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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【487】

月夜に一人、槍を構える。
誰もいない場所で、心を静め、ゆっくりと型を体に確認させていく。
考えずとも体が動くまで、何度も動きを馴染ませる。
次第に槍の動きは早く滑らかになってゆく。
もう重さは感じない。
槍と一体になる。
瞳から、迷いが消える。
そして、満月にぎらりと光る穂先が素早く風を断ち切って、紅葉の葉を一枚、刺し貫いた。

お題: 「満月」、「槍」、「紅葉」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
満月の下、黙々と槍の修練を積む。
木の葉と共に、人を斬る迷いをも刺し貫いて、捨ててゆく。


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【486】

砂漠の中をどこまでも続く線路がある。僕の目の前を真っ直ぐに。右を見ても、左を見ても、果ては見えない。駅はなく、見渡す限り砂ばかり。でも、線路に触れるとかすかに振動を感じる。駅などなくても、乗るべき人の前に現れる。何処でもない場所を走る鉄道。時の列車。僕はそれをここで待ち続けている。

お題:鉄道 (2011/10/14ついのべデーお題)で140字。
ただいまツイ禁中なので、こっそりここにアップ(^^;
今でも、電王は名作だと思うんですよ。
デジタル時計の数字が揃うと、扉を開けたくなる衝動に駆られます。


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【485】

 井戸端で先ほど棒手振りから買った葱を洗う。
 それを切り、出汁に入れ、火が通ったところで伊勢の国から送ってもらった赤い味噌を溶きいれる。
 色が濃い、味が濃いと江戸者には言われるが、やはり味噌汁はこれぐらい濃くないと飲んだ気がしない。
 湯気に乗って味噌のいい香りが漂う。
 焚いた飯と釣ってきた雑魚を焼いたもの。もらい物の漬物。
 これだけあれば、十分満足がいく食事になる。
 侍として刀を振り回すより、こうしてたすきがけをして飯を作るほうが気が休まるとは、やはり自分は生まれてくる家を間違えたのだろう。
「いっそ、武士を辞めるかな」
 思わず漏れた呟きに、もう何年も会っていない幼馴染が聞いたら烈火のごとく怒りそうだと思わず苦笑が浮かんだ。
 懐かしい味は、幼い日々を思い出させる。

お題:「井戸」、「葱」、「侍」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
お侍でも浪人さんだと、長屋暮らしで質素な食事かな、と。
味噌は断然赤だし派です。


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【484】

「渡しはここだろうか?宿場で十手持ちの五平親分に聞いて来たのだが」
「五平が教えるたあ珍しい」
 無愛想な親父は客である俺も見ぬまま、煙管をふかしてぼそりとそう言った。
 川幅は広く、向こう岸は霧にかすんで見えない。
 だが、繋いである船は小さく、馬が乗る余裕はないように見える。
「馬は無理だろうか」
 不動は俺の愛馬で、兄弟も同然だった。手放すなど想像もできない。
「馬を渡したいなら、一緒に泳ぐしかねえな」
「そうか」
 親父の返事は予想通りだった。
 ならば仕方あるまい。
 俺は意を決すると着物を脱いでまとめた。
「では、泳ぐとしよう。不動、俺を信じてついて来てくれるか?」
 栗毛の不動は当たり前だと言うようにいななくと、俺を引きずる勢いで川へ歩みだした。
 気が早いやつだ。
「迷わず泳ぐか。おう、坊主」
 親父の声が俺たちを追いかけて響いた。
「河童とかわうそに気をつけな。惑わされると淵に飲まれるぜ」
 あやかし相手じゃ、気をつけようもあるまい。こちらは馬連れの丸腰だというのに。
 俺は思わず苦笑する。
 そして、返事代わりに右手を上げて見せると、川へ入った。
 何が待っていようと、俺たちは進まねばならないのだ。
 
お題:「渡し舟」、「十手」、「馬」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
十手の使いどころに苦心。


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【483】

 岡っ引きの十兵衛の上役は、南町同心の佐々木辰之信である。
 十兵衛の父親が死んだ時、まだ十四だった十兵衛に「昔なら初陣を飾ってもおかしくない年だ」と反対を押しのけ十手を預けたのは、自分もまだ二十二の若造であるゆえだろうか。
 同心仲間はこの若い二人を育てていく親のような目で微笑ましく見守っている節があり、叱咤されつつ二人は職務に励んでいる。
 この二人にはもう一つ共通点がある。
 それは、「見る」目を持っているということであった。
「おう、どうした十兵衛。ずいぶんと疲れてるじゃねえか」
 若いくせに役宅の縁側で日向ぼっこをしていた辰之信は、よれよれと庭に入ってきた十兵衛ににやりと笑いかけた。
「今日はどうした?おいてけ掘に無理難題を押し付けられたか。それとも化け猫でも出たか」
「冗談じゃねえよ」
 ぞんざいに言うと、座れと促された縁側へ腰を下ろして、十兵衛はため息をついた。
「雪女が一緒に商売をしていた小豆洗いともめてんだよ。小豆洗いの甘味屋の饅頭が全部雪まみれになっちまって、まだ秋なのに雪はおかしいから、店を閉めさせて仲裁だ。旦那が出張ってくれりゃ、あいつらもまだおとなしくなんだけど」
「その程度なら、おめえで十分さ。俺が出ると、ちょいと事が大きくなるからな」
 辰之信は十兵衛の頭をぽんぽんと叩いた。
「これでも信用してんだぜ?十兵衛親分よ」
「・・・旦那」
「ん?」
「にやにやしながら言っても説得力がねえよ」
「そうか?」
 嫌そうな顔をする十兵衛に、辰之信は菓子を勧めた。
 もらい物の上生菓子は菊を模している。
 もう十兵衛が十手を握ってから、一年がたとうとしていた。

お題:「雪」、「饅頭」、「同心」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
時々書きたくなる少年十手持ちの十兵衛親分。
今回は上司を出してみました。
同じように若くして親の職を受け継ぎ(本来同心は一代限りらしいですが、うまいこと世襲していたようですね。勉強不足なので間違っていたらすみません)、同じようにあやかしを見る目を持つ二人です。
江戸で人にまぎれて暮らしているあやかしたちと人との接点として、人側で頑張ってもらおうと思ってます。


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宵月楼 店主
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非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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