宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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【1068】 出立
屋根の上に座り込んで、星空を見上げる。
雲ひとつない夜空に満天の星。
風はない。
「さあ、行こうか」
立ち上がりそう自分を叱咤して烏天狗は翼を広げた。
これからかなりの距離を飛ぶことになる。
「ちゃんと家に帰してやるからな」
懐でオサキ狐が「くー」と鳴いた。
お題:今日の書き出し/締めの一文 【 屋根の上に座り込んで、星空を見上げる 】 http://t.co/xa0YiAVQ
【1069】 獏
雨と熱とで気弱になってる貴女に、この身をさらせばきっと病に障るだろう。
だから夢の入り口でせめて安心して眠れるように悪夢を食べつくそう。
よい夢だけを通すように見守ろう。
それでも望む夢までは連れてこられない我が身を口惜しく思うのだ。
風邪で大変だった友へ。
【1070】 烏と白鷺
「闇の夜の烏、月の夜の白鷺」
俺たちはそう呼ばれている。
同じ容姿の双子であるが、俺は黒髪に紅い目、弟は銀髪に蒼い目をしているためだ。
俺は闇に溶け込み、弟は月光に溶け込む。
そうして夜に紛れ、俺たちは人の世で悪事を働くあやかしを人目に触れず狩るのだ。
【1071】 傘屋
雨に降られたら、そっと雨傘をさしかけましょう。
陽射しが強ければ、涼やかな日傘をお渡ししましょう。
完全に貴女をお守りすることはできませんが、少しでも過ごしやすくなるように、貴女に似合う傘をお作りしましょう。
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屋根の上に座り込んで、星空を見上げる。
雲ひとつない夜空に満天の星。
風はない。
「さあ、行こうか」
立ち上がりそう自分を叱咤して烏天狗は翼を広げた。
これからかなりの距離を飛ぶことになる。
「ちゃんと家に帰してやるからな」
懐でオサキ狐が「くー」と鳴いた。
お題:今日の書き出し/締めの一文 【 屋根の上に座り込んで、星空を見上げる 】 http://t.co/xa0YiAVQ
【1069】 獏
雨と熱とで気弱になってる貴女に、この身をさらせばきっと病に障るだろう。
だから夢の入り口でせめて安心して眠れるように悪夢を食べつくそう。
よい夢だけを通すように見守ろう。
それでも望む夢までは連れてこられない我が身を口惜しく思うのだ。
風邪で大変だった友へ。
【1070】 烏と白鷺
「闇の夜の烏、月の夜の白鷺」
俺たちはそう呼ばれている。
同じ容姿の双子であるが、俺は黒髪に紅い目、弟は銀髪に蒼い目をしているためだ。
俺は闇に溶け込み、弟は月光に溶け込む。
そうして夜に紛れ、俺たちは人の世で悪事を働くあやかしを人目に触れず狩るのだ。
【1071】 傘屋
雨に降られたら、そっと雨傘をさしかけましょう。
陽射しが強ければ、涼やかな日傘をお渡ししましょう。
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【1059】
「お願い、ね」
猫又の翡翠は乾いた瞳で空を見た。
「思い付かないよ」
何も望むことはない。
気がつけば生まれていた。
長生きを望んだわけでもないのに猫又だった。
「僕はなんでここにいるんだろう」
それはまだ、彼を揺るがせる出会いの前の話。
【1060】
「家内安全。健康第一」
犬神の瑠璃丸の短冊には、そう記されていた。
「面白味などなくていい。やはり事故も怪我もなく、健康で過ごせるのが一番だ」
そうは言ったものの少し考えて、彼ははっとした。
「琥珀の酒と翡翠のおやつを半減させねば!」
【1061】
短冊が揺れる笹飾りと縁側に並べたつまみといつもより上等の酒。
「いい七夕だなあ」
妖狐の琥珀は目を細める。
そこに面倒を見ている半龍の少女がぱたぱたと走ってきた。
「琥珀のお願いは?」
「そうだな。お前の願いを叶えることが俺の願いだな」
【1062】
まったく、なんでこんなに泣いてんだ。
お前が泣いたら下界もどしゃ降りだろうが。
年に一度はもう覆せない約束だってのに、こんなことじゃ気になって他の日にも来たくなっちまうじゃねえか。
なにしろ一目惚れで仕事もほっぽりだしたくらい惚れてんだからな。
なあ、連れて帰ってもいいか?
七夕の二人の逢瀬を見せまいと織姫が引く雲のカーテン
君の涙は織姫の雨 会えぬ誰かを乞うる声
雲の上でも逢瀬の時間 地上の君も手を伸ばせ
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猫又の翡翠は乾いた瞳で空を見た。
「思い付かないよ」
何も望むことはない。
気がつけば生まれていた。
長生きを望んだわけでもないのに猫又だった。
「僕はなんでここにいるんだろう」
それはまだ、彼を揺るがせる出会いの前の話。
【1060】
「家内安全。健康第一」
犬神の瑠璃丸の短冊には、そう記されていた。
「面白味などなくていい。やはり事故も怪我もなく、健康で過ごせるのが一番だ」
そうは言ったものの少し考えて、彼ははっとした。
「琥珀の酒と翡翠のおやつを半減させねば!」
【1061】
短冊が揺れる笹飾りと縁側に並べたつまみといつもより上等の酒。
「いい七夕だなあ」
妖狐の琥珀は目を細める。
そこに面倒を見ている半龍の少女がぱたぱたと走ってきた。
「琥珀のお願いは?」
「そうだな。お前の願いを叶えることが俺の願いだな」
【1062】
まったく、なんでこんなに泣いてんだ。
お前が泣いたら下界もどしゃ降りだろうが。
年に一度はもう覆せない約束だってのに、こんなことじゃ気になって他の日にも来たくなっちまうじゃねえか。
なにしろ一目惚れで仕事もほっぽりだしたくらい惚れてんだからな。
なあ、連れて帰ってもいいか?
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【1052】 本望
「君の夢見て死ねるなら本望ですがね」
封印を施されかけていながら、鬼はまだふざけた口をきいている。
思えば初対面で封殺師の自分を口説いたのだった、と少し眉をひそめると、鬼は甘い笑みを浮かべた。
「どうせなら一緒の道行きなんてどうです?」
書き出しをお借りして。
【1053】 氷の瞳
毛羽毛現の桔梗が、紅の格子の中で三味線を爪弾いている。
客は引かない。色目も使わぬ。
氷のような瞳には花街の賑わいも映ってはいないようで、それが逆に男を引き付けるという。
だがまだ若い十兵衛親分には、その色香よりもあやかしの女の寂しさが目を引いた。
お題:今日のお題 「氷」 「三味線」 「親分」 http://t.co/AMef1Qc2
【1054】 月の鏡
その鏡には、月の魔力が封じられている。
あやかしに向ければ正体を映し、人に向ければその内に封じるという。
「その魔鏡が何でここにあるんです?」
「だって、普通の鏡じゃ割れてしまうのだもの」
その妖力が強すぎる主は、鏡を覗いて満足げに薬指で紅をひいた。
【1055】 風邪
「あーあ、熱があるねえ」
猫又の翡翠は少女の額に当てていた手を外すと苦笑した。
人間は簡単に病気になったり怪我をしたりする。
ついうっかりしていた。
「ごめんね。夜中に連れ出しちゃったから」
ひんやりした手を頬にあてる。
「そばにいるから安心しておやすみ」
お題:今日の書き出し/締めの一文 【 「あーあ、熱があるねえ」 】 http://t.co/a8HWCWxj
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「君の夢見て死ねるなら本望ですがね」
封印を施されかけていながら、鬼はまだふざけた口をきいている。
思えば初対面で封殺師の自分を口説いたのだった、と少し眉をひそめると、鬼は甘い笑みを浮かべた。
「どうせなら一緒の道行きなんてどうです?」
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【1053】 氷の瞳
毛羽毛現の桔梗が、紅の格子の中で三味線を爪弾いている。
客は引かない。色目も使わぬ。
氷のような瞳には花街の賑わいも映ってはいないようで、それが逆に男を引き付けるという。
だがまだ若い十兵衛親分には、その色香よりもあやかしの女の寂しさが目を引いた。
お題:今日のお題 「氷」 「三味線」 「親分」 http://t.co/AMef1Qc2
【1054】 月の鏡
その鏡には、月の魔力が封じられている。
あやかしに向ければ正体を映し、人に向ければその内に封じるという。
「その魔鏡が何でここにあるんです?」
「だって、普通の鏡じゃ割れてしまうのだもの」
その妖力が強すぎる主は、鏡を覗いて満足げに薬指で紅をひいた。
【1055】 風邪
「あーあ、熱があるねえ」
猫又の翡翠は少女の額に当てていた手を外すと苦笑した。
人間は簡単に病気になったり怪我をしたりする。
ついうっかりしていた。
「ごめんね。夜中に連れ出しちゃったから」
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【1047】 くちなしの宿
梔子の木が一本、旅籠の入り口に立っている。
「花が咲く頃には匂いがきつすぎるんじゃないか?」
俺の言葉に宿の主らしい少女は笑う。
「それでいい。普通の人間には入れないの」
そして彼女はべっ甲の櫛を差し出した。
「彼女が待ってるわ」その櫛は血に濡れていた。
お題:今日のお題 「旅籠」 「べっ甲」 「梔子」 http://t.co/AMef1Qc2
【1048】 雨宿り
「雨じゃ」
「雨だね。やっぱ、濡れるの嫌?」
「そうじゃの。良い気分ではない」
「それで出てきたの?」
「濡れるのは、ガワだけでじゅうぶんじゃろ」
「ガワって。でも確かにね」
同調すると、黒い狐は当然だと言わんばかりに尻尾をひと振り。
稲荷の社で雨宿り。
お題:雨宿り
【ガワ】というのは、神社の狐の石像です(^^;)
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梔子の木が一本、旅籠の入り口に立っている。
「花が咲く頃には匂いがきつすぎるんじゃないか?」
俺の言葉に宿の主らしい少女は笑う。
「それでいい。普通の人間には入れないの」
そして彼女はべっ甲の櫛を差し出した。
「彼女が待ってるわ」その櫛は血に濡れていた。
お題:今日のお題 「旅籠」 「べっ甲」 「梔子」 http://t.co/AMef1Qc2
【1048】 雨宿り
「雨じゃ」
「雨だね。やっぱ、濡れるの嫌?」
「そうじゃの。良い気分ではない」
「それで出てきたの?」
「濡れるのは、ガワだけでじゅうぶんじゃろ」
「ガワって。でも確かにね」
同調すると、黒い狐は当然だと言わんばかりに尻尾をひと振り。
稲荷の社で雨宿り。
お題:雨宿り
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【1043】 異国の音
その音を聞いたのはほんの偶然だった。
朝、いつものより一本早い電車に乗れた。
たったそれだけの気まぐれ。
だけど、ひとけのない学校の屋上で、僕は彼女が歌うのを聞いた。
聞いたことのない言葉は、心地よい音となって僕を捕らえた。
広がる草原と青空が見えた。
書き出しをお借りして。
【1044】 会いたくて
「最近のあやかしはコンビニ来るのか」
バイトしてるあいつはレジの向こうでニヤリと笑う。
人の癖に生意気だな。
「バカにすんな。あやかしだってジュースも飲むし弁当も食うわ」
「へー」
人恋しくなったのがばれてるみたいで妙に気恥ずかしくなった。
お題:コンビニ
【1045】 注:普通のコンビニです
雪女「氷、ある?」
俺「ありますよ」
犬神「・・・卵」
俺「おでんはないけど、つまみの燻玉が」
山童「塩にぎりないのか」
俺「シャケ入りもうまいですよ」
猫又「新作のデザート買いに来ちゃった」
俺「あんたほんとにあやかしか?」
意外と夜も忙しい。
お題:コンビニ
【1046】 仕方ない
「どうしても帰らねえのか?」
俺の問いに雪女は頷く。
「この暑さじゃ体も辛いだろ?今年はクーラーもあまり使えねえし。消えちまうぞ」
「やだ。離れたくない」
仕方ねえなあ。
「わあったよ。俺が一緒なら行くだろ?消えて欲しくねえんだ」
お題:雪
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その音を聞いたのはほんの偶然だった。
朝、いつものより一本早い電車に乗れた。
たったそれだけの気まぐれ。
だけど、ひとけのない学校の屋上で、僕は彼女が歌うのを聞いた。
聞いたことのない言葉は、心地よい音となって僕を捕らえた。
広がる草原と青空が見えた。
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【1044】 会いたくて
「最近のあやかしはコンビニ来るのか」
バイトしてるあいつはレジの向こうでニヤリと笑う。
人の癖に生意気だな。
「バカにすんな。あやかしだってジュースも飲むし弁当も食うわ」
「へー」
人恋しくなったのがばれてるみたいで妙に気恥ずかしくなった。
お題:コンビニ
【1045】 注:普通のコンビニです
雪女「氷、ある?」
俺「ありますよ」
犬神「・・・卵」
俺「おでんはないけど、つまみの燻玉が」
山童「塩にぎりないのか」
俺「シャケ入りもうまいですよ」
猫又「新作のデザート買いに来ちゃった」
俺「あんたほんとにあやかしか?」
意外と夜も忙しい。
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【1046】 仕方ない
「どうしても帰らねえのか?」
俺の問いに雪女は頷く。
「この暑さじゃ体も辛いだろ?今年はクーラーもあまり使えねえし。消えちまうぞ」
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仕方ねえなあ。
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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