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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【518】

 ぽんぽんと、手毬(てまり)が跳ねる。
 地面と手を行ったり来たり。
 でも、急に吹き付ける北風にちょっと目を閉じたら、毬はあさっての方向に飛んでいってしまった。
「あーあ」
 慌てて追いかけて、凛音は毬を捕まえる。
 ふと見上げれば、青々としていた草は茶色く枯れ、木の葉は落ち、風景は寒々しい。
「もうすぐ雪が降るかもしれねえな」
 妖狐の琥珀は空を見上げた。
「えーっ!雪嫌いだよ。ずっと家の中に居なくちゃいけないし」
 幼く、外で遊ぶのが好きな凛音にとって、雪や雨は家の中に縛り付けられる呪いのようなものだと思っている。
 口を尖らせる凛音の頭を、琥珀はなだめるように優しく叩いた。
「考えてみろよ。いいか、冬の次には何が来る?」
「・・・春?」
「そうだ。春には花が咲くな?」
「うん」
「花を咲かせるには力を溜めなくちゃならねえ。ゆっくり寝て、温かくなったら一気に花を咲かせるんだ。冬、雪はその布団みたいなもんだ。ゆっくり寝るためのな」
「花の、お布団?」
 凛音は首を傾げて、自分の布団を思い浮かべた。
 確かに、包まるとあったかくてよく眠れる。
 よく寝れば、次の日は元気一杯で遊べる。
 そういうことなのだ。
「琥珀、わかったよ」
「ん?」
「外で遊べなくても、凛音我慢する!きれいなお花好きだもん」
「偉いな」
 琥珀は凛音を抱き上げると、肩車をした。
「さ、帰るぞ。腹が減った」
「うん、腹へった!」
 黄昏時を家路につく。
 凛音は琥珀の頭をきゅっと抱きしめると、その耳元にこっそりささやいた。
「起きる時間になったらお布団を無理矢理取られちゃうのも、一緒だね」
 そういえば、今朝は少し寒くて、布団から出たくないと駄々をこねた凛音は、瑠璃丸に布団を剥がされて床に転がされたのだ。
「違ぇねえ」
 二人の笑い声が、夕暮れに温かく響いた。
 
「雪」、「手毬」、「呪う」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
もう、朝、布団から出たくない季節ですね(^^;)。
凛音は龍と人間の子供、琥珀は妖狐です。
一度一覧を作らなきゃいけないかな。


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ポッキーの日 HOME 春に別れ、秋に悼む

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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