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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【779】 大家

「待てよ!」
小弥太は橋の上で疲れた顔の少女を大声で呼び止めた。
「大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然って言うだろうが」
そう言って少女に歩みより、小さな匂い袋を少女の手に落とす。
「・・・これ」
「大事なもんなんだろう?一人で探してねえで頼れっつってんだよ」

「橋の上」、「匂い袋」、「店子」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
若い大家と、親を亡くした控えめな町娘の話。


【780】 鎌鼬

「そんなにボクの正体が知りたい?」
絡んできた高校生に笑って見せたら胸ぐらをつかまれる。
「んだとコラァ」
「あーあ、触れちゃった」
ボクの声と共に奴の手首がすっぱりと斬れた。紅い飛沫と叫びが路地裏に溢れる。
「これでわかった?鎌鼬に喧嘩売っちゃダメだよ」

書き出し拝借:神威鴉魔さま。
人間の姿をしているかまいたちの話。


【781】 誕生

微かな光が闇を照らす。
暗闇に慣れた目には眩しすぎるその光。
でも、僕は思わず手を伸ばす。
まるでそれに導かれるように。
伸ばした指に触れたのは温かい感触。
これが欲しかったのだと悟り離さないように力を込めて。
そして。
「よく怖がらずに生まれてきたね。ようこそ」

僕の生が始まる。


書き出し拝借:葵さま。
生まれてくることは冒険の第一歩。


【782】 願い

もしも願い事がひとつ叶うとして、それが一生で一番の願い事だなんてわかると思う?
大事にとっておいたって、たぶんつまんない些細な願い事をうっかり叶えちゃってそれでおしまいに決まってる。
だったらすぐに使うべきだよね。
「君が幸せでありますように」

書き出し拝借:ハルくんさま
願いはただひとつ。


ご訪問、拍手ありがとうございます。
桜の木の話、ブラタモリ見ましたwww
もとから知ってはいたんですが、やはり、壮大ですよね。
そして、あれはいい番組だと思います(^^)


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【778】

 花街に文字通り桜が咲き誇る時期になった。
 もとから植えてあるのではない。この季節、俗世を忘れて遊んでもらうために、わざわざ大きな通りの両脇に満開の桜を植えるのだ。
 花が咲いている間だけ桜の並木の方を運んでくるという大掛かりな仕掛け。
 それが桜には迷惑かもしれないと思っても、かむろの香野(こうの)は楽しみで仕方なかった。
 香野はまだ幼い。
 この花街に売られてきて三年。今は白藤太夫のかむろとして雑用をしている。
 雑用であってもこの街から出られないことに変わりはなく、桜を見たければ向こうから来るのを待つより他はないのだ。
 桜の花びらが舞う春の風を感じて外を眺めていると、聞き覚えのある声が降ってきた。
「よお、ぼーっとしてどうした?さぼってんのか?」
 気付くと窓の外には燕が一羽。
「飛来!」
 驚いて呼びかけると、燕はぽわんと少年の姿に変化(へんげ)した。
「よ、半年ぶり?ちったあ、オシトヤカになったか?」
「う・・・うるさいよ!香野はもう立派なかむろです!」
「その調子じゃまたおっちょこちょいが失敗して太夫に怒られてんだな」
 にやにや笑う燕のあやかしに、香野は頬を膨らませたが、すぐにこらえきれずにふきだしてしまった。
 春になると顔を出し、旅の話をしてくれるこの燕がどうして自分にだけ見えるのかわからない。だが、なにかとかまってくれる燕のあやかしが、香野は好きだった。会いに来てくれたことが嬉しくて、仏頂面などしていられない。
「今はちょっと時間があるの。桜餅もらったんだ。食べる?」
「いいのか?じゃあ、ちょっと邪魔するかな」
 いそいそと窓から入ってくる飛来の髪に花びらがくっついているのを見つけて、香野は思わず微笑んだ。
 今年も桜と燕が、香野に春を連れて来てくれた。
 それが嬉しかった。

お題:「花街」、「桜餅」、「燕」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
春!なお題が出ましたねえ。


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【776】 寒い朝

それは、音すらも凍ってしまったような寒い冬の朝だった。いや、ちょっと待て。外に出た俺はしんと静まった世界に違和感を感じた。口を開けて声を出してみる。凍った音が宙で砕けて、ダイヤモンドダストのように朝日を受けてきらきらと舞い散る。本当に寒い朝の出来事。

【777】 機械的な彼女

「スキャン開始……体温三六.四度、異常なし……問題は見つかりませんでした」淡々と告げて彼女は額に当てていた手を外した。機械の彼女は人間らしさが希薄だ。「でもつらい」僕が言うと首を傾げる。「異常はないですが」君に心を教えるにはどうすればいいんだろうね。


書き出しをお借りして二編。
たいてい「あ、書きたい!」と思った人はフォロワーさんだっていうところに、気が合うというか、趣味が合うというか、絆を感じてしまいますね(^^)。


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【774】 いざ

刀をかまえる。不要な力を抜き、視線をぴたりと相手に合わせる。もう失敗は許されないのだという思いが煽る焦りを圧し殺す。「いざ」呟きを合図に、思いきって降り下ろした。そして。「だああ、つぶれた!」「だから食パン切るときは手を添えろって言ったっしょ!」

書き出しをお借りして。
刀を構えているつもりになるほど緊張してたって感じで(^^;)。


【775】 言霊

言霊を操る者はそこに願いを込めるだけである程度の事象の変化を可能にする。だが万能ではない。俺は窓の外を眺めて悩んでいた。外は嵐。天気をどうにかできる力などないのに、同居する幼いあやかしは期待に満ちた目で俺を見上げている。そんな目で見られても、無理なんだがな。

お題:『嵐』と『言霊』、登場人物が『悩む』というお題でツイノベを書いてみて下さい。 #twidai000 http://t.co/rUMTC6WA
なんか書いてて気に入った設定。
自分の能力のせいでちょっと人間嫌いだった言霊使いの青年が、小さいあやかしと関わることで気持ちが柔らかくなる話、てのが書いてみたいです。


ご訪問、拍手ありがとうございます(^^)。


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【770】 悪戯狐

飛脚が一休みしようと足を止めたのは、寂れた稲荷の社だった。薄暗く、苔むした狐の像が不気味だ。と、そう思った飛脚は目を疑った。狐の目が光り、口がにたりと笑ったのだ。震えて立ちすくむ飛脚の脇を風のように少年が駆け抜けた。竹刀が狐に命中する。「痛ぇ!」狐が叫んだ。

お題:「稲荷」、「竹刀」、「飛脚」で創作しましょう。 #jidaiodai http://t.co/evQperRL

【771】 空の彼方

君は翼を持っている。遠く、遠く、どこまでも飛んでいける。高く、高く、空を舞うことができる。だからどうか、どこまでも行って。君が行けるところまで。君が目指すところまで。僕はここで、君が行く眩しい空を眺めていよう。

【772】 鎮魂

時間の流れがゆっくりすぎなのだ。我は我の本体である木を見上げた。それが我の時間であるとわかっているが、それでも人ははかなすぎて、まるで夢のように我を置いてゆく。我に愛を告げたあの男もまた然り。静かに進む彼の葬列に、我は涙の代わりに花びらを降らせた。

書き出しをお借りして。

【773】 黒猫

闇を切り取り、蛍火を嵌め込んで、黒猫を作った。
僕だけの、僕の気持ちを君に伝える黒猫を。
だけど、黒猫はするりと僕の手をすり抜けるとどこかに走っていってしまった。
蛍火の瞳だけを輝かせて、自由気ままに闇の中。
僕の揺れる思いのように居場所を定めず歩き回って、捕まえることなんてできやしない。
そうだよね。
真っ直ぐ走っていけるなら、黒猫に頼ろうなんて思わないもの。
ごめんね、と呟いたら、黒猫はそっと僕に寄り添って尻尾をくるんと足に絡めた。
一人じゃないよと言われた気がした。

自分提供の書き出しで。


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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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