宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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【480】
「散歩に行くぞ」
言葉少なに犬神に言われて、根付の兎はぽぽんと人の子供の姿に変化した。
まだあやかしとして未熟なので昼は変化できないが、夜は人の姿で一緒に歩いてゆけるから、兎は夜の散歩が好きなのだ。
にこにこと笑い、はしゃいで、犬神の前をぱたぱたと走る。
だが、ふとその足がぴたりと止まった。
行き当たった川の岸辺一面に、真っ赤な彼岸花が咲いていた。
「・・・あかい」
河岸を染めて月の光の下で揺れる彼岸花は、別の場所においでおいでと誘う手のひらのようで、兎はふるりと耳を震わせると犬神の腕にしがみついた。
「どうした?」
「こわい」
震える兎の頭を、犬神は優しく撫ぜた。
「大丈夫だ」
その温かな手と声に体の力が抜ける。
そして安心した途端、お腹がぐうと鳴った。
「何か食うか。一膳飯屋なら、まだ開いている店があったはずだ」
「くう!」
一気に元気になって目を輝かせた兎に、犬神は苦笑した。
「行くか」
「うん」
懐かしい誰かが呼んでいる声が聞こえた気がしたが、兎は犬神の手をしっかりと握ったまま、河原に背を向けた。
後には、ただ、静かにおいでおいでと誰かを誘う一面の彼岸花。
お題:「一膳飯屋」、「根付」、「彼岸花」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
そろそろ今年の彼岸花も終わりですね。
個人的には「天蓋花」という呼び名が好きです。
蓮の花と同じで、どこか神々しさを感じるのです。
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「散歩に行くぞ」
言葉少なに犬神に言われて、根付の兎はぽぽんと人の子供の姿に変化した。
まだあやかしとして未熟なので昼は変化できないが、夜は人の姿で一緒に歩いてゆけるから、兎は夜の散歩が好きなのだ。
にこにこと笑い、はしゃいで、犬神の前をぱたぱたと走る。
だが、ふとその足がぴたりと止まった。
行き当たった川の岸辺一面に、真っ赤な彼岸花が咲いていた。
「・・・あかい」
河岸を染めて月の光の下で揺れる彼岸花は、別の場所においでおいでと誘う手のひらのようで、兎はふるりと耳を震わせると犬神の腕にしがみついた。
「どうした?」
「こわい」
震える兎の頭を、犬神は優しく撫ぜた。
「大丈夫だ」
その温かな手と声に体の力が抜ける。
そして安心した途端、お腹がぐうと鳴った。
「何か食うか。一膳飯屋なら、まだ開いている店があったはずだ」
「くう!」
一気に元気になって目を輝かせた兎に、犬神は苦笑した。
「行くか」
「うん」
懐かしい誰かが呼んでいる声が聞こえた気がしたが、兎は犬神の手をしっかりと握ったまま、河原に背を向けた。
後には、ただ、静かにおいでおいでと誰かを誘う一面の彼岸花。
お題:「一膳飯屋」、「根付」、「彼岸花」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
そろそろ今年の彼岸花も終わりですね。
個人的には「天蓋花」という呼び名が好きです。
蓮の花と同じで、どこか神々しさを感じるのです。
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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