宵月楼-しょうげつろう-
あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。
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風邪をひいて、随分とサボってました(^^;)。
お休み中も見に来てくださった方、ありがとうございます。
やっと復活です。
今見たら、【666】で止まってたので、笑ってしまいましたw不吉なwww
さて、14日はついのべデーでしたね。お題は「本命」ということで、違和感は余りないと思うので、ついのべデーとバレンタインを一緒に載せてしまいます。
【667】
まさかこんな日に風邪をひいて学校を休むなんて。
僕はベッドでため息をつく。
君は誰にチョコをあげるんだろう。
気になって気になって恋する僕は寝られやしない。
その時、携帯が震えた。
悪友からのメールには、チョコを持った君の写真と【女の子待たせるな、馬鹿】の文字。
え?僕?
お題: 「昼のベッド」で登場人物が「恋する」、「チョコレート」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【668】
こんなに君が好きなのに、僕には伝える手段がない。
君はいつもどこか遠くを涼しい顔で見ているだけで、僕に見向きもしてくれない。
でも今日こそは君を捕まえるんだ!
「こら!水槽にいたずらしないで」
「にゃうぅ」
何度引き離されても、僕の本命は君だけだからね!
お題:本命
【669】
本命は秘密。
それが君の口癖で、唇に指を当てて微笑まれると僕はそれ以上追及できなかった。
だって僕じゃないってわかるから。
だから今だけ。
僕の胸で泣きじゃくる君をそっと子供を守るように抱き締める。
その涙の理由が僕でなくても、今だけは僕が君を守らせて。
お題:本命
【670】
机の上にはチョコの山。
これは一種のイベントで、たいした意味はないんだよ?
級友たちの嫉妬が混じる視線に、心の中で言い訳する。
「先輩!チョコ受け取ってください!」
「男子にあげたら?」
「先輩の方がずっとカッコイイです!」
「・・・」
ああ、男子の視線が痛い。
お題:バレンタイン
とまあ、こんな感じですかね(^^;)。
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今見たら、【666】で止まってたので、笑ってしまいましたw不吉なwww
さて、14日はついのべデーでしたね。お題は「本命」ということで、違和感は余りないと思うので、ついのべデーとバレンタインを一緒に載せてしまいます。
【667】
まさかこんな日に風邪をひいて学校を休むなんて。
僕はベッドでため息をつく。
君は誰にチョコをあげるんだろう。
気になって気になって恋する僕は寝られやしない。
その時、携帯が震えた。
悪友からのメールには、チョコを持った君の写真と【女の子待たせるな、馬鹿】の文字。
え?僕?
お題: 「昼のベッド」で登場人物が「恋する」、「チョコレート」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【668】
こんなに君が好きなのに、僕には伝える手段がない。
君はいつもどこか遠くを涼しい顔で見ているだけで、僕に見向きもしてくれない。
でも今日こそは君を捕まえるんだ!
「こら!水槽にいたずらしないで」
「にゃうぅ」
何度引き離されても、僕の本命は君だけだからね!
お題:本命
【669】
本命は秘密。
それが君の口癖で、唇に指を当てて微笑まれると僕はそれ以上追及できなかった。
だって僕じゃないってわかるから。
だから今だけ。
僕の胸で泣きじゃくる君をそっと子供を守るように抱き締める。
その涙の理由が僕でなくても、今だけは僕が君を守らせて。
お題:本命
【670】
机の上にはチョコの山。
これは一種のイベントで、たいした意味はないんだよ?
級友たちの嫉妬が混じる視線に、心の中で言い訳する。
「先輩!チョコ受け取ってください!」
「男子にあげたら?」
「先輩の方がずっとカッコイイです!」
「・・・」
ああ、男子の視線が痛い。
お題:バレンタイン
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【666】
弓なりの三日月映る井戸の中
覗き込んだら後ろから
背なを押されてさかさまに
落ちてしまえばその先は
冥土へ続く暗い路
所々に曼珠沙華
紅く揺らいで咲く他は
荒地ばかりの殺風景
帰る道など見つからず
途方に暮れたら暗がりに
緑の瞳を探してごらん
運がよければ猫又が
帰る扉を教えてくれる
あとは見慣れた景色まで
振り返らずに行けばよい
お題:「井戸」、「弓」、「猫又」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
京都の六道珍皇寺の井戸は、地獄に繋がっているそうです。
小野篁がそれを通って地獄へ行って、閻魔様の裁判の補佐をしていたとか(^^;)。
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弓なりの三日月映る井戸の中
覗き込んだら後ろから
背なを押されてさかさまに
落ちてしまえばその先は
冥土へ続く暗い路
所々に曼珠沙華
紅く揺らいで咲く他は
荒地ばかりの殺風景
帰る道など見つからず
途方に暮れたら暗がりに
緑の瞳を探してごらん
運がよければ猫又が
帰る扉を教えてくれる
あとは見慣れた景色まで
振り返らずに行けばよい
お題:「井戸」、「弓」、「猫又」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
京都の六道珍皇寺の井戸は、地獄に繋がっているそうです。
小野篁がそれを通って地獄へ行って、閻魔様の裁判の補佐をしていたとか(^^;)。
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【665】
彼がふらりとその縁日に立ち寄ったのは、ほんの気まぐれだった。
旅の空で通りがかった神社の参道にいくつかの店が出ていて、近隣の村人が集まっている。それをふと目にしたからだ。
宿場ではないものの街道に近いせいか、旅姿のものもちらほら見かける。良くあることなのだろう。田舎にありがちな排他的な雰囲気は感じられず、垣根なく向けられる笑顔に心がふっと軽くなる。
そのせいか財布の紐もつい軽くなり、気がつけば出店で飴玉と握り飯につけものがついたもの、そして饅頭を買い込んでいた。
仕方なく座る場所を探して神社を囲む木々の間へ入り込むと、喧騒は少し遠くなり、鳥の声などがして妙に落ち着く。
「いいところだな」
彼は呟くと座り込み、握り飯を一口ほおばった。
「・・・うまい」
あっというまに一つたいらげる。そしてもう一つ食おうとして、そばの木の陰から何かがのぞいているのに気がついた。
「誰だ?」
殺気は感じないが、なにやら気配が妙だ、といぶかしげに問うと、恐る恐る顔を出したのは子供だった。
「なんだ、近所のがきか?」
「おじさん、剣客?」
「難しい言葉を知っているな。そんな上等なもんじゃねえよ。旅をしている浪人だ。何だ、坊主。何かようか?」
「・・・う、ううん」
子供は慌てて首を振るが、視線をたどって彼は苦笑した。
饅頭を穴が開くほど見ていたのだ。
「やたらめったら刀は抜かん。来いよ。饅頭、欲しいんだろう?」
親に買ってもらえる子供ばかりではないのは、自分の経験からわかっていた。
だから饅頭を差し出してそう誘うと、子供はおずおずと近寄ってくる。
「いいの?」
「ああ、いいさ。俺は握り飯で腹いっぱいだからな」
そう言って渡すと、子供はそれを受け取って嬉しそうに笑うとその場に座り込んだ。
「いただきます!」
彼は夢中で食べ始めた子供を微笑ましく見ていたが、背後になにやら見慣れぬものを見つけて、ほんの少し目を見開いた。
それはふさふさとした狐の尻尾だったのだ。
子供に気付かれないように驚きを隠しよくよく見れば、人の子にしては少々違和感がある。
きっと縁日の食い物のにおいに誘われたものの、金もなく見ているだけだったのだろう。その気持ちは痛いほどわかる。
「ごちそうさま!」
饅頭を食い終わった子供は、にこにこと笑って手を合わせた。
その口元についていたあんを指で拭ってやる。
「坊主、飴は好きか?」
「飴玉?好き!」
「じゃあ、もってけ」
「でも・・・」
「子供は遠慮なんかするもんじゃない」
ためらう子供の手に飴玉を握りこませると、彼は立ち上がって子供の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「じゃあな。今度はもうちっとうまく化けろよ」
「え?!」
「尻尾、見えてるぞ」
「ええっ?!」
慌てて後ろを確認する子供に背を向けて、彼はゆっくりと歩み去る。
「おじさん!ありがとう!ありがとうね!」
背後から追いかけてくる声に、軽く手を上げる。
その口元には笑みが浮かんでいた。
お題: 「縁日」、「饅頭」、「剣客」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
ちょっとうまく表現できない感じで、読みにくいと思います。申し訳ないです。
毎日書いてると、こんな日もありますなー(--;)。
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彼がふらりとその縁日に立ち寄ったのは、ほんの気まぐれだった。
旅の空で通りがかった神社の参道にいくつかの店が出ていて、近隣の村人が集まっている。それをふと目にしたからだ。
宿場ではないものの街道に近いせいか、旅姿のものもちらほら見かける。良くあることなのだろう。田舎にありがちな排他的な雰囲気は感じられず、垣根なく向けられる笑顔に心がふっと軽くなる。
そのせいか財布の紐もつい軽くなり、気がつけば出店で飴玉と握り飯につけものがついたもの、そして饅頭を買い込んでいた。
仕方なく座る場所を探して神社を囲む木々の間へ入り込むと、喧騒は少し遠くなり、鳥の声などがして妙に落ち着く。
「いいところだな」
彼は呟くと座り込み、握り飯を一口ほおばった。
「・・・うまい」
あっというまに一つたいらげる。そしてもう一つ食おうとして、そばの木の陰から何かがのぞいているのに気がついた。
「誰だ?」
殺気は感じないが、なにやら気配が妙だ、といぶかしげに問うと、恐る恐る顔を出したのは子供だった。
「なんだ、近所のがきか?」
「おじさん、剣客?」
「難しい言葉を知っているな。そんな上等なもんじゃねえよ。旅をしている浪人だ。何だ、坊主。何かようか?」
「・・・う、ううん」
子供は慌てて首を振るが、視線をたどって彼は苦笑した。
饅頭を穴が開くほど見ていたのだ。
「やたらめったら刀は抜かん。来いよ。饅頭、欲しいんだろう?」
親に買ってもらえる子供ばかりではないのは、自分の経験からわかっていた。
だから饅頭を差し出してそう誘うと、子供はおずおずと近寄ってくる。
「いいの?」
「ああ、いいさ。俺は握り飯で腹いっぱいだからな」
そう言って渡すと、子供はそれを受け取って嬉しそうに笑うとその場に座り込んだ。
「いただきます!」
彼は夢中で食べ始めた子供を微笑ましく見ていたが、背後になにやら見慣れぬものを見つけて、ほんの少し目を見開いた。
それはふさふさとした狐の尻尾だったのだ。
子供に気付かれないように驚きを隠しよくよく見れば、人の子にしては少々違和感がある。
きっと縁日の食い物のにおいに誘われたものの、金もなく見ているだけだったのだろう。その気持ちは痛いほどわかる。
「ごちそうさま!」
饅頭を食い終わった子供は、にこにこと笑って手を合わせた。
その口元についていたあんを指で拭ってやる。
「坊主、飴は好きか?」
「飴玉?好き!」
「じゃあ、もってけ」
「でも・・・」
「子供は遠慮なんかするもんじゃない」
ためらう子供の手に飴玉を握りこませると、彼は立ち上がって子供の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「じゃあな。今度はもうちっとうまく化けろよ」
「え?!」
「尻尾、見えてるぞ」
「ええっ?!」
慌てて後ろを確認する子供に背を向けて、彼はゆっくりと歩み去る。
「おじさん!ありがとう!ありがとうね!」
背後から追いかけてくる声に、軽く手を上げる。
その口元には笑みが浮かんでいた。
お題: 「縁日」、「饅頭」、「剣客」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
ちょっとうまく表現できない感じで、読みにくいと思います。申し訳ないです。
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【664】
黄昏に染まる頃、人目を盗んで畑から葱とか大根とかをこっそりいただく。
夕暮れにまぎれて人相はわかりづらいし、変わった格好をしていればあやかしと信じて逃げていくから捕まることもない。
一本二本なら動物に食べられたと思ってあきらめてくれる。
だから何日かに一度、拝借する。
実りのある季節であれば、代わりに栗やキノコ、薬草なんかを畑の持ち主の家の軒先に置いておく。
この辺りの森は深く、あやかしも多いから村の人は深く分け入ってこない。
だから森の奥のほうで採れるものを置いておくと、逆に喜ばれたりする。
「俺もあやかしだと思われてんだろうな」
呟きながら黒羽丸は村はずれの祠に足を向けた。
供え物を少しくすねるためだ。
仮にも神様に供えられたものだが、黒羽丸は祠の神からそれを許されていた。
「でも最近不作で少ないからなあ・・・あ?」
祠の少し手前で少年は足を止めた。もう日は落ち、名残りの夕焼けも消えようとしているのに、誰かが祠のそばに座り込んで泣いている。
それは女の子のようだったが、村では見たことがない。
よく見れば、旅姿だ。
「うええ・・・おっかあ・・・おっかあ・・・」
しくしくと泣く女の子は、もう辺りが暗くなってきていることに気付いていないのか泣くばかりで動こうとしない。
木の陰で様子を見ていると、祠の方から黒い影がひょいと飛んできて黒羽丸の肩に止まった。
「小僧、あれを何とかせよ」
小さな影は祠に祭られている神だった。神といっても元はここに封じられた風のあやかしだという。
「伊吹様、なんで人がここに居る?」
「あれの母親らしい女が、ここに置き去りにした。病んでおったようだからな、育てきれぬと捨てたのであろうよ。お前のようにな」
「・・・うるせえ」
黒羽丸は顔をしかめた。
彼も祠に捨てられた子供だった。
村人はあやかしを恐れ敬うが、外から来た人を受け入れることは嫌がる。それが人なのか、人の姿を借りたあやかしなのか判別できないからだ。それゆえ、村に子供を預けようとしても受け入れられず、泣く泣く祠で神にすがろうとしたのだろう。
そうだと思いたい、と黒羽丸は奥歯をかみ締めた。
「あれを拾うつもりか?」
神の問いに、黒羽丸は唇をゆがめた。
「伊吹様がなんとかしろっつったんだろうが」
「あれがお前のようにあやかしの気にあてられても病まずにおるとは限らぬぞ」
「ここにほっときゃ夜の内に食われるだろ」
「ほんにお前はあやかしに育てられたにしてはまっとうに育っておるの」
「うるせえよ」
そして、黒羽丸は木の影から祠へ歩み寄った。
「おい、おまえ!あやかしに食われたくなけりゃついて来い!」
女の子が驚いて顔を上げ、そして、勢いよく黒羽丸に飛びつく。
女の子はそのまま大声で泣き出し、しりもちをついた黒羽丸はそれを呆然と見つめていた。
ほんのりと花の香りがしてあたたかく柔らかい感触に、動けなくなった。
そういえば、物心ついてから初めて人に触れたのだと、頭の隅で他人事のようにそんなことを考えながら、女の子の涙を見つめていた。
お題:「黄昏」、「葱」、「泣く」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
葱って・・・妙に生活感が出て難しかったです。
いつも拍手ありがとうございます。
バレンタインとあやかしを絡めるのはむつかしいかなあと思案中。
時代物では無理っぽいけど、うちのやつらは現代まで生きているのであってもおかしくないとは思うんですけどね。
実際ボットでは、翡翠がチョコくれくれ言ってます(^^;)
チョコレートとあやかしか・・・。
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黄昏に染まる頃、人目を盗んで畑から葱とか大根とかをこっそりいただく。
夕暮れにまぎれて人相はわかりづらいし、変わった格好をしていればあやかしと信じて逃げていくから捕まることもない。
一本二本なら動物に食べられたと思ってあきらめてくれる。
だから何日かに一度、拝借する。
実りのある季節であれば、代わりに栗やキノコ、薬草なんかを畑の持ち主の家の軒先に置いておく。
この辺りの森は深く、あやかしも多いから村の人は深く分け入ってこない。
だから森の奥のほうで採れるものを置いておくと、逆に喜ばれたりする。
「俺もあやかしだと思われてんだろうな」
呟きながら黒羽丸は村はずれの祠に足を向けた。
供え物を少しくすねるためだ。
仮にも神様に供えられたものだが、黒羽丸は祠の神からそれを許されていた。
「でも最近不作で少ないからなあ・・・あ?」
祠の少し手前で少年は足を止めた。もう日は落ち、名残りの夕焼けも消えようとしているのに、誰かが祠のそばに座り込んで泣いている。
それは女の子のようだったが、村では見たことがない。
よく見れば、旅姿だ。
「うええ・・・おっかあ・・・おっかあ・・・」
しくしくと泣く女の子は、もう辺りが暗くなってきていることに気付いていないのか泣くばかりで動こうとしない。
木の陰で様子を見ていると、祠の方から黒い影がひょいと飛んできて黒羽丸の肩に止まった。
「小僧、あれを何とかせよ」
小さな影は祠に祭られている神だった。神といっても元はここに封じられた風のあやかしだという。
「伊吹様、なんで人がここに居る?」
「あれの母親らしい女が、ここに置き去りにした。病んでおったようだからな、育てきれぬと捨てたのであろうよ。お前のようにな」
「・・・うるせえ」
黒羽丸は顔をしかめた。
彼も祠に捨てられた子供だった。
村人はあやかしを恐れ敬うが、外から来た人を受け入れることは嫌がる。それが人なのか、人の姿を借りたあやかしなのか判別できないからだ。それゆえ、村に子供を預けようとしても受け入れられず、泣く泣く祠で神にすがろうとしたのだろう。
そうだと思いたい、と黒羽丸は奥歯をかみ締めた。
「あれを拾うつもりか?」
神の問いに、黒羽丸は唇をゆがめた。
「伊吹様がなんとかしろっつったんだろうが」
「あれがお前のようにあやかしの気にあてられても病まずにおるとは限らぬぞ」
「ここにほっときゃ夜の内に食われるだろ」
「ほんにお前はあやかしに育てられたにしてはまっとうに育っておるの」
「うるせえよ」
そして、黒羽丸は木の影から祠へ歩み寄った。
「おい、おまえ!あやかしに食われたくなけりゃついて来い!」
女の子が驚いて顔を上げ、そして、勢いよく黒羽丸に飛びつく。
女の子はそのまま大声で泣き出し、しりもちをついた黒羽丸はそれを呆然と見つめていた。
ほんのりと花の香りがしてあたたかく柔らかい感触に、動けなくなった。
そういえば、物心ついてから初めて人に触れたのだと、頭の隅で他人事のようにそんなことを考えながら、女の子の涙を見つめていた。
お題:「黄昏」、「葱」、「泣く」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
葱って・・・妙に生活感が出て難しかったです。
いつも拍手ありがとうございます。
バレンタインとあやかしを絡めるのはむつかしいかなあと思案中。
時代物では無理っぽいけど、うちのやつらは現代まで生きているのであってもおかしくないとは思うんですけどね。
実際ボットでは、翡翠がチョコくれくれ言ってます(^^;)
チョコレートとあやかしか・・・。
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【663】
笹原で、小者のあやかしたちがわあわあと騒いでいる。
中央には少し大きな鬼が、切腹する武士よろしく居ずまいを正して座っている。
「親分ー、切腹なんて馬鹿なことやめてくだせえよ」
「そうですよ。人の真似しなくてもいいじゃないですか」
小さめのあやかしたちがまとわりつくのを、鬼は振り払い、ぐっと涙をこらえる。
「影森の主の祠を人間に荒されたのは、俺の失態だ。死んでわびねば!雲間、介錯をせえ!」
「ひええええ、わしですかえ?」
雲間と呼ばれたあやかしは、驚きつつそばにあった刀のようなものをつかむ。
そこには何本か長物が置かれていたが、普段刃物など持たぬあやかしたちが人家で集めてきたのか、いささかおかしい。
天秤棒に木刀、雲間が握ったものは最近流行の竹刀のようで、刀など一振りもない。
「親分、人はもっとぎらぎら光るもんで斬るんじゃねえのか?」
言われてやっと気がついたのか、鬼はそれを見た。
そして、呆れた顔をした。
「あ?・・・お前ら、刀を持って来いっつったろ?これじゃあ斬れねえじゃねえか!」
「だって、びかびか光ってるかなんて、しまってあってわかりゃしませんよう」
「もうやめましょうよ。それより、親分が主様の封じられた石を取り戻してくださいよう」
小者たちに言われて、鬼はどっかりと足を崩した。
「これじゃあ作法どころか切腹もできねえじゃねえか。やめだやめだ!おう、てめえら!主様を探せ!申し開きは主様を助け出してからにするぜ!」
「まかせろ!」
「しばしお待ちを!」
小者たちは敬愛する親分が切腹をあきらめたことに顔を輝かせて散っていく。
それを眺めながら、鬼は頭をがしがしとかいて、あきらめたようにため息をついた。
「親分、あんたが居なくなったらわしらはどうする。主様が封じられている今、このあたりは良くないものがはびこっとる。力ない我等じゃ身を守れん」
「・・・雲間、うるせえぞ」
ごろりと横になって、鬼は目を閉じた。
主は暴れ者だった自分を配下にしてくれた。
その恩を返す間もなく封じられ、封印を守ってきたはずなのに人に荒され、封じた石を持ち去られた。
悔しかった。
面目なく、死んでわびようと思った。
「・・・主様を助けたら・・・止めるなよ」
「へえへえ」
雲間がくすりと笑うのを鬼は気付かぬ振りをした。
きっと助けたら主が止めると二人ともわかってはいたが口にはしなかった。
お題: 「介錯」、「竹刀」、「親分」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
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笹原で、小者のあやかしたちがわあわあと騒いでいる。
中央には少し大きな鬼が、切腹する武士よろしく居ずまいを正して座っている。
「親分ー、切腹なんて馬鹿なことやめてくだせえよ」
「そうですよ。人の真似しなくてもいいじゃないですか」
小さめのあやかしたちがまとわりつくのを、鬼は振り払い、ぐっと涙をこらえる。
「影森の主の祠を人間に荒されたのは、俺の失態だ。死んでわびねば!雲間、介錯をせえ!」
「ひええええ、わしですかえ?」
雲間と呼ばれたあやかしは、驚きつつそばにあった刀のようなものをつかむ。
そこには何本か長物が置かれていたが、普段刃物など持たぬあやかしたちが人家で集めてきたのか、いささかおかしい。
天秤棒に木刀、雲間が握ったものは最近流行の竹刀のようで、刀など一振りもない。
「親分、人はもっとぎらぎら光るもんで斬るんじゃねえのか?」
言われてやっと気がついたのか、鬼はそれを見た。
そして、呆れた顔をした。
「あ?・・・お前ら、刀を持って来いっつったろ?これじゃあ斬れねえじゃねえか!」
「だって、びかびか光ってるかなんて、しまってあってわかりゃしませんよう」
「もうやめましょうよ。それより、親分が主様の封じられた石を取り戻してくださいよう」
小者たちに言われて、鬼はどっかりと足を崩した。
「これじゃあ作法どころか切腹もできねえじゃねえか。やめだやめだ!おう、てめえら!主様を探せ!申し開きは主様を助け出してからにするぜ!」
「まかせろ!」
「しばしお待ちを!」
小者たちは敬愛する親分が切腹をあきらめたことに顔を輝かせて散っていく。
それを眺めながら、鬼は頭をがしがしとかいて、あきらめたようにため息をついた。
「親分、あんたが居なくなったらわしらはどうする。主様が封じられている今、このあたりは良くないものがはびこっとる。力ない我等じゃ身を守れん」
「・・・雲間、うるせえぞ」
ごろりと横になって、鬼は目を閉じた。
主は暴れ者だった自分を配下にしてくれた。
その恩を返す間もなく封じられ、封印を守ってきたはずなのに人に荒され、封じた石を持ち去られた。
悔しかった。
面目なく、死んでわびようと思った。
「・・・主様を助けたら・・・止めるなよ」
「へえへえ」
雲間がくすりと笑うのを鬼は気付かぬ振りをした。
きっと助けたら主が止めると二人ともわかってはいたが口にはしなかった。
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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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