宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
[69] [70] [71] [72] [73] [74] [75] [76] [77] [78] [79]
【522】
囲炉裏に鍋がかかっている。
葱に大根、白菜、きのこ、それに鶏肉の団子が美味しそうに煮えている。
「そろそろいいかな」
ふつふつと湯気を上げる汁をじっと見ている翡翠の目のまえで、不意に薄茶色の物体がざらざらと放り込まれた。
「え?あ・・・ちょっと!」
顔を上げると、琥珀が嬉しそうににやにやと笑っている。
嫌な予感に鍋に目を戻せば、そこには汁の表面を覆ってしまうほどの油揚げが放り込まれていた。
「琥珀!何するんだよ!」
「いいじゃねえか。稲荷の社からお下がりをもらったんだ。うまいぞ。なにしろ神社に奉納する代物だからな」
「そうじゃなくて!せっかくそろそろできあがりだったのに、あげを煮る分だけ他のものを余計に煮なきゃいけないでしょ!」
ぎりっと奥歯をかみ締めた翡翠は、持っていた菜ばしを置くと、右手を突き出した。
指先にゆらりと蛍のような火が点る。
それは次第に大きくなり、拳ほどの大きさにまで膨れ上がった。
「おい、翡翠?」
琥珀がやばい、と言う顔をして、じりじりと後ろに下がる。
翡翠は耳が伸びて黒い毛に覆われ、緑の瞳は縦に虹彩が割れ、放つ殺気で髪がゆらゆらと踊っていた。
普段はめったに表に出ない二股の尻尾すら、ゆらりと姿を見せる。
すっかり、理性を吹っ飛ばしている・・・。
「悪かった!翡翠、落ち着け!」
琥珀は叫んで家を飛び出した。
「問答無用ーっ!」
その背後から、光の玉が情け容赦なく琥珀を追う。
「ったく!たかが晩飯だろうが、よっ!」
琥珀は家から少し離れた場所で振り返ると、手のひらに気を集め、勢いよく飛んできた光の玉を受け流すように空へ跳ね飛ばした。
玉は空を上り、やがて見えなくなる。
「・・・いいじゃねえかよ。あげぐらい」
呟いた琥珀に少し肌寒い風が吹き付けた。琥珀は髪をかき上げると、深々とため息をついた。
「やべえなあ。晩飯、ありつけるかなあ・・・」
虫たちが、そんな琥珀を笑うようにころころと楽しげに鳴いていた。
お題:「稲荷」、「鍋」、「蛍」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
あー、なんでこうなった・・・wwww
妖狐の琥珀、猫又の翡翠、犬神の瑠璃丸、龍と人の子の凛音は、一緒に暮らしています。
料理は翡翠の役割なのですが、手先が器用な分、神経も少し細かいようです(^^;)。
たぶん、琥珀は晩御飯食べられます。
怒ってはいても、翡翠が「あげは責任もって食べてよ!」と言うに決まっていますからね。
いつも、拍手ありがとうございます。
だいぶ登場人物が錯綜してややこしいことになっているので一覧を作ろうと思うのですが、時間がないのでとりあえず、ツイッターのボット用に作った記事をリンクしておきます。
下の方に、簡単なうちの子達の説明が書いてありますので、参考になれば。
ここも含めて、いずれキャラクター一覧を別で作りますので、それまでの暫定と言うことでご容赦ください。
こちら→http://kikyoudou.tsuyushiba.com/Entry/196/
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囲炉裏に鍋がかかっている。
葱に大根、白菜、きのこ、それに鶏肉の団子が美味しそうに煮えている。
「そろそろいいかな」
ふつふつと湯気を上げる汁をじっと見ている翡翠の目のまえで、不意に薄茶色の物体がざらざらと放り込まれた。
「え?あ・・・ちょっと!」
顔を上げると、琥珀が嬉しそうににやにやと笑っている。
嫌な予感に鍋に目を戻せば、そこには汁の表面を覆ってしまうほどの油揚げが放り込まれていた。
「琥珀!何するんだよ!」
「いいじゃねえか。稲荷の社からお下がりをもらったんだ。うまいぞ。なにしろ神社に奉納する代物だからな」
「そうじゃなくて!せっかくそろそろできあがりだったのに、あげを煮る分だけ他のものを余計に煮なきゃいけないでしょ!」
ぎりっと奥歯をかみ締めた翡翠は、持っていた菜ばしを置くと、右手を突き出した。
指先にゆらりと蛍のような火が点る。
それは次第に大きくなり、拳ほどの大きさにまで膨れ上がった。
「おい、翡翠?」
琥珀がやばい、と言う顔をして、じりじりと後ろに下がる。
翡翠は耳が伸びて黒い毛に覆われ、緑の瞳は縦に虹彩が割れ、放つ殺気で髪がゆらゆらと踊っていた。
普段はめったに表に出ない二股の尻尾すら、ゆらりと姿を見せる。
すっかり、理性を吹っ飛ばしている・・・。
「悪かった!翡翠、落ち着け!」
琥珀は叫んで家を飛び出した。
「問答無用ーっ!」
その背後から、光の玉が情け容赦なく琥珀を追う。
「ったく!たかが晩飯だろうが、よっ!」
琥珀は家から少し離れた場所で振り返ると、手のひらに気を集め、勢いよく飛んできた光の玉を受け流すように空へ跳ね飛ばした。
玉は空を上り、やがて見えなくなる。
「・・・いいじゃねえかよ。あげぐらい」
呟いた琥珀に少し肌寒い風が吹き付けた。琥珀は髪をかき上げると、深々とため息をついた。
「やべえなあ。晩飯、ありつけるかなあ・・・」
虫たちが、そんな琥珀を笑うようにころころと楽しげに鳴いていた。
お題:「稲荷」、「鍋」、「蛍」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
あー、なんでこうなった・・・wwww
妖狐の琥珀、猫又の翡翠、犬神の瑠璃丸、龍と人の子の凛音は、一緒に暮らしています。
料理は翡翠の役割なのですが、手先が器用な分、神経も少し細かいようです(^^;)。
たぶん、琥珀は晩御飯食べられます。
怒ってはいても、翡翠が「あげは責任もって食べてよ!」と言うに決まっていますからね。
いつも、拍手ありがとうございます。
だいぶ登場人物が錯綜してややこしいことになっているので一覧を作ろうと思うのですが、時間がないのでとりあえず、ツイッターのボット用に作った記事をリンクしておきます。
下の方に、簡単なうちの子達の説明が書いてありますので、参考になれば。
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【521】
寂れた屋敷は、それだけで、なにか潜んでいそうに怪しい雰囲気を漂わせている。
十兵衛は十手を握って、足音を忍ばせ、門をくぐった。
近頃、人の居ないはずのこの屋敷でなにやら物音がすると、近くに住民が不安がって相談に来たのだ。
本来武家屋敷など縁はないが、怪異であれば大変と無理矢理押し付けられたのだった。
「俺だって、好きであやかしの相手をしてるんじゃねえんだけどな」
不満を漏らす声も自然と低くなる。
晴れているというのに、なにやら翳っているような気までしてくる。
そういえば、空気も少しひんやりとしているのではないだろうか。
そう思ったとき。
がさっ!
「うわああああ」
物音に思わず十手を構えた十兵衛の目に映ったのは、飛び去っていく数羽の雀だった。
途端に力が抜ける。
「・・・ははっ・・・」
構えすぎていた自分が馬鹿のように見えて、十兵衛はがっくりと肩を落とした。
「情けねえ」
そう言うと、その場にどっかりと座り込んだ。そして大声を張り上げる。
「畜生。出るならてめえから出やがれ。いくらでも相手してやらあ」
「じゃあ、お言葉に甘えようかね」
背後からかけられた声に振り返ると、にっこり笑って男が立っていた。
体は半分透き通って、背後の松が見えていた。
「屋敷」、「十手」、「雀」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
十兵衛はあやかしを見る目を持った人間で、十四歳で十手持ち(同心の下で働く町人。おまわりさんのような存在)です。
十四ではありますが、人間とあやかしの間を取り持って、なかなかに頑張ってるようです。
以前の十兵衛親分
Twitter Novel 8/19 【295】
Twitter Novel 8/24 【325】
菊の頃
先駆けの雪
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寂れた屋敷は、それだけで、なにか潜んでいそうに怪しい雰囲気を漂わせている。
十兵衛は十手を握って、足音を忍ばせ、門をくぐった。
近頃、人の居ないはずのこの屋敷でなにやら物音がすると、近くに住民が不安がって相談に来たのだ。
本来武家屋敷など縁はないが、怪異であれば大変と無理矢理押し付けられたのだった。
「俺だって、好きであやかしの相手をしてるんじゃねえんだけどな」
不満を漏らす声も自然と低くなる。
晴れているというのに、なにやら翳っているような気までしてくる。
そういえば、空気も少しひんやりとしているのではないだろうか。
そう思ったとき。
がさっ!
「うわああああ」
物音に思わず十手を構えた十兵衛の目に映ったのは、飛び去っていく数羽の雀だった。
途端に力が抜ける。
「・・・ははっ・・・」
構えすぎていた自分が馬鹿のように見えて、十兵衛はがっくりと肩を落とした。
「情けねえ」
そう言うと、その場にどっかりと座り込んだ。そして大声を張り上げる。
「畜生。出るならてめえから出やがれ。いくらでも相手してやらあ」
「じゃあ、お言葉に甘えようかね」
背後からかけられた声に振り返ると、にっこり笑って男が立っていた。
体は半分透き通って、背後の松が見えていた。
「屋敷」、「十手」、「雀」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
十兵衛はあやかしを見る目を持った人間で、十四歳で十手持ち(同心の下で働く町人。おまわりさんのような存在)です。
十四ではありますが、人間とあやかしの間を取り持って、なかなかに頑張ってるようです。
以前の十兵衛親分
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菊の頃
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【519】
「ポッキーの日かあ。昔に比べてお菓子の種類が多いから、この時代は好きだな」
江戸生まれの馬鹿猫は、色とりどりの菓子の箱に囲まれてほくほくしている。
確かに江戸の昔に比べれば、種類も味も比べ物にならず、試してみたいと興味を引かれる気持ちはわからんでもない。
だが、いくらなんでもこの数は。
「買いすぎだろう」
苦言を呈すると、奴はその細い菓子をくわえて振り返り、にやりと笑った。
「心配しなくていいよ。全部もらいもんなんだ。僕、もてるから」
「何がもてるから、だ!毒でも入れられてしまえ!」
【520】
「落としたよ」
君のかばんからことりと落ちた箱を拾う。
それはポッキーのイチゴ味で、おいしそうだねって言おうとして見上げると、君は真っ赤になっていた。
「別に!これは目についたから買っただけで、あんたが好きな味だとか今日だからとか関係なくて」
慌てふためく君を可愛いなあと思いながら、ああ、そうかと僕は納得する。
今日、11月11日だもんね。
女子の間で話題になってたもんね。
「どうせだから、やっとく?ポッキーゲーム」
箱から一本出してくわえて見せたら、照れすぎてキレた君の平手打ちが飛んできた。
お題:ポッキーの日!(正確には、ポッキー&プリッツの日)
とりあえず、のっとかないとねーw
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「ポッキーの日かあ。昔に比べてお菓子の種類が多いから、この時代は好きだな」
江戸生まれの馬鹿猫は、色とりどりの菓子の箱に囲まれてほくほくしている。
確かに江戸の昔に比べれば、種類も味も比べ物にならず、試してみたいと興味を引かれる気持ちはわからんでもない。
だが、いくらなんでもこの数は。
「買いすぎだろう」
苦言を呈すると、奴はその細い菓子をくわえて振り返り、にやりと笑った。
「心配しなくていいよ。全部もらいもんなんだ。僕、もてるから」
「何がもてるから、だ!毒でも入れられてしまえ!」
【520】
「落としたよ」
君のかばんからことりと落ちた箱を拾う。
それはポッキーのイチゴ味で、おいしそうだねって言おうとして見上げると、君は真っ赤になっていた。
「別に!これは目についたから買っただけで、あんたが好きな味だとか今日だからとか関係なくて」
慌てふためく君を可愛いなあと思いながら、ああ、そうかと僕は納得する。
今日、11月11日だもんね。
女子の間で話題になってたもんね。
「どうせだから、やっとく?ポッキーゲーム」
箱から一本出してくわえて見せたら、照れすぎてキレた君の平手打ちが飛んできた。
お題:ポッキーの日!(正確には、ポッキー&プリッツの日)
とりあえず、のっとかないとねーw
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【518】
ぽんぽんと、手毬(てまり)が跳ねる。
地面と手を行ったり来たり。
でも、急に吹き付ける北風にちょっと目を閉じたら、毬はあさっての方向に飛んでいってしまった。
「あーあ」
慌てて追いかけて、凛音は毬を捕まえる。
ふと見上げれば、青々としていた草は茶色く枯れ、木の葉は落ち、風景は寒々しい。
「もうすぐ雪が降るかもしれねえな」
妖狐の琥珀は空を見上げた。
「えーっ!雪嫌いだよ。ずっと家の中に居なくちゃいけないし」
幼く、外で遊ぶのが好きな凛音にとって、雪や雨は家の中に縛り付けられる呪いのようなものだと思っている。
口を尖らせる凛音の頭を、琥珀はなだめるように優しく叩いた。
「考えてみろよ。いいか、冬の次には何が来る?」
「・・・春?」
「そうだ。春には花が咲くな?」
「うん」
「花を咲かせるには力を溜めなくちゃならねえ。ゆっくり寝て、温かくなったら一気に花を咲かせるんだ。冬、雪はその布団みたいなもんだ。ゆっくり寝るためのな」
「花の、お布団?」
凛音は首を傾げて、自分の布団を思い浮かべた。
確かに、包まるとあったかくてよく眠れる。
よく寝れば、次の日は元気一杯で遊べる。
そういうことなのだ。
「琥珀、わかったよ」
「ん?」
「外で遊べなくても、凛音我慢する!きれいなお花好きだもん」
「偉いな」
琥珀は凛音を抱き上げると、肩車をした。
「さ、帰るぞ。腹が減った」
「うん、腹へった!」
黄昏時を家路につく。
凛音は琥珀の頭をきゅっと抱きしめると、その耳元にこっそりささやいた。
「起きる時間になったらお布団を無理矢理取られちゃうのも、一緒だね」
そういえば、今朝は少し寒くて、布団から出たくないと駄々をこねた凛音は、瑠璃丸に布団を剥がされて床に転がされたのだ。
「違ぇねえ」
二人の笑い声が、夕暮れに温かく響いた。
「雪」、「手毬」、「呪う」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
もう、朝、布団から出たくない季節ですね(^^;)。
凛音は龍と人間の子供、琥珀は妖狐です。
一度一覧を作らなきゃいけないかな。
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ぽんぽんと、手毬(てまり)が跳ねる。
地面と手を行ったり来たり。
でも、急に吹き付ける北風にちょっと目を閉じたら、毬はあさっての方向に飛んでいってしまった。
「あーあ」
慌てて追いかけて、凛音は毬を捕まえる。
ふと見上げれば、青々としていた草は茶色く枯れ、木の葉は落ち、風景は寒々しい。
「もうすぐ雪が降るかもしれねえな」
妖狐の琥珀は空を見上げた。
「えーっ!雪嫌いだよ。ずっと家の中に居なくちゃいけないし」
幼く、外で遊ぶのが好きな凛音にとって、雪や雨は家の中に縛り付けられる呪いのようなものだと思っている。
口を尖らせる凛音の頭を、琥珀はなだめるように優しく叩いた。
「考えてみろよ。いいか、冬の次には何が来る?」
「・・・春?」
「そうだ。春には花が咲くな?」
「うん」
「花を咲かせるには力を溜めなくちゃならねえ。ゆっくり寝て、温かくなったら一気に花を咲かせるんだ。冬、雪はその布団みたいなもんだ。ゆっくり寝るためのな」
「花の、お布団?」
凛音は首を傾げて、自分の布団を思い浮かべた。
確かに、包まるとあったかくてよく眠れる。
よく寝れば、次の日は元気一杯で遊べる。
そういうことなのだ。
「琥珀、わかったよ」
「ん?」
「外で遊べなくても、凛音我慢する!きれいなお花好きだもん」
「偉いな」
琥珀は凛音を抱き上げると、肩車をした。
「さ、帰るぞ。腹が減った」
「うん、腹へった!」
黄昏時を家路につく。
凛音は琥珀の頭をきゅっと抱きしめると、その耳元にこっそりささやいた。
「起きる時間になったらお布団を無理矢理取られちゃうのも、一緒だね」
そういえば、今朝は少し寒くて、布団から出たくないと駄々をこねた凛音は、瑠璃丸に布団を剥がされて床に転がされたのだ。
「違ぇねえ」
二人の笑い声が、夕暮れに温かく響いた。
「雪」、「手毬」、「呪う」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
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凛音は龍と人間の子供、琥珀は妖狐です。
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【517】
畳に正座して、手を膝に置き、背筋を伸ばし、静かに庭に目を向けている。
彼の目には、おそらく爛漫の桜が見えているのであろう。
今は枯葉をつけているだけの桜の大木を、ただ静かに見据えている。
「・・・殿が切腹なされたとき、この庭には桜の花弁が降り注いでござった」
彼はゆっくりとそう呟いた。
「殿は・・・今年は奥方の桜餅が食えなんだ、とただそれだけおっしゃって・・・」
涙がはたりと膝に落ちた。
春、つらい別れをしたその侍を、見ている人間は居なかった。
ただ、襖に描かれた獣たちや、天井裏に潜む小鬼たちや、古き道具が見ているだけだった。
だから、侍は今までこらえていた涙を、やっと、思うまま流すことが出来たのだった。
お題: 「畳」、「桜餅」、「描く」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
秋なのに、お題に桜餅が出たので、どうしようかと思いましたさ(^^;)。
ブログ名、「猫又屋」も気に入っているのですが、犬神と妖狐に申し訳ないので、「桔梗堂」に戻しました。
今後ともよろしくお願いもうします。
あ、桔梗屋じゃないですよ?それじゃあ、一休さんの悪い商人になっちゃいますからね。
そうそう、このブログにいるあやかしたちがしゃべるツイッターボットなんてものがあるんですよ。
もしよろしければ、のぞいてやってくださいませ。
→【あやかしbot@桔梗堂】について
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畳に正座して、手を膝に置き、背筋を伸ばし、静かに庭に目を向けている。
彼の目には、おそらく爛漫の桜が見えているのであろう。
今は枯葉をつけているだけの桜の大木を、ただ静かに見据えている。
「・・・殿が切腹なされたとき、この庭には桜の花弁が降り注いでござった」
彼はゆっくりとそう呟いた。
「殿は・・・今年は奥方の桜餅が食えなんだ、とただそれだけおっしゃって・・・」
涙がはたりと膝に落ちた。
春、つらい別れをしたその侍を、見ている人間は居なかった。
ただ、襖に描かれた獣たちや、天井裏に潜む小鬼たちや、古き道具が見ているだけだった。
だから、侍は今までこらえていた涙を、やっと、思うまま流すことが出来たのだった。
お題: 「畳」、「桜餅」、「描く」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
秋なのに、お題に桜餅が出たので、どうしようかと思いましたさ(^^;)。
ブログ名、「猫又屋」も気に入っているのですが、犬神と妖狐に申し訳ないので、「桔梗堂」に戻しました。
今後ともよろしくお願いもうします。
あ、桔梗屋じゃないですよ?それじゃあ、一休さんの悪い商人になっちゃいますからね。
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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