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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【494】

 古い一軒家の縁側に、青年と少女が座り込んでいた。
「あったかいお茶がおいしいねえ」
 猫舌だから正確にはぬるいお茶を一口飲んで、猫又の翡翠はにっこりと笑う。
「そうだねえ」
 縁側で行儀悪く足をぶらつかせて、凛音は答える。
 律儀に返事をしたはいいものの、少女の口の中には団子が残っていて「ほうはへえ」としか聞こえず、翡翠の笑顔が苦笑に変わった。
 縁側から眺める庭に咲く花は朝顔から菊に変わり、じりじりと焦げ付くようだった陽射しは日向ぼっこに調度いい温かさで二人を包む。
 湯飲みから手のひらに伝わる温もりの優しさが嬉しい季節。
「でも、この時間になるともう肌寒いか」
 黄昏時に差し掛かると、風は一気に温度を下げる。
 返事の代わりに、凛音がくしゅんとくしゃみをした。
「さ、部屋に入ろう?風邪ひいたら遊びに連れてってやんないよ」
「はーい」
 湯飲みと皿を持ち、立ち上がる。凛音が背の高い翡翠を見上げた。
「翡翠、明日も日向ぼっこできるかな?」
「大丈夫じゃないかな。ほら、明日も晴れそうだよ」
 翡翠が指差した西の空は、真っ赤に染まっている。
「明日も日向ぼっこしようね」
「お団子はもうないよ」
「凛音を食いしん坊みたいに言わないで!」
「あれ?違った?」
「翡翠の意地悪!」
「ごめんごめん」
 翡翠が凛音の頭を撫でてなだめる。
「明日もきっといい天気だよ。栗を拾いに行こうか」
「うん!」
 凛音の笑顔が暖かい太陽をそのまま体に閉じ込めたようで、翡翠はまぶしそうに目を細めた。
 本当は、明日が晴れていても雨でも構わない。
 この笑顔があれば、雨の日でもいい日になるのだ。


お題: 「黄昏」、「湯呑み」、「菊」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
温かいお茶が美味しい季節になってきました。
ついでに栗のお菓子も美味しい季節です。
栗きんとん、モンブラン~♪


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宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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