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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【498】

 秋風が次第に冷たくなっていく。
 気付けばもう紅葉が始まり、次第に年の瀬に向けてせわしない気分にさせられる、そんな時節になっている。
 岡っ引きの十兵衛は、ふと橋の欄干に手をついてぼんやりと川の水面を見つめている娘を見かけて眉をひそめた。
 この時期、やがて来る冬の寒さと年末の掛取りに背を押されて、身投げしたり夜逃げする輩が増える。
 特に橋のあたりは要注意なのだ。
「あんた、この辺じゃ見ない顔だな」
「・・・え?」
 娘はいきなり声をかけられて、驚いたように顔を上げた。
 その拍子に、ほろりと頬を真珠のような涙が零れ落ちる。
「なっ・・・あ、その、俺はこの辺りを任されてる岡っ引きの十兵衛だ。なにか困りごとなら相談に乗るぜ」
 慌ててそう言う十兵衛に、娘は涙を払って向き直った。
「ああ、存じています。【見る】目をお持ちとか。だから私が見えるのですね」
「あんた・・・あやかしか」
「雪女の六花と申します。尋ね人が見つからず、途方にくれてお見苦しいところをお見せしました」
「話だけでも聞かせてくれねえか?何か力になれるかも知れねえ」
 十兵衛の言葉に、六花は驚いて目を見開いた。
「人間が、ですか?」
「さっきわかったろう?俺はな、人間もあやかしも区別できねえ不器用な性質(たち)なんだよ」
 にやりと笑う十兵衛に、六花はやっとふんわり微笑みを浮かべた。
 まだ十四の十兵衛に誰かを重ねたのか、愛しむような、しかし少し寂しそうな笑みだった。
「ありがとうございます。お頼みもうします」
 深々と頭を下げた六花の揺れた髪の先から、まだ早い雪の欠片がひらひらと散った。

お題:「雪」、「真珠」、「岡っ引き」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
雪女が探しているのは、誰なんでしょう。
今まで出した雪女より、おしとやかな子を出してみました。
以前出したものといったら、小豆洗いと商売をしてみたり、かと思ったら気が合わなくてケンカしてみたり、なんとなくおきゃんな子になってしまっていたので(^^;)。

以前の十兵衛親分
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菊の頃


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雨が降る? HOME 秋の音

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宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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