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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【961】 猫集会

「こんばんは。今日も月が綺麗ですね」
「ええ、本当に」
小さな声で挨拶を交わす。大声は出さない決まりだ。だって人間に見つかると厄介だもの。
「今夜はマタタビ酒を持ってきましたよ」
三丁目のトラさんが自慢げに瓶を揺らした。
さあ、猫集会を始めよう。

お題:今日も月が綺麗ですね。


【962】 狐執事

いらっしゃいませ、と、そいつは妙に丁寧なしぐさでお辞儀をした。
完璧な執事スタイル。だが背後で揺れるものがある。
「あの」
「はい?」
「どうして尻尾が?」
「おや。隠し忘れておりました」
狐目がにやりと笑う。
「英国風は主の趣味でございます」

お題:今日の書き出し/締めの一文 【 いらっしゃいませ、と、そいつは妙に丁寧なしぐさでお辞儀をした 】 http://t.co/xa0YiAVQ

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【944】 妖刀の銘

妖刀を手に入れた。というより取り憑かれた。
波長が合わない人間が使うと暴走するのだという。
でもいきなり「お前が次のあやかし退治人だ!」と言われても納得できるかよ。
しかも名前がなあ。
「日和見燕雀、って能天気過ぎねえ?」
「殿様に言われて否やが言えるか」


つけていただいた設定でついのべ。しかしかっこいい設定がまったく生かせてないっ(T-T)

設定:【日和見燕雀】 妖刀。すべての魔・あやかし、悪鬼などを振り払うことができるが、使い方を誤ると町ひとつを滅ぼす。


【945】 雨日和

龍の子供は雨の季節を心待ちにしていた。
普段は空から降りられないが、この時期ならばたまに雨に紛れて下界を見に行けるのだ。
愛しい少女は元気だろうか。
雨の日でも、たまには空を見上げてくれるだろうか。
そう考えるといても立ってもいられない。

以前書いた【地上のお日様、天上の大河】より青嵐。


【946】 仰天

黙って酒を酌み交わす。
生来、犬神は口数が多い方ではない。
だが即されるよりいい、と天狗は杯をあおった。
それは無関心ではない。優しさなのだ。
「犬神よ」
「なんだ?」
「人の娘に惚れた」
普段物静かな犬神が、盛大に酒を吹き出し咳き込んだ。

天狗と犬神の瑠璃丸は飲み仲間です。
というか、なにかあると天狗が押しかけるのです。


【947】 月兎

月には兎がいるのです。
ニンジンがないから月をかじって、それで月が欠けるのです。
でも、月が欠けたら居場所がなくなるので、兎は慌てて星を集めてそれで月を丸くするのです。

あやかしではないかもしれないけど、月の兎ということでw


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【895】 今日は何の日?

「今日、何の日かしってる?」
 うちの座敷童は外でいろいろ聞きかじってくるらしく、朝一番でこんな事を俺に聞いてきた。
 卵を焼きながら、俺は生返事を返す。たいてい他愛もないことなんだ。
「あ?知らん」
 しかし、返事が気に入らなかったのか、俺のスネを蹴っ飛ばすとむりやりしゃがまされた。
「ばかー」
 至近距離で罵られる。
「ああ、悪かったよ。で、なんだ?」
「今日はキスの日なの!」
 あー。さいですか。
 こりゃ近所の女子高生かなんかの話を聞いてきたんだな。
 真っ赤になって顔を突き出し目を閉じているチビすけを見ているとからかいたくなったが、朝からこれ以上機嫌を損ねられても困るのでぐっと抑える。
 本格的に拗ねるとあとが長いんだ、こいつは。
「はいはい」
 髪を指ではらっておでこにひとつ。
「えーっ!?おでこー?!」
「チビのうちはそれで十分だ。でかくなったらちゃんとしてやるよ」
 立ち上がって俺がにやりと笑うと、餅みたいにぷうっとふくれた。
「座敷童は大人にならないもん」
「・・・ほんとの座敷童だったらな」
「?」
 わけがわからないと首を傾げるチビに俺は苦笑する。
 すぐに窓の外に来た小鳥達に興味をひかれて走り出すかつての恋人の背中を見ながら、俺は呟いた。

 早く封印を解いちまえよ。俺だって我慢してんだぞ。


お題:キスの日

5月23日はキスの日だそうで。
まあ、うちでするとこんな感じになっちゃいますよ。ツイッターであげたのを、加筆修正(ちょっとだけ)しました。

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【881】 恋し憎し

我の毛を編み込んだ組紐に鈴をつけて、ちりんちりんと鳴らしたら、かの猫又はじゃれつくだろうか。
恋文も読まぬ。
季節の花に結びつけた和歌も解さぬ。
焦れて直接口説こうにも、気まぐれで顔を出したり出さなんだり。
いっそ絞め殺してやろうかと言えば、あの翡翠の目を細めて「やってごらん」と来たもんだ。
惚れた弱みを握られて、情けなや、情けなや。
それでもあの猫又の恋しい人を想う目が切のうて、我の心を締め付けるのだ。

「人など儚い。いっそ、我にしておけ、猫又」
「悪いね。僕は売約済なんだよ、毛羽毛現

今日も笑みを残しただけで、風のようにするりと猫はこの手をすり抜けた。


お題:「和歌」、「組紐」、「猫又」で創作しましょう。  http://t.co/evQperRL

毛羽毛現はけむくじゃらの妖怪ですが、黒髪の長い美女でもいいかなあなどと思ったり。
恋しい男を髪で捕まえるような、そんなイメージで。
でも、猫はそれもするりとすり抜けるのです。


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【833】

【書き出し、はじめました】
 店先にひらりと翻る短冊に、冗談のようにそれだけ書かれている。
「あれは何だ?」
 それを横目に店に入ってきた妖狐の琥珀が聞くと、店主はにやりと笑った。
「物語のさわりだけを買ったり売ったりするのさ。育てられなかった種を他人に譲って有効活用してもらうんだよ」
 そういえば、仮名草紙を扱う店で【書き出し】を商い始めた、と噂は流れてきていた。なんだろうと思ったが、こういうことかと琥珀は棚を眺める。
 短い文が書いてある短冊が、無造作に棚に並んでいる。
「要は思いついたはいいが育てられなかった物語の種をうちであずかるんだ。うちはそれを棚に並べておき、欲しい人に譲り渡す。本業ではないからお代は頂かない。その分、店をのぞいてくれれば御の字だ」
「なんだ、客寄せか?」
「いや、こいつは物語を紡ぐのは楽しいってことを思い出させてくれるのさ」
 店主は笑った。
「物語を育てるのは時に難しい。うまく育たない時は自分の未熟を悔やむ。だがうまく育ててくれるお人に巡り合わせてやれたら、これはその為に生まれたんだって思えるのさ。捨て置くよりずっといいだろう?それに人が育てた文章を読むのも存外楽しいしな」
「とことん物語好きなんだな」
 苦笑する琥珀に、店主は短冊を一枚差し出した。
「ひとつあんたも育ててみないか」
「やめてくれよ」
 琥珀は肩をすくめた。
「文才がありゃ、こうやってあんたの店に来ちゃいねえよ」
 琥珀はあやかしの話を店主にしては、それを仮名草紙に仕立ててもらっているのだ。お代は売れた冊数に応じて支払われる。店主がまだ店を持たずにいろんな店で物語を書いていた頃から、変わらぬ関係だった。
「確かに。あんたが自分で書くようになっちゃ、【あやかし話の宵月楼】で売れなくなっちまう」
 店主は笑んで筆を取り出した。
「では、妖狐の旦那。今日はどんなお話で?」


最近ツイッターで気に入っている「この書き出しいかがですか」というタグからふくらませてみました。


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宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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