宵月楼－しょうげつろう－

【604】

深い闇夜にしゃなりと清らかな音が鳴る。
祓い師は、呪を編みこんだ紅き組紐を手繰る。
紐は邪を縛り封じ、先に繋がる鈴の音は邪を祓う力を持つと言われる。
だがそれも、まずは目の前の鬼に紐が触れねば意味はない。

なぜなら、この祓い師はまだ力が足りぬ。

だから、鬼は嗤う。
これは逆しまの鬼ごっこだと。
さあ、手の鳴る方へ来るが良い。
その手で触れて捕まえてみよ。

捕まえるまではその目は我しか見ぬであろう、という呟きは、必死な祓い師の耳には届かなかった。
 

お題：「闇夜」、「組紐」、「鬼」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578


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【603】

おじさんは最近禁煙してる。
「えらいね」というと「なんだ、こんなことくらいで。ガキじゃねえんだぞ」とちょっと口を尖らせる。
その仕草がガキくさいとか思わないのかな。
でもそれが自分のためだと思うと嬉しくて、でも恥ずかしくて茶化しちゃうんだから、こっちもおんなじかな。

おじさんというと無精ひげでタバコのイメージなんですが、人によっては執事風だったり、もっとスマートなイメージの人もいるんでしょうね。
すみません、むさくるしくて（＾＾；；；）。


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【602】

雨の音がだんだん消えて、窓の外は白くなっていく。
温かいお茶を入れた君が、僕にカップを渡してくすりと笑う。
「猫又が寒がりじゃ変？」
僕は少しすねて呟く。
人の姿でいたって寒いものは寒い。
そしたら君がきゅっと抱きついた。
確かにこれなら温かい。
でも離せなくなっちゃうよ？

お題：「雨」、「茶」、「猫又」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578

メンテが大幅に長引いてアップする時間がないですよ（＞＜）。
ついのべでお茶を濁します。すいません。

拍手ありがとうございます！
犬もいいんですけど、何故か猫は書きやすいんですよね（＾＾；）。


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【600】　慌てんぼうのサンタクロース

慌てんぼうのサンタクロースがうちに来た。
「一週間間違えてるよ」
首をかしげて言うと、サンタは笑って首を振った。
「一週間後じゃ遅いだろう？なあ、猫君」
「僕のために来てくれたの？」
「そうだよ」
そこで目が覚めた。
僕は人間になっていた。
それが君のための僕の願い事だった。



【601】　冬の午後

静かな時間。
やかんにお湯の沸く音。
紅茶の香り。
外の風は少し強いかな。
でも音がどんなにひどくても、ここはぬくぬくとあたたかい。
僕はのんびり寝てるけど、ちょっと飽きて見上げると、君はあきれたように微笑んで、僕の頭を優しく撫でる。
なんだか、すごく幸せな冬の午後。



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【559】

付喪神になりたての根付の兎は、最近なんだか元気がでない。
体が冷たくて、かたかた震えて、縮こまって動けなくなる。
病気かな。死んじゃったらどうしよう！
泣きべそで犬神の着物にしがみつくと、犬神は、馬鹿だなと笑って外を指差した。
白い物が舞っている。
初めて見る雪だった。

お題：初雪
各地で雪の話題が聞かれたので、初雪で一編。
根付兎は結構時節物が多いのと、数があるので、一度十二ヶ月になぞらえて並べて、豆本でも作りたいなあ。
一番向いている気がするので。
他に題材にするなら、猫視点のものかな。

いつも拍手ありがとうございます。
励まされます(^^)。


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