宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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【608】
多分それは気まぐれだったんだと思う。
酔っぱらった君の目に、夕方から降り続いた雪がとてもきれいに映ったこととか。
月の光がたまたま雲の切れ間から降り注いだこととか。
泣くこともできずにお酒を飲んで、ちょっぴりヤケ気味だったりとか。
その原因とか。
色々重なった末の気まぐれだったんだ。
そんなに大きくないけど、君は二つの雪玉を作り、それを重ねて、木の枝で手を作り、葉っぱで目を作ってくれた。
そして僕は生まれたんだ。
君は少し気がすんだのか、微笑んで僕の頭をとんとんと叩くと部屋に入った。
少し涙がにじんだ笑顔に、僕はそっと夜空を見上げる。
もう雪はやんで、雲はどこかに飛んでいった。
月と星が、特別な夜のイルミネーションになる。
知ってる?
今夜は僕にも少しだけ魔法が使えるんだ。
だってクリスマスイブだもん。
大切な人に、贈り物をあげる夜でしょ?
僕を作ってくれた君に、僕は魔法をかける。
大切な人との別れを乗り越える力と、悲しみに沈む君におだやかな眠りを。
そうやって魔法を使っても、明日の朝には普通の雪だるまに戻る。
もしかしたらすぐに溶けちゃうかもしれない。
だから明日の朝の君を見ることはできないけど、でも、きっと僕の願いは叶うよ。
だって雪でできてる僕は冷たいはずなのに、君を思うとこんなにあったかい気持ちになる。
僕を作ってくれてありがとう。
だから、明日は笑ってね。
お題:Christmas
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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