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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【604】

深い闇夜にしゃなりと清らかな音が鳴る。
祓い師は、呪を編みこんだ紅き組紐を手繰る。
紐は邪を縛り封じ、先に繋がる鈴の音は邪を祓う力を持つと言われる。
だがそれも、まずは目の前の鬼に紐が触れねば意味はない。


なぜなら、この祓い師はまだ力が足りぬ。



だから、鬼は嗤う。
これは逆しまの鬼ごっこだと。
さあ、手の鳴る方へ来るが良い。
その手で触れて捕まえてみよ。



捕まえるまではその目は我しか見ぬであろう、という呟きは、必死な祓い師の耳には届かなかった。
 


お題:「闇夜」、「組紐」、「鬼」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578


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【556】

 経師屋の仕事と言うと、ふすま・障子の張替えや掛軸の表装、和本の装丁なんかが仕事だが、これはさすがに専門外だろう、と俺は途方に暮れていた。
 花街随一の妓楼「宵月楼」の主人は、おもねるでもなく脅すでもなく、ほんの茶飲み話のように微笑んで上質な紙を俺の前に置く。
「護符と言ったって、神仏の加護をほしいわけじゃございません」
 湯飲みを両手で持ち、一口茶を含んで、また口を開く。
「欲しいのは、よこしまなものを近寄らせない絵です。例えば、鼠には猫、蛇には鷲、天敵となるものを魂を込めて描いていただきたいのです」
 穏やかに言いながらも、その目は鋭くこちらを探っている。
 これは、噂を聞いたんだなと俺は思い至ってため息をついた。
 絵を描くことで紙にものを封じ込める技を身につけたことは、誰にも言っていないつもりだったが。
 友である妖狐のしかめ面が脳裏に浮かんで、逆に俺の頭は冷えた。
 なるようになれ、だ。
「で、何を描けばよろしいんで」
 平静を装い訪ねると、主人はにやりと人の悪い笑みを浮かべた。
「悪しき心を持つ鬼には、天女を」
 ああ、そうかい。
 まったく食えない野郎だ。
 思うに俺の噂を半分も信じてはいないのだろう。試してものになればよし、ならなくてもそれなりの美人画を、しかも自分の妓楼の花魁を使って描かせれば、版元に売るつてはいくらでもあるだろう。どちらに転んでも出しただけの画料のもとはとるつもりなのだ。
 こちらも馬鹿正直に力を使うわけにはいかないが、小手先で誤魔化せる相手でもない。
 裏の人間にも繋がっているから、下手をうてば命が危うい。
 さて、どうするか。
 黙った俺に、主人は鷹揚に頷いて見せた。
「即答でなくともよろしいですよ。花魁の顔見せもかねて、三日後に使いをやりましょう」
 逃げるなら、それまでに。
 そう言われているようで、俺は逆に笑みをうかべた。
「お待ちしております」
 受けてたってやる、くそじじい。
 狐にこっぴどく叱られそうだなと思い至った時には、後の祭りだった。


お題: 「花街」、「護符」、「経師屋」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
おかしい。
時代物も書かなきゃ、と思って始めたのに、刀も侍も出てこない・・・w
一応、江戸の話っぽいかんじということでご容赦ください。
出てくる妖狐は琥珀さんです。


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【554】 万華鏡

季節が巡るたび、違う君に出会う。
春の君、夏の君、秋の君、冬の君。
いろんな君は万華鏡のように表情を変える。
そうやって君を少しずつ知って、そのたびにどんどん好きになる。
ねえ、季節が一巡りしてまた春が来る頃、僕はどれだけ君を好きになっているかな。

お題:ついのべデー12月「一巡、ふりだしに戻る」

【555】 仇討ち

それは永遠の連鎖。
親の仇を子が討ち、討たれた仇の子がその相手を仇と狙い、終わることなく受け継がれる。
終わらせるにはこれしかない。
俺はお前の刃を正面から受け止めた。
俺に身寄りはない。これで振り出しに戻る。
泣くなよ。約束だろう?
お前は幸せになれ。

お題:ついのべデー12月「一巡、ふりだしに戻る」
140字に入りきらずに苦労しました。
もっと文章を足して載せたほうがいいんだろうけど、これはこれで残しておきます。
ふくらんだら、加筆してみるつもりです。

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【549】

 一人暮らしの部屋はがらんとしていて、時々無性に君の声がききたくなるから、僕は君に電話する。
 西日が差し込んでオレンジ色に染まるキッチンの床に座り込んで、膝を抱えて長電話。
 耳元ではじける君の笑い声が、僕の心にしみ込んでいく。
「ねえ、月食みた?」
「すごかったよね。赤い月」
「それより、星がきれいでさ」
 他愛もない話をして過ごす時間が、とても嬉しい。
 でも、やっぱり君の声を聞くと、会いたくなって困っちゃうな。
「今度の休み、会いに行っていい?」
 こらえきれずにそう言った途端、耳元と玄関から同時にチャイムの音がした。

お題:「夕方のキッチン」で登場人物が「電話する」、「月」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927 #rendai

遠恋風味で。
お題がお題なだけに、現代風です。
あやかしものは、思いついたら後で。
最近、忙しくてなかなかゆっくり時間を取れません。
何をしているかは「日々徒然」に書いてますが、主にゲームと編み物です(^^;)。

オジプラス。
お気に入りしてもらったりしているようで、ありがとうございます。
しかし、「僕」が書きやすいものだから、なかなかおじさんは難しくて。
おじさん視点だと「俺」だろうし、女の子視点と言うのもなかなか気恥ずかしいものがありますしね。
でも、「生意気盛り VS おじさん」とか、「おしゃまな小さな女の子 VS おじさん」と言うのもなかなか書いてて楽しいんではないかと(^^)。
あとは、武芸者か忍者。
姫と護衛の剣客っつうのもおいしいですかねw


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【546】

「剣客と言われた日は遠くなりにけり、か」
 海風が、伸び放題の髪を乱暴にかき乱す。
 夕日が血のように赤く染まり、それが遠い昔に浴びた返り血を思い出させて、彼はかすかに苦笑した。
 着流し姿も、刀を佩かない腰の軽さも、もうすっかり体に馴染んでしまった。
 もし今、刀を手にすれば、その重さに耐えられないかもしれない、とすら思える。
 その、人を斬る、ということの重さに。
「おとうさーん」
 浜辺で遊んでいた娘が、迎えに来た自分を見つけて立ち上がり手を振った。
 それに軽く手を上げて応えて、ふと、その手を見つめる。
 今でも、時折右手が無意識に刀を探していることがある。
 そのたびに、それほどに剣を振るってきたのだと改めて思い知らされる。
 いまだに人を斬る感触を手が忘れていないことに、背筋が凍る。
 だが、もう人はあやめないと決めたのだ。
 愛しい娘を抱く手を血に染めないために。
 殺し、殺される世界に娘を巻き込まないために。
 刀の感触を握りつぶすように、一瞬拳をきつく握る。
 そして、駆けて来た娘が勢いよく飛びついてくるのを抱き上げ、彼は赤い夕日から逃れるように背を向けた。


お題:「浜辺」、「酒」、「剣客」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
でも、数年後、彼は再び刀を手にするのだった、という風につなげるフラグ立てまくりですね。
娘の危機に再び剣をとる、とか、昔斬った相手の娘に命を狙われるとか、そういう感じで。


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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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