忍者ブログ

宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【1021】 煌月の周(あまね)

「主殿。煌月の周にて、今宵は忘年の宴を設けております」霊峰煌凰山の主殿はふわりと笑って頷いた。「早いな。もう年も暮れ行くか」すでに薄暗い空に大きく明るい月がかかっている。「来年もよろしく頼む」「承知」月の似合う主殿の笑みに、私は深く頭を垂れた。

設定:霊峰煌凰山から見る月が、年の暮れ頃になると特に大きく、強く輝いて見えることを表した言葉。目に入る光は強くなるのに、辺りは暗いままというのが不思議なところである。

設定者:くすてんさん


【1022】 誘う歌声

耳を澄ませると、いつも聞こえてくる旋律がある。
誰にも聞こえないその音楽は僕を深い森へ誘い、そして僕は歌う彼女に出会う。
「私のために死んでくれる?」
微笑む彼女の為に僕は湖に身を投げる。
たった一度のくちづけに、満ち足りた気持ちのまま。

お題:今日の書き出し/締めの一文 【 耳を澄ませると、いつも聞こえてくる旋律がある 】 http://t.co/a8HWCWxj


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[1回]

PR
【1020】

「やだ」
ふくれた凛音は瑠璃丸に背を向けた。
「何言ったの」
こそっと聞く翡翠に瑠璃丸は眉をひそめた。
「母の日に俺に贈り物をしてくれたのだから、父の日には琥珀になにかやらぬのか、と聞いたのだ」
翡翠はそれを聞いて深々とため息をついた。
「そりゃ、へそを曲げるよ」
「なぜだ?」
「幼い姿から成長してないように見えてもね、女の子には色々あるんだよ」
意味深に笑って、翡翠は「あとは任せなよ」と瑠璃丸の肩を叩いて凛音のそばにしゃがみこんだ。
瑠璃丸は、訳がわからないながらもその方がよいということはわかったので、そっとその場を立ち去ることにした。
適材適所、というやつである。
もっとも、夜が更けたら翡翠を問いただそう、そう心に決めてはいたが。


父の日を上げ忘れていたので、遅ればせながらアップ。
父の日がいつからあるとか、これがいつの時代とかはつっこまない方向でお願いします(^^;;;)。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[1回]

【1019】 忍ばずの幻灯(げんとう)

「さあ、これを御覧なさい」
小間物売りは背負った荷から出した行灯の中の蝋燭に火を灯した。
そっと覆いをすればそこに柔らかく光が映る。
やがてそれは見慣れたあの人の面影に変わってゆく。
「幻の中でしか、もはやあなたは生きられないのですね」
声が遠く響いた。

設定:火を灯すと相手にとって心地のいい幻覚を見せる。
設定者:神威 鴉魔さん


勝手な単語や名前に設定をつけてもらう、という遊びより。
その設定を生かしてどう文章をつけるか、というところまでやっているのでなかなか頭を使います(^^;)。
うまく生かせていればいいのですが。
そして、面白がってたくさん作るもんだから、文章にしてない設定がたまる一方www


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[1回]

【1017】 燕飛ぶ

燕は今日も花街を気ままに飛んでいる。昼ののんびりとしたこの町は騒がしくなくて飛びやすい。「寄ってお行きよ」顔馴染みの姐さんに声をかけられても、ひらりと宙返りして飛び去ってしまう。寄る軒先はあいつの場所と決めているのだ。

お題:鳥


【1018】 夜の彼女、昼の彼女

「時間切れね」
哀しげに微笑んで彼女は俺を見た。
朝日をいくら防いでも、朝が来ると無情な術は作動する。
彼女の体がほのかに光り、縮んでいく。
小さく、小さく。
そして。
「おはようー」
幼くなった彼女が目を開けて、無邪気に僕に笑いかけた。

お題:朝


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[1回]

【1009】

「夏至なんて嘘でしょ?何この寒さ」
猫又の翡翠が文句を言っている。
すでに布団に潜り込んでいるせいであまり迫力がない。
「夏至の祭りは取り止めか?」
「いや、鎮守の森で結界を張るのだと」
「そこにいくまでに濡れちゃうじゃない!」
・・・猫は置いていこう。

せっかく夏至なので、と思って書いてみました。瑠璃丸視点。


【1010】

雨はやまないけど、僕は迷った末、番傘をさして外へ出た。
夏至の祭りは年一回だものね。
人混みは苦手だけど、珍しいものが手に入るかもしれないし。
意外とあやかしたちは新しいものにも敏感だから、出店は気になるんだ。
「好奇心は猫をも殺すってな」
「うるさいよ」

翡翠視点。
翡翠は新しもの好きです。現代になったら、PCもスマホも真っ先に手を出して使いこなします。
あやかしたちは、新しいもの=珍しいもの、としてこっそり拝借してきちゃったりしてるような気がしますw


【1011】

夏至の夜、鎮守の森に灯が点る。
人には見えぬよう張られた結界の中で、狐火、蛍火がぼんやりと辺りを照らし、様々な出店が軒を連ねる。
神社はこの夜だけ、あやかしや神や人ならぬものの貸切だ。
少女はその賑わいに驚いて目を見開いた。
気付けばここに立っていた。急に霧が晴れるように賑わいが目に飛び込んできたのだ。
「あれ?君って・・・」
声に振り返ると、猫の耳を生やした黒髪の青年が、緑の瞳で自分を見ていた。
「あの、え?耳?じゃなくて、ここ・・・あの、私・・・」
「まあ、落ち着いて。このお祭りは初めてだよね?」
青年は苦笑して出店のない場所に手招きする。つられて少女がついてゆくと、青年は安心させるように微笑んだ。少し皮肉っぽいが瞳が優しい。
「とりあえず、これは夢だと思って、全部置いといて。だって、ありえないものがいろいろ見えるでしょ?」
「あ、はい・・・」
「よし、じゃあ、想像してみて。夜店、夏祭り、君は浴衣。そうだな、藍地に蛍なんかいいね」
「え?」
気がつけば自分がその通りの装いをしているのを見て少女は驚く。そして、逆に「ああ、夢なんだな」と納得した。
そうなれば、この賑わいが楽しくなってくる。
「すごい」
「そうだね」
青年は微笑んで、少女の髪を軽く纏め上げ、ホタルブクロを挿した。
「まあ、なにかの縁だものね。案内してあげるよ」
青年が手を差し出した。


出店を冷やかし、いくつかよくわからない食べ物を味見し、だいぶ夜も更けた頃、少女はふと呼ばれたような気がして空を見上げた。
今夜はあいにくの雨で空には月も星もない。雨がよけるようにと張られた結界とやらがあるらしく、うっすらと霧の膜がかかっているように見えるその向こうから、それは自分を呼んでいた。
「・・・気付いた?」
振り返ると猫耳の青年が自分を見つめていた。
その向こうには祭りの灯り。
柔らかくあたたかい光で青年の表情は影になっているはずなのに、何故かその視線の優しさがわかる気がした。
「耳を澄ませてごらん。君が行くべきところがわかるから」
そういわれて目を閉じる。
言葉にならない声が、記憶を呼び起こす。
「・・・そうだった」
目を開けて、少女は呟いた。
「私、死んだのね。わかってた?」
「この祭りは人ならぬものしか入れないからね。うすうすは。よけいなこと、したかな」
「ううん・・・楽しかった」
「その姿でお行きよ。お土産持っていくのも悪くないよ」
「うん、ありがとう」
声に沿うように心を軽くすれば、体は透き通って薄れていく。
消えるのではない。上っていくのだ。空へ。また、生れ落ちてくる日まで。
「さよなら」
「さよなら」
呟きが消える頃、少女の姿は淡い光となって空に吸い込まれた。
それを見上げて、翡翠は呟く。
「また元気に生まれておいで。今度は人の世でお祭りに行こうね」
優しい声に応えるように、切れた雲の隙間から星が瞬いていた。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[1回]

前のページ HOME 次のページ

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
カウンター
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

忍者ブログ [PR]
template by repe