忍者ブログ

宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

[10]  [11]  [12]  [13]  [14]  [15]  [16]  [17]  [18]  [19]  [20

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【519】

「ポッキーの日かあ。昔に比べてお菓子の種類が多いから、この時代は好きだな」
 江戸生まれの馬鹿猫は、色とりどりの菓子の箱に囲まれてほくほくしている。
 確かに江戸の昔に比べれば、種類も味も比べ物にならず、試してみたいと興味を引かれる気持ちはわからんでもない。
 だが、いくらなんでもこの数は。
「買いすぎだろう」
 苦言を呈すると、奴はその細い菓子をくわえて振り返り、にやりと笑った。
「心配しなくていいよ。全部もらいもんなんだ。僕、もてるから」
「何がもてるから、だ!毒でも入れられてしまえ!」


【520】

「落としたよ」
 君のかばんからことりと落ちた箱を拾う。
 それはポッキーのイチゴ味で、おいしそうだねって言おうとして見上げると、君は真っ赤になっていた。
「別に!これは目についたから買っただけで、あんたが好きな味だとか今日だからとか関係なくて」
 慌てふためく君を可愛いなあと思いながら、ああ、そうかと僕は納得する。
 今日、11月11日だもんね。
 女子の間で話題になってたもんね。
「どうせだから、やっとく?ポッキーゲーム」
 箱から一本出してくわえて見せたら、照れすぎてキレた君の平手打ちが飛んできた。


お題:ポッキーの日!(正確には、ポッキー&プリッツの日)
とりあえず、のっとかないとねーw


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

PR
【518】

 ぽんぽんと、手毬(てまり)が跳ねる。
 地面と手を行ったり来たり。
 でも、急に吹き付ける北風にちょっと目を閉じたら、毬はあさっての方向に飛んでいってしまった。
「あーあ」
 慌てて追いかけて、凛音は毬を捕まえる。
 ふと見上げれば、青々としていた草は茶色く枯れ、木の葉は落ち、風景は寒々しい。
「もうすぐ雪が降るかもしれねえな」
 妖狐の琥珀は空を見上げた。
「えーっ!雪嫌いだよ。ずっと家の中に居なくちゃいけないし」
 幼く、外で遊ぶのが好きな凛音にとって、雪や雨は家の中に縛り付けられる呪いのようなものだと思っている。
 口を尖らせる凛音の頭を、琥珀はなだめるように優しく叩いた。
「考えてみろよ。いいか、冬の次には何が来る?」
「・・・春?」
「そうだ。春には花が咲くな?」
「うん」
「花を咲かせるには力を溜めなくちゃならねえ。ゆっくり寝て、温かくなったら一気に花を咲かせるんだ。冬、雪はその布団みたいなもんだ。ゆっくり寝るためのな」
「花の、お布団?」
 凛音は首を傾げて、自分の布団を思い浮かべた。
 確かに、包まるとあったかくてよく眠れる。
 よく寝れば、次の日は元気一杯で遊べる。
 そういうことなのだ。
「琥珀、わかったよ」
「ん?」
「外で遊べなくても、凛音我慢する!きれいなお花好きだもん」
「偉いな」
 琥珀は凛音を抱き上げると、肩車をした。
「さ、帰るぞ。腹が減った」
「うん、腹へった!」
 黄昏時を家路につく。
 凛音は琥珀の頭をきゅっと抱きしめると、その耳元にこっそりささやいた。
「起きる時間になったらお布団を無理矢理取られちゃうのも、一緒だね」
 そういえば、今朝は少し寒くて、布団から出たくないと駄々をこねた凛音は、瑠璃丸に布団を剥がされて床に転がされたのだ。
「違ぇねえ」
 二人の笑い声が、夕暮れに温かく響いた。
 
「雪」、「手毬」、「呪う」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
もう、朝、布団から出たくない季節ですね(^^;)。
凛音は龍と人間の子供、琥珀は妖狐です。
一度一覧を作らなきゃいけないかな。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

【517】

 畳に正座して、手を膝に置き、背筋を伸ばし、静かに庭に目を向けている。
 彼の目には、おそらく爛漫の桜が見えているのであろう。
 今は枯葉をつけているだけの桜の大木を、ただ静かに見据えている。
「・・・殿が切腹なされたとき、この庭には桜の花弁が降り注いでござった」
 彼はゆっくりとそう呟いた。
「殿は・・・今年は奥方の桜餅が食えなんだ、とただそれだけおっしゃって・・・」
 涙がはたりと膝に落ちた。
 春、つらい別れをしたその侍を、見ている人間は居なかった。
 ただ、襖に描かれた獣たちや、天井裏に潜む小鬼たちや、古き道具が見ているだけだった。
 だから、侍は今までこらえていた涙を、やっと、思うまま流すことが出来たのだった。


お題: 「畳」、「桜餅」、「描く」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578

秋なのに、お題に桜餅が出たので、どうしようかと思いましたさ(^^;)。

ブログ名、「猫又屋」も気に入っているのですが、犬神と妖狐に申し訳ないので、「桔梗堂」に戻しました。
今後ともよろしくお願いもうします。
あ、桔梗屋じゃないですよ?それじゃあ、一休さんの悪い商人になっちゃいますからね。

そうそう、このブログにいるあやかしたちがしゃべるツイッターボットなんてものがあるんですよ。
もしよろしければ、のぞいてやってくださいませ。
【あやかしbot@桔梗堂】について


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

【515】

 水は嫌いだけど、海は案外嫌いじゃない。
 猫又の翡翠はそんなことを思いながら、浜辺をゆっくりと歩いていた。
 さくさくと足の下で崩れる細かい砂の感触や、低く体に響くけれども静かでゆっくりとしたなみの音や、きらきらと陽射しを反射して輝く水面は、何度訪れても飽きない。
 嵐のあとなどに来れば、珍しいものや思いがけないものが打ち揚げられているのを見つけたりもする。
 たとえば、読めない異国の言葉が書かれた木の箱の残骸とか、淡い桜色の貝殻とか、海の色をそのまま形にしたような色のすっかり角が取れて滑らかに丸くなった石の欠片とか。
「あれはなにかな」
 その日は、波打ち際にきらりと光るものが目をひいた。
 歩み寄ると、しっかりと封がされた硝子の瓶だった。
 透明なその中には小さな袋が入っている。
 翡翠は封を破り、瓶の口を開けてみた。
「・・・花の香り?」
 ふわり、と甘い香りがあたりに漂う。
 それは今までかいだどの花の香りにも似ていなかった。
「異国の匂い袋なんだね」
 何故瓶に封じてあったのかは、わからない。
 香りすら逃がさぬようにしたかったのだろうか。
 どんな人に渡したかったのだろう。
 その手作りに違いない匂い袋がたどった旅路に思いをはせながら、捨てて行くのは忍びなくて、翡翠はそれを懐へ入れた。
「届けるのは無理だしね。気に入ったから、大事にしてあげるよ」
 海の向こうの誰かに呟いて、翡翠は浜辺をあとにした。


お題:「浜辺」、「匂い袋」、「猫又」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
翡翠が拾ったのはポプリのサシェでしょうか。
ラベンダーとか、バラとか、江戸時代ならなじみがない香りじゃないかな、と思います。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

【514】

 主の仇を討つために、あやかしどもの月見の宴に潜り込んだ。
 「月の君」と呼ばれるあやかし。
 その命を奪えと渡されたのは、銘もない小柄(こづか)だけだった。
 それが何を意味するのかわからないほど愚かであれたなら、きっともっと楽だっただろう。
 汗に湿る手に小柄を握りしめ、私は仇を探す。
 その時、ふわりと微かだが甘い百合の香が体を包んだ。
「子犬が何をしている?」
 降ってきた声に驚いて顔を上げると、そこには着流し姿の男が立っていた。
 結わえもせずに背に流した長い髪。その一握りだけが月光で染めたような銀。
「月の君!?」
 思わず声をあげた。その口がいささか乱暴にふさがれる。
「子犬よ。人とばれれば酒の肴にされるぞえ」
「構わぬ」
 小柄を握りしめる。
「食われるのは覚悟の上」
 そう。所詮そのための捨てごまなのだ。
 主の死になにもせぬ訳にはいかぬが、あやかしは恐ろしい。
 そう考えた家来たちが主の仇を討つという体裁をとるために送り込んだのが、身寄りもない下働きだったのだ。
 恐ろしいあやかしに刃を向ければ生きては帰れまい。しかし、殺されれば、これ以上手を出すのは危険だと知らしめることができる。
 また、恐ろしいあやかしであっても、人の子一人食らえば、恐らく刃を向けられた不興も晴れるであろう、と。
「私はここで死なねばならぬ。悲しむものもいない軽い命だ」
「ほお?」
 月の君は面白そうに笑うと、あっさりと私の手から小柄を抜き取った。
「返せ!」
「切れ味は悪くないが、小柄程度では我は殺せぬ」
 風のように手がひるがえった。
 気づけば、その手には髪が一房乗っていた。
 私の髪が、肩の辺りで断たれていた。
「これに丁寧に文をつけて、おぬしをここへ寄越した者に送りつけてやろう。そうじゃな、多少血もつけておいた方がいいか?」
「何を考えている?」
「なに、食ってしまうよりも飼ってみたいと思ってな。その命、捨てるなら俺がもらおう」
 にやりと笑うあやかしに、私は毒気を抜かれて差し出されたその手をとってしまった。


お題: 「月見」、「小柄」、「百合」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

前のページ HOME 次のページ

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
カウンター
カレンダー
02 2025/03 04
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

忍者ブログ [PR]
template by repe