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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【662】

 飴売りが街道沿いの茶店で行き合ったのは、少し旅にくたびれた風の若い男だった。
「旅は長いのですか?」
「そうだな。もう三年になるか」
 そう言って、男は飴売りの風体に少し目を細める。
「お子がおありで?」
「あ、ああ。旅立つときにはまだ三才であった。もう父のことなど覚えてはおらぬだろう」
 寂しげな笑みを浮かべる男に、飴売りは荷物から小さな包みを取り出した。
「それを持って一度戻られてはいかがです?」
 だが、男は首を横に振ると、その包みといくらかの銭、そして懐紙に二つの名前を書いて飴売りに渡した。
「妻と子の名だ。江戸へも行かれるなら、それがしの代わりに渡してはくれぬか。八丁堀の役宅で幾軒か尋ねても所在がわからねば、銭は取っておいてくれて構わぬ」
「八丁堀?旦那は同心でいらっしゃるんで」
「以前はな。今は役目も返上してのただの仇討ち旅だ。妻と子は離縁したゆえどこにいるかもわからぬ。気が向かねば捨て置いてくれ」
 寂しげな笑みのまま、男は江戸に背を向けて歩み去った。
 飴売りは優しく微笑むと、江戸へ歩き出した。


お題: 「街道」、「飴」、「同心」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578


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あやかしたちの節分 HOME 酒を

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非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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