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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【501】

 門と塀は結界を担う。
 例えば、あやかしであれば力弱いものは招き入れられなければ敷地へは入れないし、特にこのような寺社の場合はその清い空気自体が結界となってあやかしを阻む。
 まして、祓い人が所属するとなれば、結界を強固にはってあるのが常だ。
 瑠璃丸は、門を守る僧を倒すことで結界を裂いて中に侵入していた。
 身を隠し、気配を探る。
 頼まれたものは奥の部屋にひっそりと置かれていた。
「無事か」
 部屋に忍び入り、貼られた札を剥がし、声をかける。
「あ・・・?ああっ!犬神の旦那!」
 それは古びた硯だった。
 それに手が生え、足が生え、ぱちりと目が開くと、その目がうるうると涙で潤んだ。
「あっしはもう駄目かと思いましたよ。あいつら、気味悪がってぞんざいに扱いやがるし」
 付喪神は本性が傷つけばその存在を保てない。硯は付喪神になるだけあっていい素材で出来ている為、簡単には欠けなかったのだろうが、十分に肝を冷やしたはずだった。
「お前が持ち主に向かって呪ってやると口走るからこのようなことになるのだ。少しは懲りただろう?」
「・・・そりゃあ、もう」
 少し矜持の高い硯が身を小さくしているのを見て、瑠璃丸は苦笑した。
「では、少しの間おとなしくしていろ。ここを抜け出なければならん」
「わかりました」
 手足が引っ込んだ硯を懐に押し込んで、瑠璃丸はそっとふすまを開け、敷地を横切って塀を飛び越えた。
 飛び越える時、やっと目を覚ましたらしい門に居た僧が、硯がないのに気づいてわめいている声がかすかに聞こえてきた。
 この寺があやかし封じを生業とするなら、また対峙することになるだろう。
 これもまた縁なのだろうと、瑠璃丸はかすかに微笑んで、その場を後にした。

お題:「寺」、「硯」、「呪う」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
また「寺」と言うお題だったので、昨日の続きを。
人は殺しませんが、瑠璃丸はどこか人間の武芸者のように、強い者や卓越した技量に惹かれるようです。


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自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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