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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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お化けカボチャが主の部屋を占拠したのち窓から壁を伝って店の方に侵入するに至って、使い魔である翼猫のカタンは撤去することを諦めた。
この時期、お化けカボチャの蔓はそのケタケタ笑う実を支えるためにとても丈夫になり、引きちぎったりするのはとても無理なのだ。
天気は当分いいとのことなので、カタンはまず窓を閉めるのを諦めた。
次にお化けカボチャに飾りをつけた。
小さなとんがり帽や蝶ネクタイを着けたお化けカボチャは思ったよりも可愛く見映えがする。
「これはやっぱりお菓子が必要ですね」
幸い、材料は腐るほどある。
ほどよく熟れたカボチャは、笑い疲れたように目を閉じて静かにころんと蔓から外れるのだが、もうそれが十個ほど貯まっていた。
それを使ってクッキーやケーキを作る。
「お菓子か、悪戯か!」
叫びながら町をまわる子供たちに、ケタケタ笑うクッキーは大ウケだった。
「今まで酒屋なんて来たこと無かったけど、面白いね!」
最初にそう話しかけてきたのは、栗色の髪の少女だった。
商売柄、大人なら覚えているが、子供はあまり顔馴染みじゃない。
カタンはついいつものくせで礼儀正しくお辞儀をすると微笑んだ。
「いらっしゃいませ」
「やだ。あたしたちお客さんじゃないよ」
少女が笑う。
馬鹿にしているわけじゃなく、大人扱いの挨拶に照れたのを隠すようなくすぐったそうな笑い。
カタンは少しばつが悪そうに笑みを浮かべた。
「そう・・・だね。来てくれてありがとう。紅茶でもどう?」
「いいの?」
頷いてカタンは少女を店の窓際に配した小さなテーブルに案内した。
ケタケタ笑って出迎えるお化けカボチャに目を丸くする少女に椅子を勧める。
扉は開け放ち、窓だけでなく扉からも店内が見えるようにしておいた。
案の定、興味を引かれた子供たちが、最初はおずおずと、そしてだんだん好奇心いっぱいの顔をして店に入ってくる。
優しい紅茶の香りを漂わせて、カタンは微笑んだ。
「お化けカボチャがある間は、この店は子供優先だよ」
主のにやにや笑いが頭をかすめた。
「どうぞ」
「ありがとう」
少女はうれしそうに笑った。
「あ、まだ言ってなかった。私はアベリア。よろしくね・・・えっと」
「僕はカタン。この店の主の使い魔だよ」
「よろしくね、カタン」
花の名前の少女は、使い魔だと聞いてもまるで変わらない笑顔でそう言った。



この前の「お化けカボチャと翼猫」の続きっぽいもの、です。
カタンに同じ年頃の友達を作ってあげたい気がしたので、主の計らいにカタンがどうするか書いてみました。
・・・恋愛物は苦手です(^^;)。


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世界樹の一葉 HOME お化けカボチャと翼猫

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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