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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【546】

「剣客と言われた日は遠くなりにけり、か」
 海風が、伸び放題の髪を乱暴にかき乱す。
 夕日が血のように赤く染まり、それが遠い昔に浴びた返り血を思い出させて、彼はかすかに苦笑した。
 着流し姿も、刀を佩かない腰の軽さも、もうすっかり体に馴染んでしまった。
 もし今、刀を手にすれば、その重さに耐えられないかもしれない、とすら思える。
 その、人を斬る、ということの重さに。
「おとうさーん」
 浜辺で遊んでいた娘が、迎えに来た自分を見つけて立ち上がり手を振った。
 それに軽く手を上げて応えて、ふと、その手を見つめる。
 今でも、時折右手が無意識に刀を探していることがある。
 そのたびに、それほどに剣を振るってきたのだと改めて思い知らされる。
 いまだに人を斬る感触を手が忘れていないことに、背筋が凍る。
 だが、もう人はあやめないと決めたのだ。
 愛しい娘を抱く手を血に染めないために。
 殺し、殺される世界に娘を巻き込まないために。
 刀の感触を握りつぶすように、一瞬拳をきつく握る。
 そして、駆けて来た娘が勢いよく飛びついてくるのを抱き上げ、彼は赤い夕日から逃れるように背を向けた。


お題:「浜辺」、「酒」、「剣客」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
でも、数年後、彼は再び刀を手にするのだった、という風につなげるフラグ立てまくりですね。
娘の危機に再び剣をとる、とか、昔斬った相手の娘に命を狙われるとか、そういう感じで。


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赤い月 HOME 儚き君に触れる指先

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自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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