宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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【雪】
白梟の羽が雪のように舞う。
俺はなにも考えられずただそれを見つめていた。
届かなかった指の先、撃ち抜かれた相棒が落ちていく。
散った羽は血に染まらず白いままで、それが目に痛い。
もう見ていられない。
いや、最期まで見なくちゃいけない。
でも、視界が羽で・・・。
書き出しをお借りして
【義姉】
山猫のように優美なその美しさ。
すらりとした体つき。
目付きの鋭さをちょうどよく甘くする魅惑的な唇。
活動的でいて女性らしいひとつに結わえた長い黒髪。
非の付けどころのない女性。
そして、非の付けどころのない忍者。
とても追い付けない。
そして誇らしい、俺の義姉。
【詮議】
まるで大鷲が獲物を狙うような鋭いまなざしに、僕らは一斉に首をすくめた。
「それで?」
誰も口を開かない。
でも、確かに怖い先生だけど、ちゃんと話せばわかってくれる人だと思うんだ。
僕は拳を握った。
「僕ら」
顔をあげると目があった。
「薬草を探しに行ったんです!」
書き出しをお借りして
【探偵と怪盗】
「逃げ道をあげるよ、怪盗さん」
探偵は余裕の表情。
彼の脇には開かれた窓。
私の背後にはもうすぐ警官が雪崩れ込んでくるドア。
とるべき道は一つだけど、誘いの裏が読めない。
「何を企んでるの?」
「企むのは探偵の仕事じゃないよ」
苦笑するその目が妙に優しいのは、何故?
お題:『テメェが石橋を叩き壊す前に忠告しに来てやったんだ』or『逃げ道をあげる 』【探偵】 #kuroyagi http://po.st/0HhzHr
残暑お見舞い申し上げます。
朝晩涼しくなりましたね。
温度差で風邪をひいている方が多いようです。
お気をつけて。
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白梟の羽が雪のように舞う。
俺はなにも考えられずただそれを見つめていた。
届かなかった指の先、撃ち抜かれた相棒が落ちていく。
散った羽は血に染まらず白いままで、それが目に痛い。
もう見ていられない。
いや、最期まで見なくちゃいけない。
でも、視界が羽で・・・。
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【義姉】
山猫のように優美なその美しさ。
すらりとした体つき。
目付きの鋭さをちょうどよく甘くする魅惑的な唇。
活動的でいて女性らしいひとつに結わえた長い黒髪。
非の付けどころのない女性。
そして、非の付けどころのない忍者。
とても追い付けない。
そして誇らしい、俺の義姉。
【詮議】
まるで大鷲が獲物を狙うような鋭いまなざしに、僕らは一斉に首をすくめた。
「それで?」
誰も口を開かない。
でも、確かに怖い先生だけど、ちゃんと話せばわかってくれる人だと思うんだ。
僕は拳を握った。
「僕ら」
顔をあげると目があった。
「薬草を探しに行ったんです!」
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【探偵と怪盗】
「逃げ道をあげるよ、怪盗さん」
探偵は余裕の表情。
彼の脇には開かれた窓。
私の背後にはもうすぐ警官が雪崩れ込んでくるドア。
とるべき道は一つだけど、誘いの裏が読めない。
「何を企んでるの?」
「企むのは探偵の仕事じゃないよ」
苦笑するその目が妙に優しいのは、何故?
お題:『テメェが石橋を叩き壊す前に忠告しに来てやったんだ』or『逃げ道をあげる 』【探偵】 #kuroyagi http://po.st/0HhzHr
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朝晩涼しくなりましたね。
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【紡ぐ】
吐き出した息が色をもって風に流れた。
細く息を吐いているのは、毛羽毛現というあやかし。
糸に関わるものを操る才を持つ彼女は、色のついた息をそっとたぐって束ねる。
その艶やかな糸の束は人には作り出せぬ幻の絹となる。
だが囚われの彼女がその絹をまとうことはないのだ。
書き出しをお借りして
【火焔華】
花が燃えている。朽ちるでなく、萎れもせず、炎の花弁が狂い咲いている。
燃え盛る花を鬼の娘が摘んでいる。
手折られた花は、たおやかな指で花冠に編まれ、娘はそれを持って里へ行く。
人であった時の記憶の中のいる、愛しい男を探してそれを被せるために。
書き出しをお借りして
【翼猫】
とがった耳と細く長い尻尾が生えた子供を拾った。
正確には、うちの庭で寝ていたんだが。
門は閉じているし、うちはひとけもあまりない町外れにあって子供が入り込んだらわかりそうなものだが、全く気づかなかった。
耳と尻尾は黒くて手触りは猫のようだが、さて、何者だ?
しかし、放っておくわけにもいかないと脇に手を入れて抱き上げるとぱちりと目を開けた。
おや、この子はオッドアイだ。
金と銀の色違いの瞳が臆せず俺を見つめる。
切れた光彩は縦長で、やはり猫のようだ。
「どこから迷いこんだんだい?」
俺の問いに子供は上を指差した。
「空?」
「うん」
そう言うと、子供はぽわんと猫に戻った。
黒い子猫は俺の手からすり抜けて落ちるかと思ったが、俺の目の高さに居続けている。
「ああ、道理で」
俺の声に子猫は自慢げに宙返り。
子猫の背には一対の翼が生えていたのだ。
翼猫。
本物を見たのは初めてだった。
「空から庭見たん。お花と木が呼んだん。ボク、ここに住む」
そう言ってふわふわと飛び回っている。
どうやら翼猫君はうちの庭がお気に召したらしい。
追い出すほど野暮でもないつもりだ。
「一緒に朝ごはんをどうだい?」
「にゃ!」
こうしてうちは少し賑やかになった。
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吐き出した息が色をもって風に流れた。
細く息を吐いているのは、毛羽毛現というあやかし。
糸に関わるものを操る才を持つ彼女は、色のついた息をそっとたぐって束ねる。
その艶やかな糸の束は人には作り出せぬ幻の絹となる。
だが囚われの彼女がその絹をまとうことはないのだ。
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【火焔華】
花が燃えている。朽ちるでなく、萎れもせず、炎の花弁が狂い咲いている。
燃え盛る花を鬼の娘が摘んでいる。
手折られた花は、たおやかな指で花冠に編まれ、娘はそれを持って里へ行く。
人であった時の記憶の中のいる、愛しい男を探してそれを被せるために。
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【翼猫】
とがった耳と細く長い尻尾が生えた子供を拾った。
正確には、うちの庭で寝ていたんだが。
門は閉じているし、うちはひとけもあまりない町外れにあって子供が入り込んだらわかりそうなものだが、全く気づかなかった。
耳と尻尾は黒くて手触りは猫のようだが、さて、何者だ?
しかし、放っておくわけにもいかないと脇に手を入れて抱き上げるとぱちりと目を開けた。
おや、この子はオッドアイだ。
金と銀の色違いの瞳が臆せず俺を見つめる。
切れた光彩は縦長で、やはり猫のようだ。
「どこから迷いこんだんだい?」
俺の問いに子供は上を指差した。
「空?」
「うん」
そう言うと、子供はぽわんと猫に戻った。
黒い子猫は俺の手からすり抜けて落ちるかと思ったが、俺の目の高さに居続けている。
「ああ、道理で」
俺の声に子猫は自慢げに宙返り。
子猫の背には一対の翼が生えていたのだ。
翼猫。
本物を見たのは初めてだった。
「空から庭見たん。お花と木が呼んだん。ボク、ここに住む」
そう言ってふわふわと飛び回っている。
どうやら翼猫君はうちの庭がお気に召したらしい。
追い出すほど野暮でもないつもりだ。
「一緒に朝ごはんをどうだい?」
「にゃ!」
こうしてうちは少し賑やかになった。
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【愛スル】
「首、鎖骨、肋骨。綺麗」
ゆっくりと指が僕の体の線をなぞる。
座らされた椅子。
後ろ手に縛られた両手。
くつわを噛まされとらわれた僕を、君はうっとりと鑑賞する。
肋骨の形を撫でた指が腰へ降りると、身じろぎした僕を見上げて君は壊れた笑みを浮かべた。
「骨まで愛してあげる」
お題:本日の身体部位は「肋骨」、行動は「撫でる」、苦い作品を創作しましょう。補助要素は「堕落」です。 #karadai http://t.co/Ef6WvKqa
【脱出ゲーム】
ここはどこだろう。
気づけばそこは古びた街の一画。
石造りの街並みの向こうに時計塔が見える。
「タイムリミットは午後六時!」
ラッパを持った兎が叫ぶ。
なんだっけ。
ふと握ってた手を開けば、お守りがあった。
そうだ。
記憶が甦る。
僕はあの子と約束したんだ。
この悪魔の街を日暮れまでに脱出しなきゃ!
お題:次のツイートで『お守り、時計塔、タイムリミット、めくる、英語』の5つのワードのうち3つ以上を使ったTwitterSSを書きます。http://t.co/hbluUoCf
三つ使用、タグ入らずでしたw
【書き出し売りの少女】
「この書き出しいかがですか?」
書き出し売りの少女が街行く人に声をかける。
「いかがですか?」
しかし、誰も足を止めない。
とうとう少女はお腹を空かせて座り込んだ。
「一つくらい使ってもいいよね?」
空想の世界では少女は自由で幸せだった。
だが、それだけだった。
書き出しをお借りして
【書き出し屋】
「この書き出しいかがですか?」
最近は夜店の屋台でも売ってるのか。
「売れる?」
「まあ、ぼちぼちだね。手軽に作家気分が味わえるってんで学生さんやサラリーマンが買ってくよ?手をかければ応えてくれるのも魅力だ。さあ、お兄さんもどうだい?」
「・・・いくら?」
書き出しをお借りして。
【線香花火】
ねえ、線香花火、しようか。
勝負もいいけど静かに二人でぱちぱちってはぜる音を聞いていたいんだ。
震える火の玉が落ちる前の一瞬思わず息を止めちゃったり、落ちた瞬間そんなお互いを顔を見合わせて笑いたいんだ。
ねえ、線香花火、しようよ。
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「首、鎖骨、肋骨。綺麗」
ゆっくりと指が僕の体の線をなぞる。
座らされた椅子。
後ろ手に縛られた両手。
くつわを噛まされとらわれた僕を、君はうっとりと鑑賞する。
肋骨の形を撫でた指が腰へ降りると、身じろぎした僕を見上げて君は壊れた笑みを浮かべた。
「骨まで愛してあげる」
お題:本日の身体部位は「肋骨」、行動は「撫でる」、苦い作品を創作しましょう。補助要素は「堕落」です。 #karadai http://t.co/Ef6WvKqa
【脱出ゲーム】
ここはどこだろう。
気づけばそこは古びた街の一画。
石造りの街並みの向こうに時計塔が見える。
「タイムリミットは午後六時!」
ラッパを持った兎が叫ぶ。
なんだっけ。
ふと握ってた手を開けば、お守りがあった。
そうだ。
記憶が甦る。
僕はあの子と約束したんだ。
この悪魔の街を日暮れまでに脱出しなきゃ!
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【書き出し売りの少女】
「この書き出しいかがですか?」
書き出し売りの少女が街行く人に声をかける。
「いかがですか?」
しかし、誰も足を止めない。
とうとう少女はお腹を空かせて座り込んだ。
「一つくらい使ってもいいよね?」
空想の世界では少女は自由で幸せだった。
だが、それだけだった。
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【書き出し屋】
「この書き出しいかがですか?」
最近は夜店の屋台でも売ってるのか。
「売れる?」
「まあ、ぼちぼちだね。手軽に作家気分が味わえるってんで学生さんやサラリーマンが買ってくよ?手をかければ応えてくれるのも魅力だ。さあ、お兄さんもどうだい?」
「・・・いくら?」
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【線香花火】
ねえ、線香花火、しようか。
勝負もいいけど静かに二人でぱちぱちってはぜる音を聞いていたいんだ。
震える火の玉が落ちる前の一瞬思わず息を止めちゃったり、落ちた瞬間そんなお互いを顔を見合わせて笑いたいんだ。
ねえ、線香花火、しようよ。
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【一寸法師】
地平線の先にはなにがあるのだろう。
一寸法師は旅に出る。
姫を助けるためじゃなく、自分の好奇心を満たすために。
この小さな身では地平線は隣の町かもしれないけど、それでも動物tたちに乗せてもらい、鳥に空を運んでもらえばいつかもっと遠くへいけるはず。
行こう。
書き出しをお借りして。
【彦星の覚悟】
君を待つだけの簡単なお仕事に僕はすっかり飽きているんだ。
会えるまで待ち続けるだけなんて、退屈でつまらない。
だいたい、もう何千年同じことを繰り返してると思ってるんだ。
「やめた。もう待たない」
僕は呟いて天の川へ飛び込んだ。
君をさらって逃げるために。
書き出しをお借りして。
【攻防】
「覚悟しろっ!」
びしりと降り下ろされる刀を僕は軽々とかわす。
「甘いね」
「悪逆非道な猫又め!我が成敗してくれると言うに!」
悔しがって地団駄を踏むそれは、僕の膝の高さにも満たない三頭身の侍だ。
それは顔を真っ赤にして叫んだ。
「我のおやつ返せ!ばかーっ!」
お題:今日の書き出し/締めの一文 【 覚悟しろっ! 】 http://t.co/xa0YiAVQ
【狛犬騒動】
「誰でぇ、奉行所に狛犬なんざ運び込んだ奴ぁ」
南町奉行の大塚左京がべらんめえな口調で問うと、同心の吉野日向が頭をかいた。
「申し訳ありません。夜毎暴れるとかで近隣の住民に泣きつかれまして」
「これがか」
左京は日本刀をすらりと抜くとぴたりと狛犬に当てた。
「一応、これでも免許皆伝の腕前だ。石でもばっさりいくぜ?さあ、正体を現しねぇ」
殺気すらまとわせた左京の声に、狛犬がごとりと震えた。
石の表面が次第に色づき、たてがみや尻尾が柔らかくうねり出す。
そして目だけで左京を見上げた。
「おっかねえ奉行さんだねえ」
「ほ、ほんとにしゃべった!?」
「日向、ガタガタ言うんじゃねぇよ」
ニヤリと笑って左京が刃を収めると、狛犬はほっとしたように伸びをして行儀よく前足を揃えて座った。
尻尾が左右に揺れている。
「で、なんだって夜中に暴れているんでぇ」
「別に暴れちゃおりやせんよ」
「じゃあ、なんだって出歩いているのだ」
若さゆえか驚きよりも好奇心が勝ったらしい日向の問いに、狛犬はため息をついた。
「旦那方、考えてもみなせえ。一年中じっとしているのがどんなに退屈かわかりますかえ?たまには駆け回ってもバチは当たらねえと思うんですがね」
「お主は神社にじっとしておるのが仕事であろうが」
「いやあ、実は神の使いで出歩くこともあるんでさあ。しかしまあ、月夜に浮かれ出ちまったのはやりすぎでしたね。お陰で近所の大工に見つかっちまいやして。面目ない」
「あのなあ」
「日向、まあいいじゃねぇか」
「大塚様?」
「月に浮かれるなんざ風流だ。今回は大目にみてやれ」
「話のわかる奉行さんだねえ」
尻尾を振る狛犬に左京は刃のような笑みを浮かべた。
「今度俺達の仕事を増やしやがったらわかってるだろうな?」
途端にしょげた尻尾がおかしくて、日向が声をあげて笑った。
お題:今日のお題 「奉行所」 「日本刀」 「狛犬」 http://t.co/AMef1Qc2
【若夫婦と式神】
落とした釣瓶を引き上げると、冷たい水を桶に移す。
脇にはこの時期には珍しい笹百合の白い花が三本、そっと置かれている。
懐紙を取り出して百合の花粉を外すと、花を桶に入れた。
「少々見映えが」
眉をひそめる主の脇で、山に咲き残っていた百合を取ってきた式神が笑う。
「奥方は気にしないと思うぜ?」
「まあな」
桶を持ち上げて主も笑った。
今、臥せっている奥方を元気付けるために好きな百合の花を一目見せたいと、主従でない知恵を絞ったのだ。
水をこぼさないように注意して運ぶ主のために、式神が奥方の部屋のふすまを開ける。
「気分はどうだ?」
「まあ」
奥方は驚いて目を見開くと体を起こした。
「この時期に百合を見られるなんて」
少し強い匂いに式神が小窓を開けると、吹き抜ける風が匂いを散らして優しく一同を包み込んだ。
「ありがとうございます」
頭を下げて、その後奥方はくすっと笑う。
「ただの風邪で、ほんの数日寝込んだだけですのよ?明日には起きられますのに」
「夏風邪を軽く見ちゃいかん」
「そうだぜ。人は弱いんだから気を付けねえと!」
反論する男性陣に奥方は優しく微笑んだ。
それが風邪ではなく懐妊だとわかったのは、数日後のことである。
お題:今日のお題 「釣瓶」 「懐紙」 「百合」 http://po.st/JFfiCd
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地平線の先にはなにがあるのだろう。
一寸法師は旅に出る。
姫を助けるためじゃなく、自分の好奇心を満たすために。
この小さな身では地平線は隣の町かもしれないけど、それでも動物tたちに乗せてもらい、鳥に空を運んでもらえばいつかもっと遠くへいけるはず。
行こう。
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【彦星の覚悟】
君を待つだけの簡単なお仕事に僕はすっかり飽きているんだ。
会えるまで待ち続けるだけなんて、退屈でつまらない。
だいたい、もう何千年同じことを繰り返してると思ってるんだ。
「やめた。もう待たない」
僕は呟いて天の川へ飛び込んだ。
君をさらって逃げるために。
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【攻防】
「覚悟しろっ!」
びしりと降り下ろされる刀を僕は軽々とかわす。
「甘いね」
「悪逆非道な猫又め!我が成敗してくれると言うに!」
悔しがって地団駄を踏むそれは、僕の膝の高さにも満たない三頭身の侍だ。
それは顔を真っ赤にして叫んだ。
「我のおやつ返せ!ばかーっ!」
お題:今日の書き出し/締めの一文 【 覚悟しろっ! 】 http://t.co/xa0YiAVQ
【狛犬騒動】
「誰でぇ、奉行所に狛犬なんざ運び込んだ奴ぁ」
南町奉行の大塚左京がべらんめえな口調で問うと、同心の吉野日向が頭をかいた。
「申し訳ありません。夜毎暴れるとかで近隣の住民に泣きつかれまして」
「これがか」
左京は日本刀をすらりと抜くとぴたりと狛犬に当てた。
「一応、これでも免許皆伝の腕前だ。石でもばっさりいくぜ?さあ、正体を現しねぇ」
殺気すらまとわせた左京の声に、狛犬がごとりと震えた。
石の表面が次第に色づき、たてがみや尻尾が柔らかくうねり出す。
そして目だけで左京を見上げた。
「おっかねえ奉行さんだねえ」
「ほ、ほんとにしゃべった!?」
「日向、ガタガタ言うんじゃねぇよ」
ニヤリと笑って左京が刃を収めると、狛犬はほっとしたように伸びをして行儀よく前足を揃えて座った。
尻尾が左右に揺れている。
「で、なんだって夜中に暴れているんでぇ」
「別に暴れちゃおりやせんよ」
「じゃあ、なんだって出歩いているのだ」
若さゆえか驚きよりも好奇心が勝ったらしい日向の問いに、狛犬はため息をついた。
「旦那方、考えてもみなせえ。一年中じっとしているのがどんなに退屈かわかりますかえ?たまには駆け回ってもバチは当たらねえと思うんですがね」
「お主は神社にじっとしておるのが仕事であろうが」
「いやあ、実は神の使いで出歩くこともあるんでさあ。しかしまあ、月夜に浮かれ出ちまったのはやりすぎでしたね。お陰で近所の大工に見つかっちまいやして。面目ない」
「あのなあ」
「日向、まあいいじゃねぇか」
「大塚様?」
「月に浮かれるなんざ風流だ。今回は大目にみてやれ」
「話のわかる奉行さんだねえ」
尻尾を振る狛犬に左京は刃のような笑みを浮かべた。
「今度俺達の仕事を増やしやがったらわかってるだろうな?」
途端にしょげた尻尾がおかしくて、日向が声をあげて笑った。
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【若夫婦と式神】
落とした釣瓶を引き上げると、冷たい水を桶に移す。
脇にはこの時期には珍しい笹百合の白い花が三本、そっと置かれている。
懐紙を取り出して百合の花粉を外すと、花を桶に入れた。
「少々見映えが」
眉をひそめる主の脇で、山に咲き残っていた百合を取ってきた式神が笑う。
「奥方は気にしないと思うぜ?」
「まあな」
桶を持ち上げて主も笑った。
今、臥せっている奥方を元気付けるために好きな百合の花を一目見せたいと、主従でない知恵を絞ったのだ。
水をこぼさないように注意して運ぶ主のために、式神が奥方の部屋のふすまを開ける。
「気分はどうだ?」
「まあ」
奥方は驚いて目を見開くと体を起こした。
「この時期に百合を見られるなんて」
少し強い匂いに式神が小窓を開けると、吹き抜ける風が匂いを散らして優しく一同を包み込んだ。
「ありがとうございます」
頭を下げて、その後奥方はくすっと笑う。
「ただの風邪で、ほんの数日寝込んだだけですのよ?明日には起きられますのに」
「夏風邪を軽く見ちゃいかん」
「そうだぜ。人は弱いんだから気を付けねえと!」
反論する男性陣に奥方は優しく微笑んだ。
それが風邪ではなく懐妊だとわかったのは、数日後のことである。
お題:今日のお題 「釣瓶」 「懐紙」 「百合」 http://po.st/JFfiCd
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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