宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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昨日はハロウィンでしたので、ハロウィンものをいくつか。
【魔女の君の昼と夜】
「これしたい」
座敷童が指差したのはテレビのハロウィン特集だった。
「仮装して、夜、家をまわりたいと?」
一応確認すると、こくこくと勢い良く頷く。
どうしたものか。
こいつは普通の座敷童じゃない。
だが、期待に満ちた目をされては嫌とは言えない。
「どんな格好するんだ?」
「魔女!」
「はいはい」
たとえ日本のあやかしだとしても、幼児にとって魔女っ子は永遠の憧れなのだろう。仕方なく買い出しに行き、仮装用衣装を買い込む。
夕方、着替えた彼女はご満悦で、まあ、これだけ喜んでくれれば後のことにも耐えられそうだ。
そして、日が暮れる。
「・・・で、これはなにかしら?」
太陽が姿を消すと、座敷童は妙齢の美女に姿を変えた。
彼女は昼の間は力を封じられ座敷童になってはいるが、れっきとした狐のあやかしである。しかも齢数百年の大妖だ。魔女の仮装はお気に召さなかったとみえて空気がぴりぴりと音を立てる。
「昼間、チビがどうしてもって言うもんだから」
「へええ、そう」
一応、昼間は座敷童になっているとわかってはいても記憶はないのだから、こういう反応は覚悟していたことだった。「・・・お手柔らかに」
苦笑する俺を彼女は十秒ほど見つめ、やがてきゅっと俺の首に腕を回した。
「お菓子も悪戯も、よ。覚悟しなさいね」
「はいはい」
とりあえず、夜の彼女は悪戯で手を打ってくれるらしい。
昼間の彼女には、明日、お菓子を用意しないとな、と頭の隅で考えながら、俺は狐の魔女を抱き締めた。
【稲荷神社の十月末日】
「うっわ、これ何?」
右の狐が眉をひそめる。人にはわからぬだろうが、そこここに人ではないものが混じっている。
「今日はハロウィンだろ?」
左の狐が社に入ってきた小者をつまんで追い出す。
「西洋化も際まれりだねえ」
「神様たちはまだ出雲だしな。緩んだ境から入り放題だ」
「うわあ。なんかムカつく」
右の狐はほうきを乱暴に振り回した。左の狐はそれを器用に避けてコウモリ型の一匹を捕まえる。
「文句言わずに掃除しろ」
「はいはい。ったく、土産奮発してもらわないとだね!」
ばたばたと二匹の狐は社を駆け回る。
神様のお帰りに間に合うように。
【日本のあやかしの心意気】
西洋の奴らにだけいい格好はさせられねえさ。
人に化ける技もだが、菓子の出来も奴らにゃ負けねえ。
狐は目を細めてにんまり笑う。
お菓子か悪戯かなんて生ぬるい。
当然お菓子で悪戯さ。
笑う饅頭たっぷり持って、狐の面を被った少年が尻尾ふりふり夜の町。
【悪戯先約済】
「ほら気を付けて。今日は境目が緩くなってるから」
言われてみれば、物陰にゆらりと何かの気配。
「声をかけられたら渡せるように、お菓子を持ってないとだめだよ」
心配性の猫又はざらっと飴を手渡す。そして彼女ににこりと笑った。
「君に悪戯していいのは僕だけだからね」
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【魔女の君の昼と夜】
「これしたい」
座敷童が指差したのはテレビのハロウィン特集だった。
「仮装して、夜、家をまわりたいと?」
一応確認すると、こくこくと勢い良く頷く。
どうしたものか。
こいつは普通の座敷童じゃない。
だが、期待に満ちた目をされては嫌とは言えない。
「どんな格好するんだ?」
「魔女!」
「はいはい」
たとえ日本のあやかしだとしても、幼児にとって魔女っ子は永遠の憧れなのだろう。仕方なく買い出しに行き、仮装用衣装を買い込む。
夕方、着替えた彼女はご満悦で、まあ、これだけ喜んでくれれば後のことにも耐えられそうだ。
そして、日が暮れる。
「・・・で、これはなにかしら?」
太陽が姿を消すと、座敷童は妙齢の美女に姿を変えた。
彼女は昼の間は力を封じられ座敷童になってはいるが、れっきとした狐のあやかしである。しかも齢数百年の大妖だ。魔女の仮装はお気に召さなかったとみえて空気がぴりぴりと音を立てる。
「昼間、チビがどうしてもって言うもんだから」
「へええ、そう」
一応、昼間は座敷童になっているとわかってはいても記憶はないのだから、こういう反応は覚悟していたことだった。「・・・お手柔らかに」
苦笑する俺を彼女は十秒ほど見つめ、やがてきゅっと俺の首に腕を回した。
「お菓子も悪戯も、よ。覚悟しなさいね」
「はいはい」
とりあえず、夜の彼女は悪戯で手を打ってくれるらしい。
昼間の彼女には、明日、お菓子を用意しないとな、と頭の隅で考えながら、俺は狐の魔女を抱き締めた。
【稲荷神社の十月末日】
「うっわ、これ何?」
右の狐が眉をひそめる。人にはわからぬだろうが、そこここに人ではないものが混じっている。
「今日はハロウィンだろ?」
左の狐が社に入ってきた小者をつまんで追い出す。
「西洋化も際まれりだねえ」
「神様たちはまだ出雲だしな。緩んだ境から入り放題だ」
「うわあ。なんかムカつく」
右の狐はほうきを乱暴に振り回した。左の狐はそれを器用に避けてコウモリ型の一匹を捕まえる。
「文句言わずに掃除しろ」
「はいはい。ったく、土産奮発してもらわないとだね!」
ばたばたと二匹の狐は社を駆け回る。
神様のお帰りに間に合うように。
【日本のあやかしの心意気】
西洋の奴らにだけいい格好はさせられねえさ。
人に化ける技もだが、菓子の出来も奴らにゃ負けねえ。
狐は目を細めてにんまり笑う。
お菓子か悪戯かなんて生ぬるい。
当然お菓子で悪戯さ。
笑う饅頭たっぷり持って、狐の面を被った少年が尻尾ふりふり夜の町。
【悪戯先約済】
「ほら気を付けて。今日は境目が緩くなってるから」
言われてみれば、物陰にゆらりと何かの気配。
「声をかけられたら渡せるように、お菓子を持ってないとだめだよ」
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テーマなしの欠片を五つ。
1
わすれて、思い出して、もう一度わすれて。繰り返す螺旋。流されるままの記憶。今度目が覚めたとき、僕は君を覚えていられるだろうか。それが怖くて僕は決意する。覚えていられるうちに君を永遠にしよう。微笑む君を抱き締める。冷たい刃が人肌に温まり煙る。そして。
2
かぼちゃの馬車に乗りきれない。どこで聞き付けたのか、中は継母と姉たちでもういっぱい。馬車の前でため息をつくシンデレラに、ネズミの馬が目配せをした。「そうね」微笑んで、馬車からはずした馬にまたがる。ドレスを翻してシンデレラは城を目指した。
3
1
わすれて、思い出して、もう一度わすれて。繰り返す螺旋。流されるままの記憶。今度目が覚めたとき、僕は君を覚えていられるだろうか。それが怖くて僕は決意する。覚えていられるうちに君を永遠にしよう。微笑む君を抱き締める。冷たい刃が人肌に温まり煙る。そして。
2
かぼちゃの馬車に乗りきれない。どこで聞き付けたのか、中は継母と姉たちでもういっぱい。馬車の前でため息をつくシンデレラに、ネズミの馬が目配せをした。「そうね」微笑んで、馬車からはずした馬にまたがる。ドレスを翻してシンデレラは城を目指した。
3
たった一人でステップ踏んで月光浴びる十三夜
4
うさぎを作る。花うさぎ。雨うさぎ。ロボうさぎ。雲うさぎは空に飛んでいく。雪うさぎは冷蔵庫に飛び込んだ。月うさぎは満月に帰り、風うさぎはどこかへ旅立った。僕の手元に残ったのは、動かないぬいぐるみうさぎだけ。喋らぬ君を抱き締める。
5
月の綺麗な夜は、刀を抜かないことにしている。罪を照らし出されると怯えるわけではなく、ただ散る深紅が白い月には似合わぬと思うからにすぎない。しかし、己が斬られるのならば月夜がいいと思う。最期に見るものは、あれほどに美しいものがいい。その為にも、月夜は血で汚さぬ。
この前の鳥使いの話。
おかずがカラアゲだとコメントをいただきましたが、あのあと、私もカラアゲを食べてます。むしろ、鳥が無かったら生きられません(^^;;;)
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「あ、あかん!俺の相棒は料理したらあかんて!」
友人である料理人の視線に何を勘違いしたのか、鳥使いは相棒の瑠璃色の小鳥を両手で包み込んでふるふると首を振った。
「アホか。そんなちっこいの、食うとこあらへんわ」
「この前は唐揚げにしたるって言っとったやん」
「それはそいつが俺の髪の毛を抜いたからや!」
「仕方ないやん。ルリちゃんは巣ぅが作りたかっただけや」
「飼い主やろ!お前が作ったれや!」
「だってぇ」
鳥使いは上目遣いで料理人を見る。自分のぽわぽわで薄紅の髪と違い、彼の髪は黒くてまっすぐで艶やかだ。その髪は鳥使いの憧れだった。きゅっと白い紐でひとつに束ねるととても凛々しく見えるのだ。
「仕方ないやん。僕もその髪、欲しいもん」
「・・・なっ、なんやて?お前にまで抜かれたら、ハゲるわ!」
思わず頭を押さえた料理人に、鳥使いは吹き出してしまった。
「あははははっ」
「笑うな!」
「だって、なあ・・・あはははは!」
鳥使いの笑い声に誘われて、何羽もの鳥が降りてくる。
鳥たちに囲まれて笑い転げる鳥使いに、料理人は苦笑して鳥料理だけは作るのをやめようと思ったのだった。
診断メーカー【空想職業案内】( http://shindanmaker.com/267925 )を使用して。
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「アホか。そんなちっこいの、食うとこあらへんわ」
「この前は唐揚げにしたるって言っとったやん」
「それはそいつが俺の髪の毛を抜いたからや!」
「仕方ないやん。ルリちゃんは巣ぅが作りたかっただけや」
「飼い主やろ!お前が作ったれや!」
「だってぇ」
鳥使いは上目遣いで料理人を見る。自分のぽわぽわで薄紅の髪と違い、彼の髪は黒くてまっすぐで艶やかだ。その髪は鳥使いの憧れだった。きゅっと白い紐でひとつに束ねるととても凛々しく見えるのだ。
「仕方ないやん。僕もその髪、欲しいもん」
「・・・なっ、なんやて?お前にまで抜かれたら、ハゲるわ!」
思わず頭を押さえた料理人に、鳥使いは吹き出してしまった。
「あははははっ」
「笑うな!」
「だって、なあ・・・あはははは!」
鳥使いの笑い声に誘われて、何羽もの鳥が降りてくる。
鳥たちに囲まれて笑い転げる鳥使いに、料理人は苦笑して鳥料理だけは作るのをやめようと思ったのだった。
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【診断結果】
『鳥使い』です。髪は薄紅色。瞳は碧色。能天気な性格で、独楽を使用します。仲がいいのは『放浪料理人』、悪いのは『染め物屋』。追加要素は『和服』です。
『鳥使い』です。髪は薄紅色。瞳は碧色。能天気な性格で、独楽を使用します。仲がいいのは『放浪料理人』、悪いのは『染め物屋』。追加要素は『和服』です。
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テーマなしの欠片を三つ。
【嘘の理由】
嘘だよ。君にはなに一つほんとはあげないよ。優しくてまっすぐな君は、僕のどこかにほんとがあるって、探してくれてるんでしょう?こんな僕にもほんとがあるって信じているのでしょう?そうやってずっと僕を気にしてくれるなら、僕は嘘ばかり君にあげる。ずっと。ずうっとね。
【嘘はダメ】
「・・・嘘です。忘れて」君が慌ててごまかしたそれを僕は笑みでもう一度引き寄せる。「だーめ」ごまかされてなんかあげない。 忘れるなんてもったいない。それとも聞こえなかったふりをしてもう一度言わせてあげようか。やっと君から引き出した「好き」の小さな呟きを。
【夕暮れ】
君の心を握りしめていたはずの右手が空っぽだと気づいて空を見上げたけどなにも感じない夕暮れ。
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嘘だよ。君にはなに一つほんとはあげないよ。優しくてまっすぐな君は、僕のどこかにほんとがあるって、探してくれてるんでしょう?こんな僕にもほんとがあるって信じているのでしょう?そうやってずっと僕を気にしてくれるなら、僕は嘘ばかり君にあげる。ずっと。ずうっとね。
【嘘はダメ】
「・・・嘘です。忘れて」君が慌ててごまかしたそれを僕は笑みでもう一度引き寄せる。「だーめ」ごまかされてなんかあげない。 忘れるなんてもったいない。それとも聞こえなかったふりをしてもう一度言わせてあげようか。やっと君から引き出した「好き」の小さな呟きを。
【夕暮れ】
君の心を握りしめていたはずの右手が空っぽだと気づいて空を見上げたけどなにも感じない夕暮れ。
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1
露草小路に機織りの音が響く。
からからぱったん。からからぱったん。
人は機械で安く大量に布を作るけれど、あやかしによっては化学繊維が肌に合わない者もいるから、狛犬の阿騎(あき)は自然の糸を自然のもので染めたものを使って、手で布を織る。
ひとつひとつ丁寧に。
2
露草小路に機織りの音が響く。
からからぱったん。からからぱったん。
人は機械で安く大量に布を作るけれど、あやかしによっては化学繊維が肌に合わない者もいるから、狛犬の阿騎(あき)は自然の糸を自然のもので染めたものを使って、手で布を織る。
ひとつひとつ丁寧に。
2
しゃらん、と微かな音に気づいて、阿騎は機織りの手を止めた。
少し体の綿埃を払ってお茶を入れる。
ほどなく鈴彦姫のささねが現れた。
彼女は時々やって来ては阿騎の布を買ってくれる。
「こんにちは、阿騎さん。織り上がったのを見せてくださる?」
「ああ、でも、お茶の後でね」
3
「あら、珍しいわね、これ」
ささねがつまみ上げたのは羊の形の饅頭だった。
めえめえと可愛く鳴いている。
「夢の中で群れていたとかで、貘の旦那にもらったんだよ。どうやら誉めると喜ぶらしい。美味いよ」
ささねは笑みを浮かべて羊の形の饅頭を撫でた。
4
「可愛いわねえ。食べちゃいたいくらい」
そして本当にぱくりと一口。
「ほんと。おいしい」
「この辺では見たこと無いから、どっか夢を通じて流れてきたんだろうってさ。夢の中は距離があるようでないものだから」
阿騎は自分もぱくりと食べると、立ち上がった。
5
少し体の綿埃を払ってお茶を入れる。
ほどなく鈴彦姫のささねが現れた。
彼女は時々やって来ては阿騎の布を買ってくれる。
「こんにちは、阿騎さん。織り上がったのを見せてくださる?」
「ああ、でも、お茶の後でね」
3
「あら、珍しいわね、これ」
ささねがつまみ上げたのは羊の形の饅頭だった。
めえめえと可愛く鳴いている。
「夢の中で群れていたとかで、貘の旦那にもらったんだよ。どうやら誉めると喜ぶらしい。美味いよ」
ささねは笑みを浮かべて羊の形の饅頭を撫でた。
4
「可愛いわねえ。食べちゃいたいくらい」
そして本当にぱくりと一口。
「ほんと。おいしい」
「この辺では見たこと無いから、どっか夢を通じて流れてきたんだろうってさ。夢の中は距離があるようでないものだから」
阿騎は自分もぱくりと食べると、立ち上がった。
5
「持ってくるよ。待ってて」
織った布はとりあえずすべて彼女に見せることにしていた。
その中で彼女が気に入ったものだけを買い取ってもらう。
柄や質感で仕立てる服が変わるのだから、すべて買えと言うのは無理な話だが、もちろん他にもお得意様はいるので困ることはない。
6
ただ、彼女の作る服や着物が一番自分の布に合っている気がして、阿騎は彼女にまず選んでもらうことにしていた。
「どう?」
「そうね」
ささねが首をかしげると、しゃらんと音がする。
「これとこれ。あと、これ」
最後に選んだ布を少し広げてささねは笑った。
「これ、自分用ね?」
7
「ばれた?」
悪びれもせず笑って見せる。
それは、自分好みの柄と手触りで織った布だった。
彼女が気づけば自分の服を頼もうと織ったものだ。
悪戯に引っ掛かった顔をしてささねは苦笑した。
「わかったわ。仕立て賃は取るわよ?」
「よろしく」
代金を受け取り、布を包む。
8
「じゃあ、いつも通り送っておくよ」
「ええ。お茶とお饅頭、ごちそうさま」
ささねは軽く頭を下げて、手ぶらのまましゃらんと名残の音を残して帰っていった。
布は重いので、小鬼便で送るのだ。
「今日はよく笑ってたな」
満足げに阿騎は呟くと、小鬼を呼ぶべく呪符を手に取った。
診断メーカー【あやかし町へ、いらっしゃい】( http://shindanmaker.com/279875 )を使用して。
診断結果
狛犬(こまいぬ)で露草小路に住んでいる機織りです。扇子を大事にしています。鈴彦姫(すずひこひめ)とは仕事で付き合いがあるようです。
ここから広げて書いてみました。
ひつじまんじゅうは、友達の空想横丁の和菓子屋さん【雨竜堂】( http://togetter.com/li/391904 )で売り出していたもので、夢の中経由でちょっとお借りしました。
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織った布はとりあえずすべて彼女に見せることにしていた。
その中で彼女が気に入ったものだけを買い取ってもらう。
柄や質感で仕立てる服が変わるのだから、すべて買えと言うのは無理な話だが、もちろん他にもお得意様はいるので困ることはない。
6
ただ、彼女の作る服や着物が一番自分の布に合っている気がして、阿騎は彼女にまず選んでもらうことにしていた。
「どう?」
「そうね」
ささねが首をかしげると、しゃらんと音がする。
「これとこれ。あと、これ」
最後に選んだ布を少し広げてささねは笑った。
「これ、自分用ね?」
7
「ばれた?」
悪びれもせず笑って見せる。
それは、自分好みの柄と手触りで織った布だった。
彼女が気づけば自分の服を頼もうと織ったものだ。
悪戯に引っ掛かった顔をしてささねは苦笑した。
「わかったわ。仕立て賃は取るわよ?」
「よろしく」
代金を受け取り、布を包む。
8
「じゃあ、いつも通り送っておくよ」
「ええ。お茶とお饅頭、ごちそうさま」
ささねは軽く頭を下げて、手ぶらのまましゃらんと名残の音を残して帰っていった。
布は重いので、小鬼便で送るのだ。
「今日はよく笑ってたな」
満足げに阿騎は呟くと、小鬼を呼ぶべく呪符を手に取った。
診断メーカー【あやかし町へ、いらっしゃい】( http://shindanmaker.com/279875 )を使用して。
診断結果
狛犬(こまいぬ)で露草小路に住んでいる機織りです。扇子を大事にしています。鈴彦姫(すずひこひめ)とは仕事で付き合いがあるようです。
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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