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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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8月32にちではなくて、9月1日ですよw
学生の皆さんは頑張ってくださいね。
大人は相変わらず通常営業で頑張るよ。


【366】

首を引っ込めたすぐ真上を、鎖鎌が音を立てて空を薙いだ。
長屋の壁をえぐって、持ち主の元に戻る。
じゃらりと鎖がうねる。
「落ち着けよ!」
「問答無用!」
頭に血が上った相手は、話を聞いてくれそうもない。
「しゃあねえな」
俺は藤色の着物の裾を軽くからげて外へ飛び出した。

お題:「長屋」、「鎖鎌」、「藤」で創作しましょう。
http://shindanmaker.com/138578

【367】

秋が来たらそれを渡さねばならないらしい。
しかし、誰に何を渡すのかわからぬまま、俺は毎日を過ごしていた。
そして昨日より涼しい風が吹いた朝、誰かに肩を叩かれた。
「おはよう。一夏の夢は堪能したかい?」
真っ黒なマントの男が立っていた。
ああ、そうか。
渡すのは仮初めの命。

お題:題材[真っ黒な,秋,渡す,おはよう]恐い感じでやってみよう!
http://shindanmaker.com/9025
あまり怖くない(^^;)。

【368】

道端で捨て猫が鳴いたら、君はどうする?
通りすがる君に向かって、「にゃあ」って言ってみる。
怪訝そうに見る君に、にっこり特上の笑み。
「ねえ、拾ってよ」
道端にしゃがみこんで見上げる僕。
「損はさせないよ?」

お題:捨て猫がないた

【369】

君の頬を伝う雫がまるで宝石のようで、気づいたらそっと触れていた。
雫はあっけなく形を失い、あとには濡れた僕の指先と、君の驚いた表情。
それが初対面だった。

お題:濡れた指先

【370】

作り出したい衝動。
抑えがたい渇望。
どうして、先も見えないのに、なにかをつかもうと手を伸ばしてしまうのだろう。
理由などわからぬまま。
それでも僕は無性に書きたいんだ。


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【363】

星空の下、屋台の蕎麦を勧めると、燕は物珍しそうに器を見つめた。
「食って見ろよ。うめえから」
先に食べ始めると、おずおずと口をつける。
初めて食べたのだろうが、気に入ったようで一気にたいらげた。
「また、来年の春、一緒に食おうぜ」
「はい、必ず」
明日、燕は南に渡る。

お題:「星空」、「蕎麦」、「燕」で創作しましょう。
http://shindanmaker.com/138578

【364】

僕の抱き締める腕の強さも、君を見る瞳の熱も、途切れがちの声のかすれも、原因はわかってるんでしょう?
そんなに焦らさないで。
もう、これ以上は、限界。

お題:そんなに焦らさないで

【365】

夜が深くて、音が吸われる。
静まり返って、不気味なほど空気が濃密になる。
月は紅く、星は翳って、胸騒ぎが収まらない。
僕は君を抱き締めて、離せない。
手がほどけない。
ごめん。
今夜は帰らないで。
そばにいて。

お題:今夜は帰らないで


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【355】

「あの屋敷なら金があるであろう!」
「忍び込んで盗めば盗賊となれるのだな」
見れば小さなあやかしたちが良からぬ相談をしている。
どうも読んでやった義賊の絵草紙が悪かったらしい。
でも黒装束はいいが、変化が下手なので耳も尻尾も隠れちゃいない。
まずは鏡の前で練習が先だな。

お題:「屋敷」、「鏡」、「尻尾」で創作しましょう。
http://shindanmaker.com/138578

【356】

空っぽの体に空っぽの心。
壊れた人形のように床にくたりと座ったままの僕。
君が現れて、お伽噺のようなキスをくれても、僕は動かず、喋らず、笑わない。
平気だよ。
なんにもない僕には「さみしい」も「かなしい」もないもの。
「じゃあ、どうして泣いているの?」
泣いてるって誰が?

お題:「なんにもない」

【357】

生きている。
ひどい痛みのはずなのに、君は笑う。
生きている。
それがわかるから嬉しいの。
そう言って腕を赤く染めて笑う。
僕はそんな君をただ抱き締める。
そして、丁寧に丁寧に包帯を巻いてあげる。
心臓に突き刺すような痛みを感じながら。
甘くうっとりした君の視線を感じながら。

お題:「突き刺すような痛み」

【358】

飛べない鳥は籠の中、今日も空を見上げてる。
抜けるように青い空。
そこに抱かれる夢を見て、今日も一人見上げてる。
自分の背中に羽はなく、叶わぬ願いと知りもせぬ。
そしてやがては飛べぬまま、空に向かって身を投げる。

お題:「飛べない鳥」

【359】

キレイゴトでも、エソラゴトでも、何でもいいや。
悲しいことや落ち込むことを考え出すとどこまでも堕ちていくんだから、せめてここでは幸せな場面を描いていたいだけなんだ。
でもね、知ってた?
甘い台詞も、都合のいい奇跡も、全部「もしかしたらあるかもしれないこと」なんだよ。

【360】

雨が降りやまない。
ぼんやりと外を眺めても、くすんだような景色は目に入らず、気がつけば君のことばかり考えてる。
会いたいよ。
いま、何してる?
少しは僕に会いたいと思ってくれてるかな。
そう考えていたら、視線の先に傘をさした君が魔法のように現れた。

お題:気がつけばお前のことばかり考えてる

【361】

傷が熱い。
肩を切りつけられただけだけど、熱さと傷みに意識が朦朧とする。
「化け物は死ね」という叫びが体の中で僕のあやかしの血を沸騰させる。
だけど。
「あんたは傷つけちゃダメ」
君が僕を抱き締めて止めるから。
殺意を暴力的なほどの愛撫にすり替えて、僕は衝動に身を任せた。

お題:衝動に身を任せた

【362】

一人で舞い上がってバカみたいだ。
夏祭りに一緒に行きたくて、君を誘おうとした時に聞こえてきたのは、他の奴に放った君の声。
「誘われたら誰にでもついていくと思わないでよね」
言い切る姿に、自然と足が止まる。
そしたら振り返った君に腕を捕まれた。
「あたしは自分で誘うのよ」

お題:一人で舞い上がってバカみたいだ


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【348】

猫絵師が
夜の散歩を猫又と 
星を仰いで目を細め 
ふらりと買った安酒で 
過ぎ行く夏を見送った

お題:「星」、「酒」、「絵師」で創作しましょう。
http://shindanmaker.com/138578

【349】

付喪神に成りかけの兎の根付けは、犬神である俺が懐に入れていたせいか動くことができるようになっていた。
小さな根付けの大きさの兎が跳ねる様はなかなか愛らしい。
だがある夜、兎は文机の上で座り込み、開いた窓から月を見上げて小さな涙を落としていた。
俺は見ないふりをした。

お題:「兎が泣きました」

【350】

腕の中にはずっと欲しかったものが確かにあるから、あとはもう何も要らない。
欲しかったのは貴方。
心が手に入らないから、体だけでも私のものにすることにしたの。
少し青ざめたまぶたに口付ける。
もう二度と開かなくても構わないわ。
これは私のもの。
あの子には決して渡さない。

お題:「もう何もいらないから、」

【351】

天使として生まれるはずが、人間として生まれてこれた。
天使なんかに生まれたら、神の使い走りをするばかりで、恋も愛も喜びも悲しみもこんなに濃くは感じられない。
でも翼の名残が背中の肩甲骨の辺りでうずいて、気を抜くと空へ堕ちていきそうになる。
まだ、生きていたいのに。

お題:「空へ堕ちる」


【352】

照れ屋の君は甘い雰囲気が苦手。
僕は平気なんだけど、一緒にいてくれないと困るから、いつもは抑え気味で愛情表現。
でもたまには真顔で「好きだよ」って言ってみる。
真っ赤な顔で僕の袖を握りしめて黙りこむ君だけど、気持ちはちゃんと伝わってくるよ。
「恥ずかしい、でも、好き」

お題:恥ずかしい、でも、好き

【353】

駅の改札口で待っていて。
そう言われて最寄り駅で待つ。
正直、驚いてる。
だっていきなり僕の家に来たいって、どういう風のふきまわし?
今までは「仲がいい友達」から、近づかせてくれなかったってのに。
悩んでる僕の前に、いつのまにか微笑む君。
わかったよ。振り回されてあげる。

お題:駅の改札口で待っていて

【354】

君が足りない。
一日会えないだけで、これはきっと禁断症状。
明日には会えるのに、会いたくて会いたくて、寝転んだまま手を空に向かって伸ばして、君を求める。
明日、僕、我慢できるかな。
君に会えた途端、むさぼるようなキスをしてしまいそうだよ。

お題:むさぼるようなキスを



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【343】

その寺はあやかし退治で有名であった。
あやかしを見る才があるが故に、自分は明日売られるのだ。
「坊主になんてなりたくないなあ」
「じゃあ逃げるかえ」
気づけば脇につり目の男が立っている。
髪を結わえた組紐の先で、鈴が涼しげな音を立てた。
「我ら稲荷の狐なら匿えるわえ」

お題:「寺」、「組紐」、「狐」で創作しましょう。
http://shindanmaker.com/138578


【344】

夏の終わり。
セミの種類が変わり、空が次第に高くなる。
風の温度が少しだけ下がり、虫の音が大きくなる。
僕は屋根の上で夜空を見上げる。星が綺麗。
どこまでも深い空に撒いたような星たち。
囁くような瞬きを見ていたら、君の声が聴こえた気がした。

お題:君の声が聴こえた気がした

【345】

ありふれた言葉だよね。
でも、一番大事な言葉なんだ。


「君を愛してる」



だから、僕がそばにいない人生でも、受け入れられるよ。
君が幸せであればいいんだから。  


お題:ありふれた言葉だけど

  【346】

「一緒にいたのは誰?」
言ってから、しまったなと思った。
思った以上に嫉妬むき出しの不機嫌な声だったから。
恥ずかしくなって背を向ける。
ほんとはそのまま立ち去ろうかと思ったけど、君のが一瞬早かった。
「気になる?」
くすくすと笑って、君は僕をなだめるように抱き締めた。

お題:一緒に居たのは誰?

【347】

僕の道と君の道はほんの少しだけ交差して、もう後は離れていくばかり。
見えなくなっていく君へ、僕はただ幸せであれと願う。
思いのままに生きて欲しいと、ただそれだけを切に願う。
そして僕はもう、振り返らない。
僕も僕の道を歩いていく。
先を見据えて。


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宵月楼 店主
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オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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