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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【483】

 岡っ引きの十兵衛の上役は、南町同心の佐々木辰之信である。
 十兵衛の父親が死んだ時、まだ十四だった十兵衛に「昔なら初陣を飾ってもおかしくない年だ」と反対を押しのけ十手を預けたのは、自分もまだ二十二の若造であるゆえだろうか。
 同心仲間はこの若い二人を育てていく親のような目で微笑ましく見守っている節があり、叱咤されつつ二人は職務に励んでいる。
 この二人にはもう一つ共通点がある。
 それは、「見る」目を持っているということであった。
「おう、どうした十兵衛。ずいぶんと疲れてるじゃねえか」
 若いくせに役宅の縁側で日向ぼっこをしていた辰之信は、よれよれと庭に入ってきた十兵衛ににやりと笑いかけた。
「今日はどうした?おいてけ掘に無理難題を押し付けられたか。それとも化け猫でも出たか」
「冗談じゃねえよ」
 ぞんざいに言うと、座れと促された縁側へ腰を下ろして、十兵衛はため息をついた。
「雪女が一緒に商売をしていた小豆洗いともめてんだよ。小豆洗いの甘味屋の饅頭が全部雪まみれになっちまって、まだ秋なのに雪はおかしいから、店を閉めさせて仲裁だ。旦那が出張ってくれりゃ、あいつらもまだおとなしくなんだけど」
「その程度なら、おめえで十分さ。俺が出ると、ちょいと事が大きくなるからな」
 辰之信は十兵衛の頭をぽんぽんと叩いた。
「これでも信用してんだぜ?十兵衛親分よ」
「・・・旦那」
「ん?」
「にやにやしながら言っても説得力がねえよ」
「そうか?」
 嫌そうな顔をする十兵衛に、辰之信は菓子を勧めた。
 もらい物の上生菓子は菊を模している。
 もう十兵衛が十手を握ってから、一年がたとうとしていた。

お題:「雪」、「饅頭」、「同心」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
時々書きたくなる少年十手持ちの十兵衛親分。
今回は上司を出してみました。
同じように若くして親の職を受け継ぎ(本来同心は一代限りらしいですが、うまいこと世襲していたようですね。勉強不足なので間違っていたらすみません)、同じようにあやかしを見る目を持つ二人です。
江戸で人にまぎれて暮らしているあやかしたちと人との接点として、人側で頑張ってもらおうと思ってます。


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渡河 HOME おまもり

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オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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