宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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1
露草小路に機織りの音が響く。
からからぱったん。からからぱったん。
人は機械で安く大量に布を作るけれど、あやかしによっては化学繊維が肌に合わない者もいるから、狛犬の阿騎(あき)は自然の糸を自然のもので染めたものを使って、手で布を織る。
ひとつひとつ丁寧に。
2
露草小路に機織りの音が響く。
からからぱったん。からからぱったん。
人は機械で安く大量に布を作るけれど、あやかしによっては化学繊維が肌に合わない者もいるから、狛犬の阿騎(あき)は自然の糸を自然のもので染めたものを使って、手で布を織る。
ひとつひとつ丁寧に。
2
しゃらん、と微かな音に気づいて、阿騎は機織りの手を止めた。
少し体の綿埃を払ってお茶を入れる。
ほどなく鈴彦姫のささねが現れた。
彼女は時々やって来ては阿騎の布を買ってくれる。
「こんにちは、阿騎さん。織り上がったのを見せてくださる?」
「ああ、でも、お茶の後でね」
3
「あら、珍しいわね、これ」
ささねがつまみ上げたのは羊の形の饅頭だった。
めえめえと可愛く鳴いている。
「夢の中で群れていたとかで、貘の旦那にもらったんだよ。どうやら誉めると喜ぶらしい。美味いよ」
ささねは笑みを浮かべて羊の形の饅頭を撫でた。
4
「可愛いわねえ。食べちゃいたいくらい」
そして本当にぱくりと一口。
「ほんと。おいしい」
「この辺では見たこと無いから、どっか夢を通じて流れてきたんだろうってさ。夢の中は距離があるようでないものだから」
阿騎は自分もぱくりと食べると、立ち上がった。
5
少し体の綿埃を払ってお茶を入れる。
ほどなく鈴彦姫のささねが現れた。
彼女は時々やって来ては阿騎の布を買ってくれる。
「こんにちは、阿騎さん。織り上がったのを見せてくださる?」
「ああ、でも、お茶の後でね」
3
「あら、珍しいわね、これ」
ささねがつまみ上げたのは羊の形の饅頭だった。
めえめえと可愛く鳴いている。
「夢の中で群れていたとかで、貘の旦那にもらったんだよ。どうやら誉めると喜ぶらしい。美味いよ」
ささねは笑みを浮かべて羊の形の饅頭を撫でた。
4
「可愛いわねえ。食べちゃいたいくらい」
そして本当にぱくりと一口。
「ほんと。おいしい」
「この辺では見たこと無いから、どっか夢を通じて流れてきたんだろうってさ。夢の中は距離があるようでないものだから」
阿騎は自分もぱくりと食べると、立ち上がった。
5
「持ってくるよ。待ってて」
織った布はとりあえずすべて彼女に見せることにしていた。
その中で彼女が気に入ったものだけを買い取ってもらう。
柄や質感で仕立てる服が変わるのだから、すべて買えと言うのは無理な話だが、もちろん他にもお得意様はいるので困ることはない。
6
ただ、彼女の作る服や着物が一番自分の布に合っている気がして、阿騎は彼女にまず選んでもらうことにしていた。
「どう?」
「そうね」
ささねが首をかしげると、しゃらんと音がする。
「これとこれ。あと、これ」
最後に選んだ布を少し広げてささねは笑った。
「これ、自分用ね?」
7
「ばれた?」
悪びれもせず笑って見せる。
それは、自分好みの柄と手触りで織った布だった。
彼女が気づけば自分の服を頼もうと織ったものだ。
悪戯に引っ掛かった顔をしてささねは苦笑した。
「わかったわ。仕立て賃は取るわよ?」
「よろしく」
代金を受け取り、布を包む。
8
「じゃあ、いつも通り送っておくよ」
「ええ。お茶とお饅頭、ごちそうさま」
ささねは軽く頭を下げて、手ぶらのまましゃらんと名残の音を残して帰っていった。
布は重いので、小鬼便で送るのだ。
「今日はよく笑ってたな」
満足げに阿騎は呟くと、小鬼を呼ぶべく呪符を手に取った。
診断メーカー【あやかし町へ、いらっしゃい】( http://shindanmaker.com/279875 )を使用して。
診断結果
狛犬(こまいぬ)で露草小路に住んでいる機織りです。扇子を大事にしています。鈴彦姫(すずひこひめ)とは仕事で付き合いがあるようです。
ここから広げて書いてみました。
ひつじまんじゅうは、友達の空想横丁の和菓子屋さん【雨竜堂】( http://togetter.com/li/391904 )で売り出していたもので、夢の中経由でちょっとお借りしました。
参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

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織った布はとりあえずすべて彼女に見せることにしていた。
その中で彼女が気に入ったものだけを買い取ってもらう。
柄や質感で仕立てる服が変わるのだから、すべて買えと言うのは無理な話だが、もちろん他にもお得意様はいるので困ることはない。
6
ただ、彼女の作る服や着物が一番自分の布に合っている気がして、阿騎は彼女にまず選んでもらうことにしていた。
「どう?」
「そうね」
ささねが首をかしげると、しゃらんと音がする。
「これとこれ。あと、これ」
最後に選んだ布を少し広げてささねは笑った。
「これ、自分用ね?」
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「ばれた?」
悪びれもせず笑って見せる。
それは、自分好みの柄と手触りで織った布だった。
彼女が気づけば自分の服を頼もうと織ったものだ。
悪戯に引っ掛かった顔をしてささねは苦笑した。
「わかったわ。仕立て賃は取るわよ?」
「よろしく」
代金を受け取り、布を包む。
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「じゃあ、いつも通り送っておくよ」
「ええ。お茶とお饅頭、ごちそうさま」
ささねは軽く頭を下げて、手ぶらのまましゃらんと名残の音を残して帰っていった。
布は重いので、小鬼便で送るのだ。
「今日はよく笑ってたな」
満足げに阿騎は呟くと、小鬼を呼ぶべく呪符を手に取った。
診断メーカー【あやかし町へ、いらっしゃい】( http://shindanmaker.com/279875 )を使用して。
診断結果
狛犬(こまいぬ)で露草小路に住んでいる機織りです。扇子を大事にしています。鈴彦姫(すずひこひめ)とは仕事で付き合いがあるようです。
ここから広げて書いてみました。
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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