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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【1077】 ラムネの海

ゆっくりと沈んでいく。
揺れる水面を見つめながら、仰向けのまま、ゆっくりと、ゆっくりと。
透き通る青を上っていく泡がまるでラムネ瓶の中のよう。
助けてほしい訳じゃなく、指先を染める太陽の光を見ていたくて、手をさしのべたまま沈んでいく。
静かな水底へ。


【1078】 まどろみ

縁側でまどろんでいると、足音を忍ばせて近づいてくる気配がした。
気配は側まで来ると立ち止まる。
大方俺を起こすかどうか迷っているのだろう。
しかし何もしないで踵を返す音に俺は苦笑して目を開けた。
「行くなよ」
手首を捕まえると、振り返った顔が真っ赤になっていた。


【1079】 風鈴

あの人が縁側でまどろんでいる。
声をかけようとしたけれど、あまりにも気持ち良さそうで起こすのが悪い気がしてしまう。
それに少し無防備な寝顔は私しか見られない宝物。
だけどその時、風鈴が音をたてた。
寝顔に見とれていた私は我に返ると恥ずかしくなって踵を返した。


【1080】 脱皮

皮膚が硬くなり、ぺりぺりと剥がれ始めた。
はて、トカゲになった覚えはないが、脱皮したら何になるのだろう?
そもそも卵の殻を剥くように全部剥がれてしまったら、中から何が出てくるのだろう?
空っぽな少年は、ひび割れた己の指先の皮膚をぼんやりと見つめた。


【1081】 終わりの予感

なんとなく流れる空気に終わりを予感する。
何か行動を起こせばもしかしたら好転するかもしれないなんて、未練が思わせる馬鹿げた妄想だ。
もう君の目は僕を見ていない。
痛いほどわかるから、「サヨナラ」だけを用意する。
そうして離れていく君を僕はただ引き留めもせず見送るんだ。


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【1056】 

「これは何ですか?」
師匠の手に乗っている勾玉は深い藍で、中にいくつもの星が弾けている。
「秘めし星の勾玉という」
すごい力が閉じ込められているのだろう。
背筋が少し寒い。
術師として未熟な僕が触ったら、きっと町くらい吹き飛ぶ。
「怯えなくてもいい。封印すればただの石だ」

設定:とても美しい宝玉で秘めた力が宿っている。使い方を誤ると、街1つを壊滅する。(神威鴉魔さん)


【1057】 戦嫌い

知らん顔ばかりが得意になる。
でもこれでいい。
ぶつけられた凶器に凶器で返したってずたぼろになるばかりで誰も得しやしないんだし、無関心でいればそのうち張り合いがなくなって飽きるでしょ。
だから、僕は何もしない。
「殿!合戦中ですぞ!」
「逃げよう」
「殿!」

書き出しをお借りして。


【1058】 背の傷

「敵に背を向けた証だから、背中の傷は恥ずかしいって言われたんだ」
息子の言葉に俺は笑んだ。
共に風呂に入る度に俺の背の傷を見ている彼は、俺のために胸を痛めているのだ。
「大事な者を守るためなら恥ずかしくないさ」
そう言って抱きしめると息子は背の傷の意味を悟ってくれた。

身を挺して守るため、敵に背を向ける勇気。


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【1049】 僕の心

君はまぶたを伏せると両手で光る星を包み込んだ。
淡い光を放つそれは僕の心。
君は気づいているのかいないのか、それを大事そうに胸元に抱き寄せて、「大丈夫」って囁いた。
僕はとても安心して、柔らかい眠りに身を委ねた。
僕の心はとっくに君に預けてあるんだ。

お題:本日の身体部位は「まぶた」、行動は「包む」、甘い作品を創作しましょう。補助要素は「心」です。 #karadai http://t.co/Ef6WvKqa

【1050】 忠誠

いつまでもこの方の側にあるのが自分の役目だと、そう心に決めたのは五歳の時だった。
それ以来、俺の命はこの方のものだ。
俺はお頭の影に控えて、頭を下げる。
「お前の命をくれとは俺には言えぬ」
「そのお気持ちだけでじゅうぶんです」
甘い人だ。
だが、だから仕えたい人なのだ。

お題:今日の書き出し/締めの一文 【 いつまでもこの方の側にあるのが自分の役目だと 】  http://t.co/xa0YiAVQ


【1051】 ゲーム

「君はこのゲームにのる?」
僕の問いに君が悩む。
その表情が見たいから、こんなギリギリのゲームを仕掛けたんだよ。
本来、僕は勝てる勝負しかしない。
でも君は僕の中の冷静さを狂わせる。
「君と命のやり取りなんて、ゾクゾクするよ」
僕はその時、確かに心から楽しんでいたんだ。

お題:今日の書き出し/締めの一文 【 君はこのゲームにのる? 】


【1052】 精一杯

「ったく、めんどくせえな」
無意識に口癖を呟けば、お前が申し訳なさそうにするのが目に入る。
まずいな、と思っても、今さら優しい言葉なんざ柄じゃねえ。
仕方ないからそっぽを向いたまま手を差し出す。
「迷子になったら困んだろうが」
これが精一杯だ。
さあ、お前はどう出る?

友達の「めんどくさいとか言いながらも優しい人がいい」っていう言葉に、「じゃあ、こんなの?」と書いたもの。
実はアンサーで女の子側を書いてもらって、それがまたかわいくてかわいくて(^^)


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【1040】 至福の夜

眠っている君の柔らかな髪にそっと指を絡ませると、淡く微笑んで君は寝返りをうった。
今だけは僕だけの君だって思っていいかな。
寝顔を胸に刻んでも僕は目を閉じる気になれなくて、君をずっと見つめていた。
一晩だけ、君を独り占めする幸せに身を浸していた。

お題:
今日の書き出し/締めの一文 【 眠っている君の柔らかな髪にそっと指を絡ませる 】  http://t.co/xa0YiAVQ


【1041】 雨

雨はツマンナイ。
君と会えないから。
散歩に行けないから。
体中湿っちゃうから。
でも、雨音は優しい。
雨上がりは綺麗。
君にやっと会えて嬉しい。
うん、そんなに悪くはないかもね。

お題:四季の徒然、梅雨

【1042】 夜を喰う

雨は夜を喰う。
僕は暗い部屋の中で、それに怯えて息を殺す。
夜を喰われて空虚になった世界はきっと外側からへこんで、へこんで、空気の抜けた風船のように僕ごとすべてを押しつぶす。
雨は夜を喰う。
僕の心を喰う。


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【1039】

死因は優しい嘘だった。
君がよかれと思ってついた嘘。
ちょっとした気紛れでついた小さなその一言が嘘だとわかった時、僕の心は壊れた。
貫かれた心から冷たい刃を引き抜いて、僕は君を道連れにした。
さよなら。優しい君。
僕を好きなふりなんかしなければよかったのに。

書き出しをお借りして。


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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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