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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【490】

「日本刀か」
 俺の持つ長い包みを一瞥し、彼はふわりと笑って見せた。
「気品があって、鋭くて、飾り気がない。君に似合いの武器だね」
 緊張感などない口調でそう言う彼の背後で、カナカナとヒグラシの遠い声がする。
 今度の夏祭りに縁日でも行こうか、とか、花火大会があるらしいよ、と言っているようなのどかさだ。
 だが、気を緩めてはいけないことを俺は知っている。
 今、この街に居るのは、互いを殺しあうことを定められた者だけなのだ。
「言いたいことはそれだけか?」
 包みを解き、鞘から刀を抜き放つ俺を見て、彼の瞳が少しだけ寂しげに細められた。
 もう、子犬のようにじゃれていた幼い頃は帰ってこない。
「そうだね、始めようか」
 彼は頭につけていた狐の面で表情を隠し、懐から札を取り出した。
 互いの殺気がぶつかる。
「覚悟」
 さっきとはまるで違う温かみを失った声が、面の奥から響いた。
 感情をそぎ落としたはずのその声は、何故か泣いている様に聞こえた。
 

お題:「縁日」、「日本刀」、「泣く」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578


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オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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