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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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 ふらりと現れたそいつは、名を斎といった。
「いつき、か。大層な名前だなあ」
「俺がつけたんじゃないよ」
 表情は豊かな方ではないらしいが、人嫌いというわけでもないようだ。
「俺は呼ばれたみたいだね」
「誰にだ?」
「この店に」
 斎は苦笑した。
「どうやらこの店に閉じ込められたようだよ」

【twnovel/宵月楼/斎】

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【冬の日】

「今年は寒くなるのが早いな」
呟くと息が白くなる。
冷たい空気を吸い込めば胸がツンとする感覚。
冬が来た。
そう思った時、ドアがノックされた。
開けたドアの向こう側には、君が立っていた。
「ただいま」
「おかえり」
雪ん子の君を溶かさないように、そっと抱き締めた。


お題【冬の日】をいただいて。


【おやすみ】

「今夜は特別静かで深い夜だね」
そう言ったのは椿鬼。
これから枯れゆくこの季節、起きている花鬼は多くない。
黒髪に一輪咲いた椿の赤が夜の中でぼんやりと灯る。
「君が寝るにはいい夜だ」
金木犀鬼が頷いて目を閉じた。
「おやすみ」
そして椿は一人きりで冬を迎える。


【赤き月】

《ストロベリームーン》と書いてあったラベルを引き剥がし、小さな瓶の中に入っていたトロリとした赤い液体を一気に飲み干す。
体を駆け巡るそれは、僕の中に眠っていたあやかしを目覚めさせた。
君の為なら化け物になっても構わない。
呟く僕を赤い月が嘲笑った。

書き出しをお借りして。


【本のあやかし】

僕が住むのは廃れた神社。
神などとっくに失われ、新たな主もいないまま忘れ去られて百余年。
時間を忘れたようなこの場所で文章を書いたり読んだりするのが当たり前になり、たぶん四つ足で尻尾が太い獣だった僕は、もう文章を食べるあやかしと化してしまった。
まあそれも悪くない。

勝手に設定を考える、という遊びで、「文学青年、イケメンでイケボ。生息地は廃れた神社。狗なのか狐なのかイマイチ正体が判らない。読むのも書くのも好き、たまに食べる」という設定をいただいたので。


【ノーム】

「今朝はノーム注意報が出てるよ」
「まじで?俺、車なんだよね。あぶねえかなあ」
「車に乗ってたら大丈夫じゃない?」
「でも視界悪いし」
「背が低いから視界は悪くないと思うよ?」
「え?」
「冬ごもりの準備でノームが地上に出てくるって。連れ帰られないように気をつけてね」


濃霧の日にw


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深い夜に飲み込まれたら、僕の名前を三回唱えて。
烏瓜の提灯頼りに、きっと君を見つけ出すから。
でも気をつけて。
誰かが手を差し出しても、それを握っちゃいけないよ。
あっちの世界に繋がれた途端、君は全部忘れてしまう。
二度と帰って来られなくなるよ。


北風小僧が秋の森。
みんなに囲まれしょげている。
「まだ早い」
「紅葉もしていないのに」
「あまり早く来ちゃ秋の実りが減るんだよ」
涙を浮かべた北風小僧を竜田の姫が抱き上げた。
「一月くらいがなんであろう。我が抱き止めてみせようぞ」
涙をすくって笑みかけた。


黒い羽をもらった子供は烏天狗になるのです。
もちろん修行は大変で、親とも兄弟とも会えなくなりますが、人であるより長い命と村や山を守るだけの妖力を身に付けることはとても幸せなのだと大人たちは言います。
でも。
「僕はあの子と一緒に大人になりたかった」


「菓子をくれねば悪戯してやるとな?西洋の祭りはなかなかに脅迫じみておるの」
座敷童はテレビを見つめて感心したように呟いた。
「脅迫って。菓子もらうための合言葉だろう?」
俺が言うと、にやりと笑みが返ってくる。
「馬鹿じゃの。悪戯が目的に決まっておるではないか」


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 神様が出雲から帰ってきた。
 右と左の狐たちは、社で両手をついて頭を下げる。
「おかえりなさいませ」
 余計なことは言うなよと左の狐に釘を刺された右の狐は、頑張っておとなしくしていたが、神様はお見通し。
 二匹を抱き上げると笑いかけた。
「ゆうべは寝ておらぬのだろう?お疲れ様」
 ゆうべの騒ぎが嘘のように清められた社で、神様は二匹を抱き締めた。
「お前たちが使いであることを自慢に思うよ。さ、少しおやすみ」
 神様がぽわぽわと綿雲を出すと、二匹の狐はそこでくるりと丸くなる。
「起きたら土産をあげような」
すぐにぐっすり眠った二匹の頭を、神様は優しく撫でた。


ハロウィンが神社に影響があるかどうかはともかくwww
神様もお帰りで、神使の狐たちも一安心です。

ハロウィン、いつから浸透しだしたんだったっけ。
最近ですよね。
楽しければいろいろ取り込む日本文化、結構好きです(^^)


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昨日はハロウィンでしたので、ハロウィンものをいくつか。


【魔女の君の昼と夜】

「これしたい」
 座敷童が指差したのはテレビのハロウィン特集だった。
「仮装して、夜、家をまわりたいと?」
 一応確認すると、こくこくと勢い良く頷く。
 どうしたものか。
 こいつは普通の座敷童じゃない。
 だが、期待に満ちた目をされては嫌とは言えない。
「どんな格好するんだ?」
「魔女!」
「はいはい」
 たとえ日本のあやかしだとしても、幼児にとって魔女っ子は永遠の憧れなのだろう。仕方なく買い出しに行き、仮装用衣装を買い込む。
 夕方、着替えた彼女はご満悦で、まあ、これだけ喜んでくれれば後のことにも耐えられそうだ。
 そして、日が暮れる。
「・・・で、これはなにかしら?」
 太陽が姿を消すと、座敷童は妙齢の美女に姿を変えた。
 彼女は昼の間は力を封じられ座敷童になってはいるが、れっきとした狐のあやかしである。しかも齢数百年の大妖だ。魔女の仮装はお気に召さなかったとみえて空気がぴりぴりと音を立てる。
「昼間、チビがどうしてもって言うもんだから」
「へええ、そう」
 一応、昼間は座敷童になっているとわかってはいても記憶はないのだから、こういう反応は覚悟していたことだった。「・・・お手柔らかに」
 苦笑する俺を彼女は十秒ほど見つめ、やがてきゅっと俺の首に腕を回した。
「お菓子も悪戯も、よ。覚悟しなさいね」
「はいはい」
 とりあえず、夜の彼女は悪戯で手を打ってくれるらしい。
 昼間の彼女には、明日、お菓子を用意しないとな、と頭の隅で考えながら、俺は狐の魔女を抱き締めた。


【稲荷神社の十月末日】

「うっわ、これ何?」
 右の狐が眉をひそめる。人にはわからぬだろうが、そこここに人ではないものが混じっている。
「今日はハロウィンだろ?」
 左の狐が社に入ってきた小者をつまんで追い出す。
「西洋化も際まれりだねえ」
「神様たちはまだ出雲だしな。緩んだ境から入り放題だ」
「うわあ。なんかムカつく」
 右の狐はほうきを乱暴に振り回した。左の狐はそれを器用に避けてコウモリ型の一匹を捕まえる。
「文句言わずに掃除しろ」
「はいはい。ったく、土産奮発してもらわないとだね!」
 ばたばたと二匹の狐は社を駆け回る。
神様のお帰りに間に合うように。


【日本のあやかしの心意気】

西洋の奴らにだけいい格好はさせられねえさ。
人に化ける技もだが、菓子の出来も奴らにゃ負けねえ。
狐は目を細めてにんまり笑う。
お菓子か悪戯かなんて生ぬるい。
当然お菓子で悪戯さ。
笑う饅頭たっぷり持って、狐の面を被った少年が尻尾ふりふり夜の町。


【悪戯先約済】

「ほら気を付けて。今日は境目が緩くなってるから」
 言われてみれば、物陰にゆらりと何かの気配。
「声をかけられたら渡せるように、お菓子を持ってないとだめだよ」
 心配性の猫又はざらっと飴を手渡す。そして彼女ににこりと笑った。
「君に悪戯していいのは僕だけだからね」


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HN:
宵月楼 店主
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非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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