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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【502】

猫の目のような細い三日月の夜。
すすきの原で、経師屋は懐から取り出した巻物をするりとほどいてみせた。
色鮮やかに描かれていたのは、鼓や笛を楽しげに奏でる小鬼たち。
それらが巻物から飛び出して、躍りながら楽を奏でる。
「さあ、宴を始めようか」
人もあやかしも入り乱れ、秋の宴が始まった。

お題: 「三日月」、「鼓」、「経師屋」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578


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【501】

 門と塀は結界を担う。
 例えば、あやかしであれば力弱いものは招き入れられなければ敷地へは入れないし、特にこのような寺社の場合はその清い空気自体が結界となってあやかしを阻む。
 まして、祓い人が所属するとなれば、結界を強固にはってあるのが常だ。
 瑠璃丸は、門を守る僧を倒すことで結界を裂いて中に侵入していた。
 身を隠し、気配を探る。
 頼まれたものは奥の部屋にひっそりと置かれていた。
「無事か」
 部屋に忍び入り、貼られた札を剥がし、声をかける。
「あ・・・?ああっ!犬神の旦那!」
 それは古びた硯だった。
 それに手が生え、足が生え、ぱちりと目が開くと、その目がうるうると涙で潤んだ。
「あっしはもう駄目かと思いましたよ。あいつら、気味悪がってぞんざいに扱いやがるし」
 付喪神は本性が傷つけばその存在を保てない。硯は付喪神になるだけあっていい素材で出来ている為、簡単には欠けなかったのだろうが、十分に肝を冷やしたはずだった。
「お前が持ち主に向かって呪ってやると口走るからこのようなことになるのだ。少しは懲りただろう?」
「・・・そりゃあ、もう」
 少し矜持の高い硯が身を小さくしているのを見て、瑠璃丸は苦笑した。
「では、少しの間おとなしくしていろ。ここを抜け出なければならん」
「わかりました」
 手足が引っ込んだ硯を懐に押し込んで、瑠璃丸はそっとふすまを開け、敷地を横切って塀を飛び越えた。
 飛び越える時、やっと目を覚ましたらしい門に居た僧が、硯がないのに気づいてわめいている声がかすかに聞こえてきた。
 この寺があやかし封じを生業とするなら、また対峙することになるだろう。
 これもまた縁なのだろうと、瑠璃丸はかすかに微笑んで、その場を後にした。

お題:「寺」、「硯」、「呪う」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
また「寺」と言うお題だったので、昨日の続きを。
人は殺しませんが、瑠璃丸はどこか人間の武芸者のように、強い者や卓越した技量に惹かれるようです。


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【500】

 目の前に鋭い音をたてて矢が刺さる。
 犬神の瑠璃丸はぎりっと奥歯をかみ締めて足を止めた。
 山寺の門に立ちふさがり弓を構えているのは、ただの僧ではない。 「見る」目を持ち、おそらくは「祓う」力も持っている。その殺気はまっすぐに瑠璃丸に向いている。
「あやかしよ、次は外さん」
 次の矢をつがえ、ぎりぎりと引き絞る。
 だが、この門を抜けねば、中に捕らわれている仲間を助けることは出来ない。
 向けられた殺気に、あやかしの本性が血を求めてざわつく。
 それを奥歯をかみ締めて押し殺す。
「邪魔を・・・するな!」
 瑠璃丸は刀を抜くと、跳躍した。
 放たれた矢を紙一重でかわし、一瞬で間合いをつめると刀を振り下ろす。
 鈍い音がして、僧はゆっくりと地面に身を沈めた。
 騒ぎを聞きつけて他の人間がやってくる前に、瑠璃丸は物陰に身を潜める。本気で気配を消せばもうおいそれと見つかるものではない。
 瑠璃丸は静かに刀を鞘に戻した。
 刀には、血の一滴も付いてはいない。
 この刀は、あやかししか斬れぬ妖刀なのだ。

 
お題:「寺」、「弓」、「犬神」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
うちの犬神は無愛想で無口なわりには頼まれごとが多いようです。
今回は捕らわれ、祓われようとしているあやかしを助ける仕事な感じで。

短い文章を、つらつらと書きなぐって、もう500になりました。
小説にするわけでもなく、オチもなく、ジャンルも一定していない読みづらい文章におつきあいありがとうございます。
これからも、一枚のイラストを描くように、絵が思い浮かぶような場面を書いていきたいと思います。


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【499】

 「雨」のかわりに「飴」が降る。
 ばらんばらんと音を立て、いろんな味が降ってくる。
 多いのは空色のソーダ味と真っ白いミント味。
 夕方にはオレンジ味が多くなるし、虹が出ればグレープも青リンゴもイチゴも混じる。
 僕たちは大喜びで、でも、降ってる間は外には出ない。
 だって、当たると結構痛いんだ。
 「飴」上がりに拾いに外に出てみたら、木の葉の影で蛙が途方に暮れていた。
 僕は思わず苦笑して、じょうろで水をかけてあげた。

お題:「雨」、「飴」、「蛙」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
雨と飴からメルヘンっぽく。
メルヘンなので、整合性や常識をあてはめてはいけません(^^;)。


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【498】

 秋風が次第に冷たくなっていく。
 気付けばもう紅葉が始まり、次第に年の瀬に向けてせわしない気分にさせられる、そんな時節になっている。
 岡っ引きの十兵衛は、ふと橋の欄干に手をついてぼんやりと川の水面を見つめている娘を見かけて眉をひそめた。
 この時期、やがて来る冬の寒さと年末の掛取りに背を押されて、身投げしたり夜逃げする輩が増える。
 特に橋のあたりは要注意なのだ。
「あんた、この辺じゃ見ない顔だな」
「・・・え?」
 娘はいきなり声をかけられて、驚いたように顔を上げた。
 その拍子に、ほろりと頬を真珠のような涙が零れ落ちる。
「なっ・・・あ、その、俺はこの辺りを任されてる岡っ引きの十兵衛だ。なにか困りごとなら相談に乗るぜ」
 慌ててそう言う十兵衛に、娘は涙を払って向き直った。
「ああ、存じています。【見る】目をお持ちとか。だから私が見えるのですね」
「あんた・・・あやかしか」
「雪女の六花と申します。尋ね人が見つからず、途方にくれてお見苦しいところをお見せしました」
「話だけでも聞かせてくれねえか?何か力になれるかも知れねえ」
 十兵衛の言葉に、六花は驚いて目を見開いた。
「人間が、ですか?」
「さっきわかったろう?俺はな、人間もあやかしも区別できねえ不器用な性質(たち)なんだよ」
 にやりと笑う十兵衛に、六花はやっとふんわり微笑みを浮かべた。
 まだ十四の十兵衛に誰かを重ねたのか、愛しむような、しかし少し寂しそうな笑みだった。
「ありがとうございます。お頼みもうします」
 深々と頭を下げた六花の揺れた髪の先から、まだ早い雪の欠片がひらひらと散った。

お題:「雪」、「真珠」、「岡っ引き」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578
雪女が探しているのは、誰なんでしょう。
今まで出した雪女より、おしとやかな子を出してみました。
以前出したものといったら、小豆洗いと商売をしてみたり、かと思ったら気が合わなくてケンカしてみたり、なんとなくおきゃんな子になってしまっていたので(^^;)。

以前の十兵衛親分
Twitter Novel 8/19 【295】
Twitter Novel 8/24 【325】
菊の頃


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オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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