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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【紡ぐ】

吐き出した息が色をもって風に流れた。
細く息を吐いているのは、毛羽毛現というあやかし。
糸に関わるものを操る才を持つ彼女は、色のついた息をそっとたぐって束ねる。
その艶やかな糸の束は人には作り出せぬ幻の絹となる。
だが囚われの彼女がその絹をまとうことはないのだ。

書き出しをお借りして


【火焔華】

花が燃えている。朽ちるでなく、萎れもせず、炎の花弁が狂い咲いている。
燃え盛る花を鬼の娘が摘んでいる。
手折られた花は、たおやかな指で花冠に編まれ、娘はそれを持って里へ行く。
人であった時の記憶の中のいる、愛しい男を探してそれを被せるために。

書き出しをお借りして

【翼猫】

とがった耳と細く長い尻尾が生えた子供を拾った。
正確には、うちの庭で寝ていたんだが。
門は閉じているし、うちはひとけもあまりない町外れにあって子供が入り込んだらわかりそうなものだが、全く気づかなかった。
耳と尻尾は黒くて手触りは猫のようだが、さて、何者だ?
しかし、放っておくわけにもいかないと脇に手を入れて抱き上げるとぱちりと目を開けた。
おや、この子はオッドアイだ。
金と銀の色違いの瞳が臆せず俺を見つめる。
切れた光彩は縦長で、やはり猫のようだ。
「どこから迷いこんだんだい?」
俺の問いに子供は上を指差した。
「空?」
「うん」
そう言うと、子供はぽわんと猫に戻った。
黒い子猫は俺の手からすり抜けて落ちるかと思ったが、俺の目の高さに居続けている。
「ああ、道理で」
俺の声に子猫は自慢げに宙返り。
子猫の背には一対の翼が生えていたのだ。
翼猫。
本物を見たのは初めてだった。
「空から庭見たん。お花と木が呼んだん。ボク、ここに住む」
そう言ってふわふわと飛び回っている。
どうやら翼猫君はうちの庭がお気に召したらしい。
追い出すほど野暮でもないつもりだ。
「一緒に朝ごはんをどうだい?」
「にゃ!」
こうしてうちは少し賑やかになった。


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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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