宵月楼－しょうげつろう－

【129】

夕方、歩道橋の上で道路を眺めていると、手すりの上にこつんとコーラの缶が置かれた。
「アルコールじゃねえのかよ」
口を尖らせた俺に、あいつはニヤニヤ笑ってみせる。
「飲めないくせに」
「飲める！馬鹿にすんな」
「はいはい」
嘘をついても、虚勢を張っても、幼馴染にはお見通し。

お題：
「夕方の歩道橋」で登場人物が「嘘をつく」、「アルコール」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

【130】

背中からそっと腕がまわされる。
僕の気持ちごと包み込むように、優しく抱き締められる。
背中に押し付けられた頬から、じんわりと暖かい湿り気が伝わる。
泣きたくて泣けない僕のために、ほろほろと涙を流す君の優しさが、ゆっくりと僕に染みていく。
そばに居てくれてありがとう。

お題：
本日の身体部位は「背中」、行動は「包む」、泣きたくなる作品を創作しましょう。補助要素は「気持ち」です。 http://shindanmaker.com/73897

【131】

錆びたレールを伝って歩いていく。
綺麗に晴れた空にトンビが一羽、空の主のように悠々と円を描く。
その力強い姿に憧れる。
一人でも生きられる強さ。
何者にも影響されない強さ。
この旅でそれを手にいれることはできるだろうか。
肩に食い込むリュックをしょい直し、前を見据えた。

お題：
次のツイートで『過去、晴れ、レール、強い、由来』の５つのワードのうち３つ以上を使ったTwitterSSを書きます/// http://shindanmaker.com/107195


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]

【125】

庭の朝顔に毎朝水をやるのが彼女の仕事だ。
小さな手に大きなひしゃくを持って、丁寧に水をかけていく。
「終わったよ！」
「ご苦労さん」
元気に報告に来た彼女の髪を撫でると、それは嬉しそうに笑いやがる。
女の笑顔はこんな小さい時から罠を潜ませてんだな。
目が離せねえじゃねえか。

お題：
「朝の庭」で登場人物が「髪を撫でる」、「罠」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

【126】

手のひらに指を這わせると、くすくすと笑いが漏れた。
「我慢して」
「だって、くすぐったい」
こういうところはまだ子供だ。
印を描き終えて念をこめると、小さな体はぽんと音をたてて消えた。
「すごおい」
透明になった彼女の声だけがうきうきと弾む。
「さあ、どんな悪戯をしにいく？」

お題：
本日の身体部位は「手のひら」、行動は「這わす」、明るい作品を創作しましょう。補助要素は「感情」です。 http://shindanmaker.com/73897

【127】

夢を見る。
いや、見せられる。
モノクロの町には人がおらず、どこかでずっと少女の泣き声がする。
俺は走って、走って、お前を探す。
一番奥まった黒い影の中にいるお前を引き寄せて、「どこか痛いのか？」と聞くと、何も言わずにただしがみついてきた。
寂しいと、腕の力が語っていた。

お題：
次のツイートで『夢、野球、モノクロ、痛み、姉』の５つのワードのうち３つ以上を使ったTwitterSSを書きます/// http://shindanmaker.com/107195

朝顔は妖狐と少女。手のひらは猫又と少女。夢は犬神と少女でお送りしました（＾＾；）。

【128】

才能の欠如は如何ともしがたい。
才能がほしいなんて言っても埒があかないのは承知している。
都合のいい逃げ言葉だとも思う。
そもそも努力も足りてない。
でも自分でわかる。
釣り合うような文才がない。
手が届かない遥かな距離を肌で感じて目眩がする。
追いつけない。
でもその高みにいる君が誇らしい。

参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]

【119】

登校前に必ず寄る寂れた神社で手を合わせる僕を、君は不思議そうに見た。
「意外に信心深い方？」
「別に。場所を借りてるから挨拶をね」
データの入ったメモリと金を受けとる。
悪人に制裁を加える現代の仕事人のネットワーク。
君とはこんな風に出会いたくなかったと苦笑が浮かんだ。
 
お題：
「朝の神社」で登場人物が「出会う」、「ネットワーク」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

お題ありとはいえ、ちょっと凝り過ぎましたw

【120】

夏の朝はどこか急かされてる気がして、落ち着かない。
明るすぎるんだ。
それに
「暑い！」
早速扇風機を動かして、文句を言ってみる。
「昔はこんなに暑くなかったよねえ」
「お前の昔は二百年くらい前じゃねえか」
「だって猫又だし？」
あやかしにも、等しく温暖化は降りかかる。

【121】

声を出し、メロディをなぞるだけじゃ歌じゃない。
そこにある想いを紡ぐことが歌うことだと、その想いこそが僕を「ウタウタイ」足らしめていると、僕はやっと知ったんだ。
だから、もう一度、歌を紡ごう。
「音（キミ）」たちの力を借りて、もう一度心の扉を叩けるような歌を歌おう。
 
「リスタート」のイメージで、KAITOってみたり。

【122】

なくした宝物を惜しんで泣くなんて、君は欲張りな子供だ。
だってほら、君の引き出しにはそんなに宝物が溢れてるじゃないか。
大事なものは他にもそんなにあるのに、手に入らないものを欲しがる君はただの駄々っ子だ。
恥ずかしくないのかい？
鏡の向こうで嘲笑う、僕の声が消えない。

【123】

手を合わせる。
風もないのに髪がそよぐ。
素質がある者には、その体から淡い光が立ちのぼるのが見えるであろう。
まだ少年だが、その力はすでに選ばれているレッドの若者に匹敵するかもしれない。
「僕はお役にたてますか？」
少年のまっすぐな瞳に、私は頷いた。
「地球を守ってくれ」
 
診断メーカーで、「『オーラ』で戦うことになりました」とでたので、 オーラが武器っつったら、光戦隊マスクマンでしょ！ってことで、アキラ君がマスクマンに選ばれるシーンなどを捏造してみた♪
番組とは一切関係ない、遊びでございますw。

【124】

自分の都合で人を振り回していることを自覚しないと、すぐに周りが見えなくなって調子にのるじゃないか。
それで一度大事なものを失っているくせに、懲りてないのか。
もっと頭を使え。
もう間違えたくないだろう？

参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]

【117】

七夕の夜、屋上に幽霊が出る。
学校にはよくある噂だ。
だけど、その真実を知っているのは、鍵を開けずとも屋上に行ける者だけだ。
星降る夜、屋上に降り立った僕のそばにふわりと少女が現れる。
一年ぶり。
微笑みあって、小指を絡める。
寂しがり屋の君の為に僕らは来年の約束をする。

お題：
「夜の屋上」で登場人物が「約束する」、「噂」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

【118】

言葉の刃がどんな痛みをもたらすか知っているから、鞘の代わりに嘘で覆って。
つけられた傷がいつまでも痛むことを知っているから、包帯の代わりに嘘でふさいで。
傷をさらけ出す勇気が無い僕は、一人で耐える為に嘘を紡ぐ。
ちりばめた本当をそっと空に逃がす為に。

参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]

【114】

逢魔ヶ刻。
空気が黄昏に染まるビルの屋上で、手すりの外に立つ君と、手すりに腰かける僕は出会う。
「止めないの？」
「止めてほしいの？」
「じゃあ、なんでここに居るの」
僕は暗くなりゆく空を指す。
「見たい星座があるんだ」
「ホントに止めないんだ」
君は苦笑して飛ぶのをやめた。
 
お題：
「夕方の屋上」で登場人物が「出会う」、「星座」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

【115】

蛍。
蛍。
手を伸ばしても、指の間をすり抜けて。
淡い光に、束の間、君の面影を見る。
魂は蛍になると聞いたことがあるけれど、
こんな儚いものにならずに早く生まれ変わっておいでよ、と僕は少し文句を言ってみる。
捕まらない淡い思いはいらない。
もう一度捕まえたいのは君自身。

【116】

手を伸ばしたものは、手に入らなかった。
じゃあ、今まで手に入れているものは？
この手に握っていてもいいものか、不意に不安になる。
無理矢理捕まえているだけではないだろうか。
大事なそれを入れた硝子の鳥かごを壊したら、欠片以外に残るものはあるだろうか、と。

参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]