宵月楼－しょうげつろう－

【44】

それでも僕は、日々、物語を紡ぐ。
溢れる言葉に命を宿しては、そっと窓から外へ放つ。
飛んでいけ、どこまでも。
僕の代わりに、どこまでも。

【45】

深夜の人間がいない動物園を、彼らは自由に歩き回っている。
檻なんて入ってやっているだけさ。
ちょっと猿たちが手を組めば、簡単に開くんだ。
星空の下を悠々と散歩して、思索にふけるライオン。
忘れ物の傘を優雅にさして歩く象。
夜は彼らの時間なんだよ。

お題：
「深夜の動物園」で登場人物が「耽る」、「傘」という単語を使ったお話を考えて下さい。

【46】

彼女に僕の正体がバレた。
「別にあんたが猫又でもあたしは構わないのよ」
ビールの缶をテーブルに叩きつけて睨まれる。
「そりゃ、良かっ・・・」
「でもね、一個だけ許せないの！」
「な、なに？」
「なんで、あんたの方が料理がうまいのよ！理不尽だわ！猫の癖に！」
そ、そこ？

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