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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【522】

 囲炉裏に鍋がかかっている。
 葱に大根、白菜、きのこ、それに鶏肉の団子が美味しそうに煮えている。
「そろそろいいかな」
 ふつふつと湯気を上げる汁をじっと見ている翡翠の目のまえで、不意に薄茶色の物体がざらざらと放り込まれた。
「え?あ・・・ちょっと!」
 顔を上げると、琥珀が嬉しそうににやにやと笑っている。
 嫌な予感に鍋に目を戻せば、そこには汁の表面を覆ってしまうほどの油揚げが放り込まれていた。
「琥珀!何するんだよ!」
「いいじゃねえか。稲荷の社からお下がりをもらったんだ。うまいぞ。なにしろ神社に奉納する代物だからな」
「そうじゃなくて!せっかくそろそろできあがりだったのに、あげを煮る分だけ他のものを余計に煮なきゃいけないでしょ!」
 ぎりっと奥歯をかみ締めた翡翠は、持っていた菜ばしを置くと、右手を突き出した。
 指先にゆらりと蛍のような火が点る。
 それは次第に大きくなり、拳ほどの大きさにまで膨れ上がった。
「おい、翡翠?」
 琥珀がやばい、と言う顔をして、じりじりと後ろに下がる。
 翡翠は耳が伸びて黒い毛に覆われ、緑の瞳は縦に虹彩が割れ、放つ殺気で髪がゆらゆらと踊っていた。
 普段はめったに表に出ない二股の尻尾すら、ゆらりと姿を見せる。
 すっかり、理性を吹っ飛ばしている・・・。
「悪かった!翡翠、落ち着け!」
 琥珀は叫んで家を飛び出した。
「問答無用ーっ!」
 その背後から、光の玉が情け容赦なく琥珀を追う。
「ったく!たかが晩飯だろうが、よっ!」
 琥珀は家から少し離れた場所で振り返ると、手のひらに気を集め、勢いよく飛んできた光の玉を受け流すように空へ跳ね飛ばした。
 玉は空を上り、やがて見えなくなる。
「・・・いいじゃねえかよ。あげぐらい」
 呟いた琥珀に少し肌寒い風が吹き付けた。琥珀は髪をかき上げると、深々とため息をついた。
「やべえなあ。晩飯、ありつけるかなあ・・・」
 虫たちが、そんな琥珀を笑うようにころころと楽しげに鳴いていた。


お題:「稲荷」、「鍋」、「蛍」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
あー、なんでこうなった・・・wwww
妖狐の琥珀、猫又の翡翠、犬神の瑠璃丸、龍と人の子の凛音は、一緒に暮らしています。
料理は翡翠の役割なのですが、手先が器用な分、神経も少し細かいようです(^^;)。
たぶん、琥珀は晩御飯食べられます。
怒ってはいても、翡翠が「あげは責任もって食べてよ!」と言うに決まっていますからね。

いつも、拍手ありがとうございます。
だいぶ登場人物が錯綜してややこしいことになっているので一覧を作ろうと思うのですが、時間がないのでとりあえず、ツイッターのボット用に作った記事をリンクしておきます。
下の方に、簡単なうちの子達の説明が書いてありますので、参考になれば。
ここも含めて、いずれキャラクター一覧を別で作りますので、それまでの暫定と言うことでご容赦ください。
こちら→http://kikyoudou.tsuyushiba.com/Entry/196/


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宵月楼 店主
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非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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