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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【804】

 仙人というと、もっとじいさんだと思っていた。
 俺は目の前で茶を飲む女の子を見つめてそんなことを考えていた。
「何を考えておるか、当ててやろうか?」
 伏せていた目を片方だけ開いてちろりと俺を見ると、彼女はそんなことを言った。
「どうせじいさんじゃないとか考えておったのであろう?外見などあてにはならぬぞ。我らは好きな外見をとれるし、時と場合に応じて変えるでの」
「そうですか。女の子の姿になんの利点が?」
「ああ、これは趣味じゃ」
 そうですか。
 年を食っていると、どうにも人をからかう悪い癖がつくらしい。
 俺は気を取り直して姿勢を正した。
「で、仙人が俺に何のようですか」
「それじゃ」
 仙人は湯飲みを置くと、懐から筆を取り出した。よく手入れされているが、ずいぶんと古いもののようだ。柄の部分には何やら紙が貼られている。
「これを預かってくれぬか?」
「筆ですか?」
「筆じゃ」
「どうして俺が?」
 貼られているのは札だろう。となれば、危ないものが封じられているか、これ自体が危ないものなのだ。
 だが俺はといえば、普通の筆屋でしかない。仙人の訪問を受けることも初めてなら、こんないわくありげな品を押し付けられるのも初めてだ。
「ある者から勧められての。筆は筆屋に預けるが目立たぬと。また、お前の気性ならば、粗末に扱うこともないとな」
「誰ですか、そんなことを言いやがったのは」
 ぼやく俺にふふっと笑って、仙人は立ち上がった。
「ほんの数日でよい。できるだけ早う取りに来る」
「はあ」
「それとな」
「はい?」
「札は剥がすなよ。これは雷を呼ぶ性を持つ」
 何だって?
 問い直そうとしたときには、仙人の姿は消えていた。
「冗談じゃねえぞ、おい」
 俺の声に答えるように、筆がかたりと音を立てた。


お題:「雷」、「筆」、「仙人」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578

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朝まだき HOME 春の両端

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オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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