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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【625】

 こつん。
 煙管を盆に置くと、琥珀は狐のように切れ長の瞳をさらに細めた。
 経師屋は少しばつの悪そうな顔をして、琥珀の表情をうかがう。
 この男は、狐のあやかしなのだ。
 穏やかでいい加減に見えて、その実、本気になればただの人である自分くらい煮るなり焼くなり簡単にできると知っていた。
 もちろん、古い友であるから、早々ひどいことをするわけではないとわかってはいる。
 しかし、友だからこそ言いたいことは言う男である。
 とりあえず、説教を回避すべく、思案をめぐらす必要があった。
「あー・・・のな、琥珀。俺も別に自分から厄介事を拾って回ってるわけじゃないんだぜ?」
 そう口にした経師屋は、ちろり、とこちらを見た琥珀のまなざしに背筋を凍らせる。
 まずい。怒っている。確実に。
「なんつうか、こう、厄介事が向こうから来るっつうか、逃げるわけにはいかねえ仁義がついて回るっつうか・・・それにな、挑まれると引っ込みがつかねえじゃねえか、男として」
「・・・あのな、経師屋」
 琥珀が深い深いため息をついた。
「半分は、てめえのその性格が原因だ!この短気野郎!」
 琥珀の大声に、空気がびりびりと震えた。
 確かに怒ると恐ろしい。
 だが、面倒見がいいこのあやかしは、頼りがいのある兄貴の様なものなのだ。
 遠慮なく叱り、そして手を貸してくれる。
 それに、遠慮などして頼らず無茶をすれば、後で倍の小言が降ってくるのも経験済みだった。
 となれば、こういう時にとる行動はひとつしかない。
 経師屋は首をすくめてやり過ごすと、ぱん、と両手を合わせた。
「ほんと悪いと思ってんだ。だから、なあ、助けてくれよ」
 上目遣いに琥珀を見ると、しばし、その鋭い瞳と視線が交差する。
 やがて、折れたのは琥珀の方だった。
「これっきりだぞ。俺だって、いろいろしがらみがあって動きづらい時もあるんだよ」
「恩に着る!」
 ほっとして笑った経師屋を見て、琥珀は仕方ねえなあと言うようにため息混じりに苦笑した。


 お題:「仁義」、「煙管」、「経師屋」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578

たびたび登場の経師屋(名前はまだないwww)話。
経師屋は、今でいう表具屋さんですね。襖、障子の張替えや、絵を描いたり、掛け軸の表装をしたり。
うちの経師屋は人間ですが、巻物の中に絵で書けるものを封じておくことができる能力を持っていて、そのせいで厄介事をいろいろ引き寄せている困ったやつです。
あやかしが絡むと、琥珀に泣きつく(半分は琥珀が見ていられなくて手を出す)ので、もう少し慎重に動けといつも説教されています(^^;)。
しかし、我ながらひどい題名だ・・・。

いつもご訪問、拍手ありがとうございます。
琥珀と瑠璃丸にごひいきさんがつくというこの状況(^^)。
しかし、うちで一番おしゃべりで出たがりなのは翡翠www
というわけで、今回は琥珀を出してみました。
瑠璃丸もぼちぼち書いていきます。
今、瑠璃丸のちょっと長めの話をあっためているのですが、悲恋話でもよございますか?


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非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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