宵月楼－しょうげつろう－

【870】

目を塞ぎ、口を塞ぎ、耳を塞いで待っていたって、誰も解放などしてくれない。その戒めは自分で課したものだから。それでも音も光もない世界で、あなたが必要だと誰かの手が差しのべられる甘やかな夢を見ている。いつまでも、いつまでも。

【871】

凍りついた僕に熱をくれる君はもういない。僕の代わりがいるんじゃない。僕はその他大勢だっただけ。君の特別にはなれなかっただけ。僕だけが今も君を求めて流した涙で凍り付いている。

【872】

どうでもいい人だったら、どんな風に接するかで悩んだりしないよ。

【873】

高い塔の上に閉じ込められたまま、下を見ても雲が視界をふさいで、上を見てもよそよそしい空がかわり映えなく広がって、羽のない子供はいつまでもどこにもいけやしない。いつかひとりぼっちになったなら、空へ飛び込む？雲に手を伸ばす？

【874】

僕の心の一番近いところに、ちくんと刺さってるトゲが抜けない。もしかしてそこから生えた蔓薔薇が心を絞め殺すまで消えないんだろうか。そうなったら、薔薇の花びらを撒き散らして死ぬんだね。それも、悪くないな。


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