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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【539】

 長屋の空いていた部屋に、浪人が越してきた。
 奴はあまり多くない荷物を持ち込むと、さっさと自分が暮らしやすいように部屋を整えてしまう。
 今まで、近所の悪がきたちから逃げて昼寝をするのにちょうどよかったんだけど、ここも使えなくなるな。
 そう思いながら奴の脇をすり抜けようとすると、声が降ってきた。
「おや、先客がいたのか」
 僕が足を止めて見上げると、今気付いた、というように少し驚いた顔で奴が僕を見下ろしている。
 失礼な奴だな。僕、さっきまで部屋の隅で昼寝してたんだけどね。
「どうした?俺が越してきたので不機嫌な様子だな」
 まあ、盗人とまでは言わないけど、追い出される気分ではあるよ。
「人の言うことがわかっているような顔だな」
 奴は笑うと、僕のそばにしゃがみこんだ。
「この部屋はお前が先に使っていたようだし、追い出すのは俺としてもあまり気分のいいものじゃない。どうだ、お前さえ良ければ、このままここに住んでみては」
 この男は、馬鹿だろうか。
 僕は呆れた。
 野良猫が勝手に入り込んでいたと、大家に食って掛かってもおかしくないというのに、一緒に住んでみないかだって?
 でも、僕はなんだかそのまま出ていけなくて、尻尾を一振りするときびすを返して部屋に戻った。
 まあ、雨露をしのげる場所が確保できるのはいいと思えたんだ。
 それに、大人なら悪がきたちのように僕を構いすぎることもないだろうし。
 ねえ、ご飯ももちろんつくんだよね?
 僕の期待するような視線に、奴は苦笑した。
「わかったよ。贅沢は言うなよ?」
 鼓が打てば響くように、何故か奴にも僕の言いたいことがわかるみたいだった。
 うまくやっていけそう。
 僕は了承の代わりに尻尾をもう一振りすると、昼寝の続きをすることにした。


お題: 「長屋」、「鼓」、「盗人」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
鼓が無理矢理でしたね(^^;)。
もっと長ければ、無理なく出せたのかもしれません。
力不足を痛感です・・・orz


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自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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