょっとだけ待ってて」
「・・・うん、待ってる」
濡れた瞳のまま微笑み返して、君は僕の腕の中から消えた。
ずっと見たかったその笑顔だけを思い浮かべて、僕はナイフを振りかざした。
お題:「思わず触れてしまいそうになった」
3つの恋のお題:思わず触れてしまいそうになった/闇にさらわれたかのよう/地下鉄のホームで君を見た http://shindanmaker.com/125562 より
拍手ありがとうございます。
連作は難しいですね。
基本こんな短い文章で人物描写までするのは無理があるのは分かっているのですが、つい、設定や名前をつけたくなるんですよね(^^;)。
区切りがあることで印象が変わってくるのは、文章力不足のせいです。
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【544】
「やっと見つけた」
少し息切れしている声に顔を上げると、そこには柔らかそうな茶色の髪の少年が立っていた。
「こんな騒がしいところにおられるので、探し当てるのに苦労しました」
「・・・あんた、誰?」
もうだいぶ夜も遅くなって、ちょっとガラの悪い連中が増えてきたゲーセンで、その子はなんだか浮いていた。その子っていっても、中学生、頑張れば高校生で通りそうな男の子だから、大してあたしと変わらないんだろうけど、とにかく育ちの良さそうな雰囲気で、悪目立ちしている。
「お初にお目にかかる。我は御身の式。西の鍵を護りし血脈に連なりし姫。古の制約によりて、お迎えに参上しました」
「はあ?」
なに言ってんだろう。
いきなり彼から飛び出した時代劇みたいな台詞に呆然としたあたしを気にもとめず、彼はにっこり微笑むとあたしの手を握った。
そのまま、あたしの前にひざまずき、手を自分の額に押し当てる。
「ちょっと!なにすんのよ!」
「刃となり、盾となりて、終生変わらず御身を護ると誓う」
その時、確かにあたしは感じた。
当たっている額から、あたしの手に、何か暖かいものが流れ込むのを。
自分の中の何かが、それを待っていたと、涙が出るほど嬉しいと震えるのを。
だから、どうすればいいのかあたしはわかっていた。
だけど。
あたしは次の瞬間、彼を振り払って、あとずさった。
「・・・駄目・・・」
「姫?」
拒絶されるとは思ってもいなかったのか、彼が驚いてあたしを見上げる。
そうだ。
知っている。
彼はあたしの刃。
あたしの盾。
死ねといえば、喜んで身を投げ出す道具。
血に濡れた指先が脳裏をよぎる。
「あんたなんか、知らない!二度とあたしの前に現れないで!」
叫んで、あたしはその場から逃げ出した。
彼はもう誓いを口にしてしまった。
だからもう遅いとはわかっていたけど、そうすることしか出来なかった。
お題:「夜のゲームセンター」で登場人物が「誓う」、「鍵」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927 #rendai
えーっと、よくあるパターンですね?(^^;;;)
本日はちょっと気力が足りなくて、中途半端で申し訳ないです。
あ、昨日のお話は好評だったようでよかったです。
なにげに十夜さんは気に入っていますw
ぜひ声はゆっちーでご想像ください(イメージボイスはぬらりひょんの孫のぬらりひょん様/若い頃w)。
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「やっと見つけた」
少し息切れしている声に顔を上げると、そこには柔らかそうな茶色の髪の少年が立っていた。
「こんな騒がしいところにおられるので、探し当てるのに苦労しました」
「・・・あんた、誰?」
もうだいぶ夜も遅くなって、ちょっとガラの悪い連中が増えてきたゲーセンで、その子はなんだか浮いていた。その子っていっても、中学生、頑張れば高校生で通りそうな男の子だから、大してあたしと変わらないんだろうけど、とにかく育ちの良さそうな雰囲気で、悪目立ちしている。
「お初にお目にかかる。我は御身の式。西の鍵を護りし血脈に連なりし姫。古の制約によりて、お迎えに参上しました」
「はあ?」
なに言ってんだろう。
いきなり彼から飛び出した時代劇みたいな台詞に呆然としたあたしを気にもとめず、彼はにっこり微笑むとあたしの手を握った。
そのまま、あたしの前にひざまずき、手を自分の額に押し当てる。
「ちょっと!なにすんのよ!」
「刃となり、盾となりて、終生変わらず御身を護ると誓う」
その時、確かにあたしは感じた。
当たっている額から、あたしの手に、何か暖かいものが流れ込むのを。
自分の中の何かが、それを待っていたと、涙が出るほど嬉しいと震えるのを。
だから、どうすればいいのかあたしはわかっていた。
だけど。
あたしは次の瞬間、彼を振り払って、あとずさった。
「・・・駄目・・・」
「姫?」
拒絶されるとは思ってもいなかったのか、彼が驚いてあたしを見上げる。
そうだ。
知っている。
彼はあたしの刃。
あたしの盾。
死ねといえば、喜んで身を投げ出す道具。
血に濡れた指先が脳裏をよぎる。
「あんたなんか、知らない!二度とあたしの前に現れないで!」
叫んで、あたしはその場から逃げ出した。
彼はもう誓いを口にしてしまった。
だからもう遅いとはわかっていたけど、そうすることしか出来なかった。
お題:「夜のゲームセンター」で登場人物が「誓う」、「鍵」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927 #rendai
えーっと、よくあるパターンですね?(^^;;;)
本日はちょっと気力が足りなくて、中途半端で申し訳ないです。
あ、昨日のお話は好評だったようでよかったです。
なにげに十夜さんは気に入っていますw
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【543】
気がつくと、そこは小舟の中だった。
水の音と、きいきいという櫂の動く音がする。
ゆらゆらと揺られながらうっすらと目を開けて、彼女は船尾で櫂を操っている男を見上げた。
まだ夜だった。
星明かりではやはり顔は良く見えないが、動きに合わせて無造作に首の辺りで結わえただけの髪が踊るのが見えた。
その揺れて時折風になびく髪がきれいだと思った。
「ああ、気がついたか?」
笑みを含んだ声が降ってきて、彼が気付いていると知った彼女は、体を起こすと座りなおした。
逃げる気はない。
泳ぐことは出来ないのだから、水に入るのは死ぬようなものだし、それならばもっと切羽詰ってからでも遅くはない。
ただ、自分はどうなるのか、それが知りたかった。
「ここはどこか聞いてもいいですか?」
「すまねえな。それは言えねえ。だが、三途の川の渡し舟じゃないことは確かだ」
冗談めかしているが、当分は生かされているということなのだろう。
「私は身寄りもなく、お金も持ち合わせていません。もしお金が目当てでしたら、満足するほどはお渡しできないと思います」
「知っている」
「知ってる?」
驚いて目を見開くと、男は苦笑して河岸に舟を寄せた。流れないように固定させてから、彼女の前にどかりとあぐらをかいて座る。
「ああ、知っている。あんたが一人で暮らしていることも、人には言えぬ力を持っていることも、その力を使っても代価は受け取ろうとしないことも。だから、裕福でないこともわかっている。若菜殿」
「あのようなひと気のない場所で行き会ったのは、偶然ではなかったのですね」
ため息をつくと、若菜はそっと目を伏せた。
「そうだな。俺の仕事は、あんたを調べ、待ち伏せてかどわかすことだったからな。あんたの持つ、先を見通す力。それを主が欲しがっている。あんたをかどわかし、強引に婚姻を結び、一生その力を自分のために使わせる、そういう計画だ。さっきは三途の川じゃねえと言ったが、あんたにとっちゃ似たようなものかも知れねえ」
若菜はため息をついて、口調のわりには優しい表情を浮かべている男を見つめた。
「自分が絡むと、先を見通すことは出来ません。でも、いつかこうなるのではないかと思っていました」
人は誰しも未来を知りたがる。特に欲が絡む出来事ならなおさらだ。
そして、いくら隠していても、勘が鋭いと誤魔化しても、噂は流れるものなのだ。
「特に身を守る術も持たない女の身ですから、自害する他、逃れる術はありません。でも、貴方に止められてしまうでしょうね」
「物分りが良すぎるのも、損だな。例えば、こんな未来はどうだい?」
「え?」
聞き返す前に、体がふわりと浮いた。
気がつけば、男の肩に担がれている。そして、目の前に刀が差し出された。
「鞘、握れ」
呆気にとられ、言われるがままに鞘をつかむと、男は空いている片手でその鞘から刀を引き抜いた。若菜の手には殻の鞘だけが残る。
「何を?!」
「あんたをあの強欲じじいに渡すのが、ちょいと惜しくなったのさ。俺は元々盗人だからな。このままあんたを盗むことにする」
そして、闇に向かって彼は大声を張り上げた。
「そういうことだからよ、このかまいたちの十夜に斬られてもあのじじいに義理立てしようって奴はかかって来な!」
「裏切るのか!」
「させぬぞ、十夜!」
どこに潜んでいたのか、幾人もの影が現れる。
「やっぱり監視してやがったか。若菜殿、その鞘落とさないでくれよ?」
十夜と名乗った男は、そう言うと、若菜の返事も聞かずに走り出した。
女一人担いでいるとは思えない身のこなしで、襲い掛かる影をなぎ払っていく。
若菜は鞘を彼の剣の邪魔にならぬようしっかりと握って、何故か彼の言いなりに担がれたままになっていた。
自分の未来は見えない。
だが、強引とも言える力で流されていく自分の未来に不安は感じなかった。
そして、彼が刀を振るうたびに揺れる髪がやはりきれいだと、何故かそんなことをぼんやり考えていた。
お題:「渡し舟」、「鞘」、「婚姻」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
拍手ありがとうございます。
これの前の話で、娘さんかどわかされて、「えええ?」って感じだったので、続きを書いてみました。
どないでしょう?(^^)
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気がつくと、そこは小舟の中だった。
水の音と、きいきいという櫂の動く音がする。
ゆらゆらと揺られながらうっすらと目を開けて、彼女は船尾で櫂を操っている男を見上げた。
まだ夜だった。
星明かりではやはり顔は良く見えないが、動きに合わせて無造作に首の辺りで結わえただけの髪が踊るのが見えた。
その揺れて時折風になびく髪がきれいだと思った。
「ああ、気がついたか?」
笑みを含んだ声が降ってきて、彼が気付いていると知った彼女は、体を起こすと座りなおした。
逃げる気はない。
泳ぐことは出来ないのだから、水に入るのは死ぬようなものだし、それならばもっと切羽詰ってからでも遅くはない。
ただ、自分はどうなるのか、それが知りたかった。
「ここはどこか聞いてもいいですか?」
「すまねえな。それは言えねえ。だが、三途の川の渡し舟じゃないことは確かだ」
冗談めかしているが、当分は生かされているということなのだろう。
「私は身寄りもなく、お金も持ち合わせていません。もしお金が目当てでしたら、満足するほどはお渡しできないと思います」
「知っている」
「知ってる?」
驚いて目を見開くと、男は苦笑して河岸に舟を寄せた。流れないように固定させてから、彼女の前にどかりとあぐらをかいて座る。
「ああ、知っている。あんたが一人で暮らしていることも、人には言えぬ力を持っていることも、その力を使っても代価は受け取ろうとしないことも。だから、裕福でないこともわかっている。若菜殿」
「あのようなひと気のない場所で行き会ったのは、偶然ではなかったのですね」
ため息をつくと、若菜はそっと目を伏せた。
「そうだな。俺の仕事は、あんたを調べ、待ち伏せてかどわかすことだったからな。あんたの持つ、先を見通す力。それを主が欲しがっている。あんたをかどわかし、強引に婚姻を結び、一生その力を自分のために使わせる、そういう計画だ。さっきは三途の川じゃねえと言ったが、あんたにとっちゃ似たようなものかも知れねえ」
若菜はため息をついて、口調のわりには優しい表情を浮かべている男を見つめた。
「自分が絡むと、先を見通すことは出来ません。でも、いつかこうなるのではないかと思っていました」
人は誰しも未来を知りたがる。特に欲が絡む出来事ならなおさらだ。
そして、いくら隠していても、勘が鋭いと誤魔化しても、噂は流れるものなのだ。
「特に身を守る術も持たない女の身ですから、自害する他、逃れる術はありません。でも、貴方に止められてしまうでしょうね」
「物分りが良すぎるのも、損だな。例えば、こんな未来はどうだい?」
「え?」
聞き返す前に、体がふわりと浮いた。
気がつけば、男の肩に担がれている。そして、目の前に刀が差し出された。
「鞘、握れ」
呆気にとられ、言われるがままに鞘をつかむと、男は空いている片手でその鞘から刀を引き抜いた。若菜の手には殻の鞘だけが残る。
「何を?!」
「あんたをあの強欲じじいに渡すのが、ちょいと惜しくなったのさ。俺は元々盗人だからな。このままあんたを盗むことにする」
そして、闇に向かって彼は大声を張り上げた。
「そういうことだからよ、このかまいたちの十夜に斬られてもあのじじいに義理立てしようって奴はかかって来な!」
「裏切るのか!」
「させぬぞ、十夜!」
どこに潜んでいたのか、幾人もの影が現れる。
「やっぱり監視してやがったか。若菜殿、その鞘落とさないでくれよ?」
十夜と名乗った男は、そう言うと、若菜の返事も聞かずに走り出した。
女一人担いでいるとは思えない身のこなしで、襲い掛かる影をなぎ払っていく。
若菜は鞘を彼の剣の邪魔にならぬようしっかりと握って、何故か彼の言いなりに担がれたままになっていた。
自分の未来は見えない。
だが、強引とも言える力で流されていく自分の未来に不安は感じなかった。
そして、彼が刀を振るうたびに揺れる髪がやはりきれいだと、何故かそんなことをぼんやり考えていた。
お題:「渡し舟」、「鞘」、「婚姻」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
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【542】
三日月が空の端に引っかかっている。
星も出ているが、やはり月が大きくないと夜は深くどこかに何かが潜んでいるような気がして、彼女はふるりと身を震わせた。
本来ならこんな夜更けに外に出るつもりではなかったのだ。
最近は物騒な噂が多いし、闇が深くなればあやかしも現れる。だが、少し遠い所に嫁いだ幼馴染の見舞いがことのほか長引いてしまったのだった。
「早く、帰ろう」
呟いて、近道をしようと大通りから路地へ入る。
しかし、その足がふと、止まった。
「誰?」
目の前に誰かが立っていた。
暗くて、提灯をかざしても顔は見えない。かろうじて着流しの男であることは見て取れた。
「すみません、通してください」
男は路地の中央にたたずんでいた。脇をすり抜けるにもほとんど隙間はない。困った彼女の声に、ふっと笑う気配がした。
「なるほど、梅ほど香らず、桜ほど華麗ではないが、桃の可憐さを持つ、って感じだな。年頃の可愛い娘さんが供も連れずに外出とは、物騒じゃねえかい?」
「あの・・・」
「だから、こんな目に遭うんだぜ。すまねえな」
気付いたら、すぐそばににやりと笑う男の顔があった。
そして、首の後ろを軽く叩かれる。
体から力が抜ける。
「あ・・・」
崩れる自分の体が男に抱きとめられるのを感じた。
倒れそうになった拍子に、懐から地面に小さな匂い袋が転がり落ちる。
幼い頃、幼馴染と交換したそれに手を伸ばそうとして、彼女は闇に落ちていくように意識を失った。
お題:「三日月」、「匂い袋」、「桃」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
「かどわかし」とは誘拐のことです。
今日は頭が死んでいる・・・。
風邪ひいてて。
そのわりに日常雑記は書きまくりですが(^^;)。
拍手ありがとうございます。
そう、犬は大喜びしているよりも、ちょっとしょぼくれている時が可愛いと思います。
どちらにせよ、ストレートな表現をするイメージですよね。
要は、どちらも可愛い♪
あやかしbotでついのべをするのはどうなのかな、と自分でも思わないでもないのですが、現在本家のアカを鍵つきにしているので、ハッシュタグつけても見えないし、でも、月一のついのべデーくらいは参加したいし、で、時々そちらでついのべを落としてます。
創作にもbotにも中途半端ですが、まあ、当分はこの形式で。文句が来るほど見てる人もいないし(^^;)。
ちなみにbotは少しずつ言葉増やしています。
最近だと「かまいたち」と「豆腐小僧」が呼ばれると出てきます。あと、「雪」、「金平糖」、「卵」、「元気」なんかに反応するようになりました。
そのうち、説明ページにも付け加えておきますね。
ツイッターの鍵、なかなか外す踏ん切りがつかないな・・・(^^;)。
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三日月が空の端に引っかかっている。
星も出ているが、やはり月が大きくないと夜は深くどこかに何かが潜んでいるような気がして、彼女はふるりと身を震わせた。
本来ならこんな夜更けに外に出るつもりではなかったのだ。
最近は物騒な噂が多いし、闇が深くなればあやかしも現れる。だが、少し遠い所に嫁いだ幼馴染の見舞いがことのほか長引いてしまったのだった。
「早く、帰ろう」
呟いて、近道をしようと大通りから路地へ入る。
しかし、その足がふと、止まった。
「誰?」
目の前に誰かが立っていた。
暗くて、提灯をかざしても顔は見えない。かろうじて着流しの男であることは見て取れた。
「すみません、通してください」
男は路地の中央にたたずんでいた。脇をすり抜けるにもほとんど隙間はない。困った彼女の声に、ふっと笑う気配がした。
「なるほど、梅ほど香らず、桜ほど華麗ではないが、桃の可憐さを持つ、って感じだな。年頃の可愛い娘さんが供も連れずに外出とは、物騒じゃねえかい?」
「あの・・・」
「だから、こんな目に遭うんだぜ。すまねえな」
気付いたら、すぐそばににやりと笑う男の顔があった。
そして、首の後ろを軽く叩かれる。
体から力が抜ける。
「あ・・・」
崩れる自分の体が男に抱きとめられるのを感じた。
倒れそうになった拍子に、懐から地面に小さな匂い袋が転がり落ちる。
幼い頃、幼馴染と交換したそれに手を伸ばそうとして、彼女は闇に落ちていくように意識を失った。
お題:「三日月」、「匂い袋」、「桃」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
「かどわかし」とは誘拐のことです。
今日は頭が死んでいる・・・。
風邪ひいてて。
そのわりに日常雑記は書きまくりですが(^^;)。
拍手ありがとうございます。
そう、犬は大喜びしているよりも、ちょっとしょぼくれている時が可愛いと思います。
どちらにせよ、ストレートな表現をするイメージですよね。
要は、どちらも可愛い♪
あやかしbotでついのべをするのはどうなのかな、と自分でも思わないでもないのですが、現在本家のアカを鍵つきにしているので、ハッシュタグつけても見えないし、でも、月一のついのべデーくらいは参加したいし、で、時々そちらでついのべを落としてます。
創作にもbotにも中途半端ですが、まあ、当分はこの形式で。文句が来るほど見てる人もいないし(^^;)。
ちなみにbotは少しずつ言葉増やしています。
最近だと「かまいたち」と「豆腐小僧」が呼ばれると出てきます。あと、「雪」、「金平糖」、「卵」、「元気」なんかに反応するようになりました。
そのうち、説明ページにも付け加えておきますね。
ツイッターの鍵、なかなか外す踏ん切りがつかないな・・・(^^;)。
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【541】
朝は、コーヒーとパンと目玉焼き。
ちょっと寝坊するからばたばたと急いで食べて、でも僕のご飯だけはちゃんと用意して、そして、僕を抱きあげて頬ずり。
スーツに毛がついちゃうと後で困るから、僕はちょっと控えめに尻尾をよけて、鼻と鼻をくっつけていってらっしゃいの挨拶。
僕を撫でる指先には、昨夜料理をしているときに包丁で切った傷。
かっちりとしたスーツには不釣合いの可愛い絆創膏が貼ってあって、僕は思わずくすりと笑う。
それがわかったのか、君はちょっと僕の額をつついた。
「笑うな」
そして、大きなかばんを肩に掛ける。
「いってきます」
いってらっしゃい。早く帰ってきてね。
帰ってきたら、ちょっとだけでいいから遊んでね。
約束だよ。
ぱたん、とドアが閉まると、がらんとした部屋に僕だけが残された。
君が帰ってくるまで、僕はまた一人で留守番。
それが僕のお仕事だもの。ちゃんとできるよ。大丈夫。
でもね、お昼寝の時、人間になって君を追いかけていく夢を見たよ。
なれるかな。
なりたいな。
そして、君と手を繋いで歩くんだ。
いつか。
お題:「久遠の今日のお題は『目玉焼き』『絆創膏』『約束』です。 http://shindanmaker.com/14509 #twnv_3
猫一人称は、なんだか書いてて楽しいです。
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朝は、コーヒーとパンと目玉焼き。
ちょっと寝坊するからばたばたと急いで食べて、でも僕のご飯だけはちゃんと用意して、そして、僕を抱きあげて頬ずり。
スーツに毛がついちゃうと後で困るから、僕はちょっと控えめに尻尾をよけて、鼻と鼻をくっつけていってらっしゃいの挨拶。
僕を撫でる指先には、昨夜料理をしているときに包丁で切った傷。
かっちりとしたスーツには不釣合いの可愛い絆創膏が貼ってあって、僕は思わずくすりと笑う。
それがわかったのか、君はちょっと僕の額をつついた。
「笑うな」
そして、大きなかばんを肩に掛ける。
「いってきます」
いってらっしゃい。早く帰ってきてね。
帰ってきたら、ちょっとだけでいいから遊んでね。
約束だよ。
ぱたん、とドアが閉まると、がらんとした部屋に僕だけが残された。
君が帰ってくるまで、僕はまた一人で留守番。
それが僕のお仕事だもの。ちゃんとできるよ。大丈夫。
でもね、お昼寝の時、人間になって君を追いかけていく夢を見たよ。
なれるかな。
なりたいな。
そして、君と手を繋いで歩くんだ。
いつか。
お題:「久遠の今日のお題は『目玉焼き』『絆創膏』『約束』です。 http://shindanmaker.com/14509 #twnv_3
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
カウンター