宵月楼－しょうげつろう－

【612】
 
　煙管を加えた浪人が、ぷかりと白い煙を吐き出す。
　ちょい、と手を出すと、煙は音もなく散ってなくなってしまう。
　僕が不満げに見上げると、浪人は苦笑してもう一度ぷかりと煙を吐き出す。
　手を出す。
　触れない。
「んにゃあ」
　不機嫌に尻尾を振り回して鳴いてみせる。
　なんで触れないの？
「煙だから、触れねえよ。おめえと居ると、落ち着いて煙草も楽しめやしねえな」
　そんなん絶対言い訳だ。
　だってそこに見えてるじゃない。
　真っ白でふわふわして、匂いはちょっと煙いけど、きっと触ったら気持ちいい。
　おまじないでもして、僕が触れないようにした？
「・・・・・・にゃあ」
　もう一度試してやっぱり触れなかったから、僕はくるりと丸くなって背を向けた。
　別に、無理してまで触りたいわけじゃないよーだ。


お題：「まじない」、「煙管」、「浪人」で創作しましょう。  http://shindanmaker.com/138578
年末年始は忙しくて、更新はどうなることやら、です（＾＾；）。
本当はクリスマスみたいに掌編を仕込んでおきたかったんですが。
書けなくても、ご挨拶には参上しまするー。


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