宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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赤い瞳がまるで鋭利な刃物のように俺を貫いた。
純粋な敵意に満ちた瞳。
「殺してやる」
血を吐くような呟き。
額に角が生え、爪が鋭くなり、牙が見え隠れする。
「お前にはその権利がある。全力で来るがいい」
お前の一族を滅ぼした仇として俺はこの殺意を受け止めよう。
お題:今日の書き出し/締めの一文 【 赤い瞳がまるで鋭利な刃物のように俺を貫いた 】 http://t.co/xa0YiAVQ
【1144】 井戸の中
「若殿様、お薬は飲まれましたか」
屋敷の隅の古い井戸にはあやかしが住んでいる。
病弱で一人臥せっていた私は、いつしか彼女と親しくなっていた。
「月乃はいつも私を気にかけるのだね」
「月乃を気にかけてくださるからですよ」
そう言う彼女の淡い笑みが私は好きだった。
お題:今日のお題 「井戸」 「薬」 「若殿」 http://t.co/AMef1Qc2
【1145】 なくした記憶
大切にしまって置いた記憶がない。
机を探しても、タンスを探しても、どこにもない。
僕は途方にくれて上を見た。
「あ」
天井を走って記憶を持った小鬼が逃げる。
「ちょっと待て!」
それは大切な・・・あれ?本当に大切なものだっけ?何の記憶だったかな・・・。
書き出しをお借りして。
【1146】 達磨
「切腹ね」
俺は残された上意書を横目で見た。
たかだか江戸家老の息子を痛めつけただけで何でこうなるかね。
「どうすんだ、お前」
呆れ顔の兄に俺はニヤリと笑った。
「家出て剣客にでもなるわ」
「じゃあ、これ持ってけ」
投げられた達磨の根付は俺を見るとため息をついた。
「この兄弟ときたら、先祖と違っていい加減に過ぎる」
達磨は目をぎょろりとさせてそう愚痴る。
「兄貴、これ」
「家宝だ。売るなよ」
「ああ・・・じゃなくて!」
「ちょっと煩いが、役に立つ」
ちょっとどころじゃないのは、幼い頃からの付き合いで身に染みているんだが。
「そもそも切腹の命が出ているのに逃げるとは何事」
「まあそう言うな。こいつの素行の悪さは噂になっているし、次男が行方をくらませても家がつぶれることはなかろうよ。諸国を見るのも修行になるしな。あんたがついていきゃ変なあやかしに襲われることもなかろう?」
「まあ、よかろう」
達磨は重々しく頷くと目を閉じ、根付に戻った。
「お前は美味そうなんだから、用心に越したことはないだろう?」
心遣いはありがたい。
俺はあやかしに好かれる質なのだ。食料として。
それにこれが永の別れになるかもしれない。無下にはできなかった。
お題:今日のお題 「切腹」 「根付」 「剣客」 http://t.co/AMef1Qc2
【1147】 犬妖
「雷が来まする」
不意に庭で声がした。
「雷雨でございまする」
その声と気配にただならぬものを感じて、俺は小太刀を手にすると縁側へ出る。
庭には茶色い犬が座っており、黒い瞳で俺を見ると尻尾をぱたりと振った。
「一夜の宿をお貸し願いたい」
そして律儀に頭を下げた。
今日のお題 「雷」 「小太刀」 「犬」 http://t.co/AMef1Qc2
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