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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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「ぼんくら言わんでください」
 のそりと先生は体を起こして、その場に座り込んだ。せめて畳に上がればいいのに、と思ったが、普段から畳も見えぬほど散らかっている部屋だ。特に違和感もない。邪魔だけど。
「体の具合はどうです?違和感は?」
「動きは申し分ないぞ」
「・・・ですよね」

【twnovel/妖草紙
絡繰猫


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【716】

 月を見上げて、彼は少し眉をひそめた。
 仕事をするには、明るすぎるのだ。
 黒い着物を着ても、逆に月夜に出歩けば不審だととられかねない。
 かといって、普段どおりでは素性がばれる恐れがある。
「今夜だけっつうのは、きついよなあ・・・」
 呟いて、彼はできるだけ地味な着物を選んだ。髪を少し乱し、貧乏な浪人を装う。
 刀の鞘は多少塗りがはげているくらいで十分だ。まさか業物が入っているとは思われまい。
「月見の宴の帰りだと、そろそろか」
 満月を見上げ、彼はそっと長屋を出た。
 気配を消し、長屋の住人には外出を知られないようにする。
 そして、かねてより目をつけていた、大名の下屋敷近くの竹やぶへ足を向けた。
 人目がなく、竹の音が多少は物音を誤魔化してくれる。
 仕事人の顔になって、彼は刀にそっと手を添え、足を速めた。

お題:「月見」、「鞘」、「仕事人」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578

設定と、あと瑠璃丸のお話、桜の頃までにはアップしたいなあ・・・。
もしツイッターをしていたら、うちのあやかしたちのつぶやきもぜひ聞いてやってください。
@ayakashi_bot でお待ちしております(^^)。


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【684】

 弟は私の邪魔をしない距離感をなぜか心得ている。
 研究に没頭する私の身の回りの世話をし、食事を作り、さりげなく私を現実に引き戻す。
「別にほっといていいんだぞ」
「身内が干物になるのは嫌だもの」
「だが血の繋がりもないのに」
「縁は繋がってるよ」
 弟は義母の連れ子なのだ。
 三日だけ義母が留守だからと私の研究所へ転がり込んできた弟は、しかしこれだけ家事ができるのなら一人で留守番もできただろう。
 だが、なぜか追い返す気にならなかった。
 研究所とは名ばかりのあばら家で一人で暮らす私にとって、人との接触は苦痛でしかないはずなのに。
 するりと私の生活に入り込んだ弟は、帰らなくていいからといつもよりゆったり私の世話をしているようだった。心なしか楽しげにすら見える。
「何を研究しているんだっけ?」
 洗濯物をたたみながらの質問に私が答える気になったのは、私にもその楽しげな気分が移っていたのだろうか。
「人の気持ちを知ることができる機械」
「へえ」
 素直に驚く弟に、私は曖昧に笑んで見せた。
 私には人の気持ちがわからない。特に恋愛感情は難解以外の何物でもない。いや、昔は私にも恋をするという感情があったはずなのだ。だが幼い時から大恋愛の末結ばれたと聞かされていた両親の離婚と父の再婚で、「恋する」ことをはじめとする人の感情が一切わからなくなってしまった。
 そこまでは私も言うつもりはなかったが、弟も根掘り葉掘り聞く気はなかったのだろう。それ以上この話題に触れることはなかった。
 弟が帰る三日目、彼は普段は締め切っている家中の窓を開けた。
「たまには気分を変えてみようよ」
 笑った彼は私をまぶしい日の光が溢れるテラスに連れ出し、椅子に座らせる。
「何をするつもりだ?」
「こうするんだよ」
 そういうと、私が抗議する間も与えず前髪にハサミをいれた。
 呆然としている私をよそに、弟は手慣れた様子でほったらかしだった私の髪を切り、何やらいい匂いのするクリームめいたもので整える。気づけば器用に編み込みまでされている。
「おい」
「僕が何も言う資格がないのはわかってるけど」
 前髪を切ったせいで、弟の表情が嫌でも目に入る。
 いつもの朗らかな彼の表情ではなかった。家族の優しさよりも、もっと優しく甘い笑み。
「せっかく綺麗なんだから、前髪で隠してたらもったいないよ、姉さん」
 そして、椅子に座ったままの私の頬にそっと触れた。
「ねえ、機械の代わりに僕じゃダメかな?」
 彼は何を言っているのだろう。
 混乱する私に、彼は苦笑したようだった。
 幼子を諭すようにゆっくりと穏やかに言葉を紡ぐ。
「僕と母さんが姉さんを傷つけたのはわかってる。だから資格がないのもわかってるけど、でももうほっとけないんだ。ねえ、姉さん。僕はあなたに恋をしてる。だから、感情を研究するなら機械相手じゃなく僕を研究してみない?僕、きっと役に立つよ」
 わからない。
 わからないけど、彼の目が本気なのはわかる。
 その感情が私の心を揺さぶる。
 わからない。わからない。
 だから。
 私は恐らく初めて、真っ直ぐに彼を見つめた。
「わかるまで調べることにする・・・お前を」
「うん」
 弟は嬉しそうににっこり笑った。
 なぜか私も同じ表情になっていることに、そのときの私はまだ気づいてはいなかった。


お題:ねー久遠、恋し方を忘れた研究者と血の繋がりのない弟との3日間の話書いてー。 http://shindanmaker.com/151526
お題を診断メーカーからいただいたのですが、なかなか難しいものに当たりまして(^^;
思い付くままにTwitterでだらだら書いたものをまとめてみました。十個くらいツイート使ったかな。Twitterは、140字制限なのです。
いつもとは少し違う文章になったかな。でもなんとなく自分の色は変わらないもんですね。
ちなみに、ついのべやあやかしたちの呟きを落としているTwitterアカウントは@ayakashi_botです。
興味がおありでしたら声をかけてやってください。


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【680】

 何度も何度もケンカを繰り返し、相手を殴るために、何かを我慢するためにぎゅっと握り締めるばかりだった拳を、彼女は笑って優しく解いた。
 解放された手のひらに自分の手を滑り込ませ、気がつけば手をつないでいた。
 無邪気な笑みに、いつもなら口をついて出る憎まれ口がなぜかどこかへ行ってしまう。
「ね、ケンカばかりしてないで、いっしょにあそぼ?」
「・・・ばっかじゃねえの・・・おんなとなんかあそべっかよ」
 そっぽを向こうとしたが、彼女の顔が泣きそうに歪んで妙に慌ててしまう。
「な、なくんじゃねえよ」
「・・・あそぶの、いや?」
「あ・・・えっと・・・ちょっとなら・・・」
「やったあ!じゃあ、いこうよ!」
 ひっぱられる手を振りほどけずにつられて走ってしまう。
 繋いだ手の暖かさが胸の中まで暖めるようで、いつしか笑っていた。

 あの時の想いは今も変わらずに胸を暖める。
 人を殴らなくなった左手は、十年たった今も彼女だけのものだ。


お題:本日の身体部位は「手のひら」、行動は「殴る」、なごやかな作品を創作しましょう。補助要素は「想い」です。 #karadai http://shindanmaker.com/73897
一応、なごやかになったかな。
最初は五歳、思い返している今は十五歳くらいのイメージで書いてみました。
五歳でケンカばっかりというのも逆に我慢しない分、ないことはないかな、と。

拍手ありがとうございます。


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【674】

あ、目が覚めた?
もうお昼だよ。寝坊だな。
え?やだな。なに怒ってるのさ。いいじゃない、見惚れてたんだから。
寝顔も可愛いよ。ほんとだって。
ああ、もう、怒らないでよ。
こんなに好きなのに。
ねえ、どうしたら僕が君を好きだってわかってくれる?
じゃあ、こうしようか。
口開けて?
はい、逆チョコ♪
あ、やっと笑った。
怒ってる顔も好きだけど、やっぱり笑ってくれると嬉しいね。
そして、僕は君が笑ってくれるたびに何度でも君に恋するんだ。
何度でもね。


お題:「昼のベッド」で登場人物が「恋する」、「チョコレート」という単語を使ったお話を考えて下さい。 #rendai http://shindanmaker.com/28927
テーマ、馬鹿みたいに甘々(^^;;;)
mixiに既出の文章ですがちょっと直しました。
それでも甘すぎるのはかわらず。
まあ、バレンタインに書いたものなので、あえて限界に挑戦しております。
ご容赦くださいませwww


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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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