宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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【あける左手】
浴衣姿のお前は、着慣れないのか動きがぎこちない。
「大丈夫か?」
祭りの人混みに足元が危うくて支えようにも、右手にたこ焼き、左手に焼きそば。
ええい、仕方ない!
「これ、やるよ」
通りすがる子供に焼きそばを押し付けて、空いた左手をお前に伸ばす。
歌をお借りして。
【ため息】
ソーダ水を注げば、コップの底から泡がのぼってくるはずだった。
でも透明なグラスにのぼってきたのは小さなため息で。
氷の中に注いで冷えた想いを、一気に飲み干して忘れてしまおう。
僕の口からも、小さなため息。
書き出しをお借りして。
【涙雨】
君とすれ違い、最後の会話を終えたあと、喫茶店のドアを開けて一人熱気の中へ体を放り出す。
乾いた心はぼんやりと欠けた部分をなぞっているが、あまり感情は動かない。
もうずっとわかっていたことだから、ただそれを確認するだけで。
代わりに、ああ、雨の匂いがする。
お題:今日の書き出し/締めの一文 【 雨の匂いがする 】 http://t.co/xa0YiAVQ
【空】
「空を見せて」と言った君は窓もない部屋で一人きり。
僕はありったけのクレヨンで壁に窓を描いて、一面空色で塗った。
「これが空?」
頷く僕に嬉しそうに笑う君。
そうだよ。これは君だけの青い空。
この破壊された地上に残された、たった一人の人類の為の空。
書き出しをお借りして。
この中の「僕」は人間ではありません。
【降参】
それは安っぽいおもちゃの指輪だった。
たったそれだけの幼い約束をすっかり忘れていた僕を、君は蹴飛ばしにやってきた。
「もう小指にしかはまんないよ」と笑う君に、僕は「今度はおもちゃじゃないから」って、諸手を上げて言ったんだ。
お題:今日の書き出し/締めの一文 【 それは安っぽいおもちゃの指輪だった 】 http://t.co/xa0YiAVQ
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