忍者ブログ

宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

[308]  [307]  [306]  [305]  [304]  [303]  [302]  [301]  [300]  [299]  [298

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【698】

 屋根の上で蜜柑色の三日月を見上げていると、烏天狗がばさばさと空から舞い降りてきた。
「よう、犬神のダンナ。今日はまたやけにおとなしいじゃねえか」
 人の姿の烏天狗は、ちょこんと俺の横に座り込む。
 口は悪いが修験者の格好をしたこのあやかしはどう見ても十そこそこの童の姿で、きりっとした目元や生意気そうな口を置いておいても案外可愛らしい。
 それを言ってつつかれるほど趣味は良くないから何もいわぬが。
「お前は俺を何だと思っているのだ。そう始終刀を振り回したりはしておらぬ」
「そうかい?この間はなにやら酔っ払って猫又とケンカしてたそうじゃないか。壁に大穴開けたって?」
「・・・うるさい」
 あれはこいつの兄貴分である天狗のやつが悪いのだ。
 俺は強いほうだと思うが、やつはザルよりひどいうわばみで、おかげでしこたま飲まされた俺は、どうやら長屋で酒臭いと文句を言った翡翠と喧嘩をしたらしい。
 翌日俺たちは琥珀に久しぶりに怒鳴られ、壁の穴を直さねばならなくなった。
「これが江戸の長屋住まいだったら、きっと一棟ぶち壊して大家泣かせてただろうなあ」
「黙れ」
「へいへい」
 烏天狗はにやにやして懐からだまって包みを取り出した。
「なんだ?」
 開けるとやっと出たばかりのたらの芽が入っている。
「どうしたのだ?」
「天狗のアニキがよ、悪かったって。わびの品だってさ」
「そうか」
 大柄で豪放に見えるが、意外と神経の細かいいい奴なのだ。
 それゆえ良く憂さ晴らしの酒の相手をさせられるのだが。
「そういえば、もらい物の大根だの白菜だのがあったな。持ってゆけ」
「え?いいよ。おいら使いで来ただけだし」
「では、天狗に使いをしてくれ。また酒を飲みに山を降りて来いと伝えてくれるか?土産はその駄賃だ」
「んじゃ、ありがたく」
 烏天狗が笑う。
 俺は立ち上がると屋根から軽々と飛び降りた。
 何か童が好きそうなものも持たせてやれないか、と思案しながら。


 お題:「三日月」、「蜜柑」、「大家」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
農家のかやぶきの屋根に座り込んでしゃべる瑠璃丸と烏天狗の坊主。
寒いのは平気なので、日が暮れたころ、三日月に見守られつつのんびりと。
三月ですね。
もうすぐ春。そろそろタラの芽やふきのとう、梅の話題が聞こえてこないかな。
桔梗堂も三月からは春めいて、のほほん、ほのぼのモードで行きたいと思っております。
最近切ないの多かったし(^^;)

拍手、ご訪問ありがとうございます。
そのカウンターや拍手がとても励みになってます。
そういえば、昨日の。
瑠璃や琥珀や翡翠でにやにやしていただけて、本望です♪


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

PR

男子の懇願/嘘つき HOME うるう年

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
カウンター
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

忍者ブログ [PR]
template by repe