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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【484】

「渡しはここだろうか?宿場で十手持ちの五平親分に聞いて来たのだが」
「五平が教えるたあ珍しい」
 無愛想な親父は客である俺も見ぬまま、煙管をふかしてぼそりとそう言った。
 川幅は広く、向こう岸は霧にかすんで見えない。
 だが、繋いである船は小さく、馬が乗る余裕はないように見える。
「馬は無理だろうか」
 不動は俺の愛馬で、兄弟も同然だった。手放すなど想像もできない。
「馬を渡したいなら、一緒に泳ぐしかねえな」
「そうか」
 親父の返事は予想通りだった。
 ならば仕方あるまい。
 俺は意を決すると着物を脱いでまとめた。
「では、泳ぐとしよう。不動、俺を信じてついて来てくれるか?」
 栗毛の不動は当たり前だと言うようにいななくと、俺を引きずる勢いで川へ歩みだした。
 気が早いやつだ。
「迷わず泳ぐか。おう、坊主」
 親父の声が俺たちを追いかけて響いた。
「河童とかわうそに気をつけな。惑わされると淵に飲まれるぜ」
 あやかし相手じゃ、気をつけようもあるまい。こちらは馬連れの丸腰だというのに。
 俺は思わず苦笑する。
 そして、返事代わりに右手を上げて見せると、川へ入った。
 何が待っていようと、俺たちは進まねばならないのだ。
 
お題:「渡し舟」、「十手」、「馬」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
十手の使いどころに苦心。


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味噌汁 HOME 菊の頃

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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