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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【626】

 瑠璃丸は目を閉じて静かに立っていた。
 神経を研ぎ澄ます。
 目をふさいでいる分、耳がかすかな音も逃さず捉えようとする。
 肌が、ほんのわずかな空気の動きも感じられるよう、ぴりぴりと緊張していく。
 立っているこの場所から、感覚が次第に広がっていくのがわかる。
 やがて、そよ風がかろうじて留まっていた一枚の木の葉を揺らして落とした。
「はっ!」
 その一瞬を逃さず、左手に握った木刀が流れるような動きで木の葉を両断する。
 それがはらりと地面に落ちるのを感じて、瑠璃丸はゆっくりと目を開けて息を吐いた。
 犬神のこの身は、簡単に人を傷つける。
 その気がなくとも爪や牙がすべてを切り裂く刃となって相手を襲う。
 それを封じるためにと師に与えられた木刀は、確かに自分の重石となっていた。
 手にし、構え、ふるう。
 その手順の一つ一つが本当に刃をふるう必要があるのかと自分に問いかけてくれるから、獣の本性に支配されることなく、自分は人を殺めないでいられる。
「俺は、未熟だから・・・」
 まだこれは手放せない。
 木刀を持った左手に、力がこもった。


お題: 「そよ風」、「木刀」、「犬」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578


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オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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