宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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【536】
お屋敷は知らない人がたくさん居て、五歳で養子として入った私にはとても怖いところだった。
たいていは刀を持った男の人か、しかめつらしい顔をして行儀をあれこれと注意する女の人で、二言目には「鄙(ひな)育ちは、これだから」と言われてさげすむような視線を遠慮なく浴びせるのだ。
だから、半年と経たぬうちに、私は自室から出ることも難しくなっていた。
そんな時、義父が連れてきたのが、師匠だった。
最初、私はその大柄で無精ひげの侍がとても怖かった。
だが、彼は私の前に一振りの小太刀を置くと、とても優しい顔で笑ったのだ。
「某はそなたの実の母君を存じ上げている。その昔、某が幼少の時にこの小太刀を下されて、励ましていただいた。それをお子であるそなたに渡す機会を得たのもなにかの縁だろう。強くありたいのであれば、某が稽古をつけて差し上げよう」
小太刀は黒塗りに銀粉で淡く蔦の絵が施されており、その美しさに私は手にとってそれを抱きしめた。
そして、師匠について小太刀を扱う修行を始めたのだ。
母の形見の小太刀と、その技が、私に自信と勇気をくれた。
そして、師匠は私にとってとても大切な失いがたい人となっていったのだった。
お題: 「屋敷」、「小太刀」、「師匠」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
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お屋敷は知らない人がたくさん居て、五歳で養子として入った私にはとても怖いところだった。
たいていは刀を持った男の人か、しかめつらしい顔をして行儀をあれこれと注意する女の人で、二言目には「鄙(ひな)育ちは、これだから」と言われてさげすむような視線を遠慮なく浴びせるのだ。
だから、半年と経たぬうちに、私は自室から出ることも難しくなっていた。
そんな時、義父が連れてきたのが、師匠だった。
最初、私はその大柄で無精ひげの侍がとても怖かった。
だが、彼は私の前に一振りの小太刀を置くと、とても優しい顔で笑ったのだ。
「某はそなたの実の母君を存じ上げている。その昔、某が幼少の時にこの小太刀を下されて、励ましていただいた。それをお子であるそなたに渡す機会を得たのもなにかの縁だろう。強くありたいのであれば、某が稽古をつけて差し上げよう」
小太刀は黒塗りに銀粉で淡く蔦の絵が施されており、その美しさに私は手にとってそれを抱きしめた。
そして、師匠について小太刀を扱う修行を始めたのだ。
母の形見の小太刀と、その技が、私に自信と勇気をくれた。
そして、師匠は私にとってとても大切な失いがたい人となっていったのだった。
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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