宵月楼－しょうげつろう－

【114】

逢魔ヶ刻。
空気が黄昏に染まるビルの屋上で、手すりの外に立つ君と、手すりに腰かける僕は出会う。
「止めないの？」
「止めてほしいの？」
「じゃあ、なんでここに居るの」
僕は暗くなりゆく空を指す。
「見たい星座があるんだ」
「ホントに止めないんだ」
君は苦笑して飛ぶのをやめた。
 
お題：
「夕方の屋上」で登場人物が「出会う」、「星座」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

【115】

蛍。
蛍。
手を伸ばしても、指の間をすり抜けて。
淡い光に、束の間、君の面影を見る。
魂は蛍になると聞いたことがあるけれど、
こんな儚いものにならずに早く生まれ変わっておいでよ、と僕は少し文句を言ってみる。
捕まらない淡い思いはいらない。
もう一度捕まえたいのは君自身。

【116】

手を伸ばしたものは、手に入らなかった。
じゃあ、今まで手に入れているものは？
この手に握っていてもいいものか、不意に不安になる。
無理矢理捕まえているだけではないだろうか。
大事なそれを入れた硝子の鳥かごを壊したら、欠片以外に残るものはあるだろうか、と。

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