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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【634】

「親分、親分」
 神社を通りがかった十兵衛親分は、声をかけられて足を止めた。
 周りを見回しても、人影はない。
「親分、こっちですってばよう」
 小さな声を頼りに探せば、それは神社の社殿の床下から聞こえてくる。
 覗き込めば、小さなあやかしが影から顔だけ出していた。
「お?豆腐小僧じゃねえか」
「親分~っ!」
 人の膝ほどの背しかない豆腐小僧は、手に持った豆腐を落とさないように持って、スネのあたりにしがみついてきた。
「なんだ、どうした」
「ちょっと用事があって外出したら、猫に追いかけられて迷っちゃったんです~」
 普段からあやかし絡みの問題に振り回され、あやかし専門の岡っ引き扱いされている十兵衛親分は、できれば持ち込まれる厄介ごとはできるだけ少なくしたい、と常々思っているのだ。
 だが、豆腐小僧が情けなくべそをかいて訴えるものだから、結局放っておけなくなってしまった。
 これを放っておくのは、さすがに心が痛む。
「しかたねえなあ。長屋まで連れてってやるよ。おら、肩乗れ」
 豆腐小僧は花をすすると、嬉しそうに笑って十兵衛親分の体をよじ登った。
「じゃ、行くか。豆腐落とすなよ」
「はい!親分!」
 まあ、しかたねえやな。ほっとけねえ性分なんだから。
 親分は苦笑して、肩車した豆腐小僧をあまり揺らさないように、ゆったりと歩き出した。


お題: 「神社」、「豆腐」、「岡っ引き」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
しまった。なんだか十兵衛親分が大人っぽい。
まだ十五くらいの設定なんですが。
多分、豆腐小僧に頼られて兄貴みたいな気分になっちゃったんでしょうね(ということにしておきます ^^;)


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ついのべデーお疲れ様でした。
具体的な単語だと発想が限定されてしまうのは、やはり、まだまだ想像力が貧困なのかなあと思ってしまいます(^^;)。
昨日載せられなかった分を一個だけ。

今月のお題は【試験】です。

【633】


これは大丈夫。あれは少量だけ。こっちは絶対使えない。
僕は真剣に薬草とにらめっこする。
薬師の試験は薬草を見極めることから始まり、調合から投薬方法まで完璧じゃないと合格しない。
「知識は完璧だが、ひとつだけ足りんな」
「あ・・・笑顔」
「そう、合格だ」



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本日ついのべデーにて、随時更新。
今月のお題は【試験】です。

【631】


これを逃したら試験の機会は当分訪れない。
雨師、風伯、雷公はとても長い時を生きるから、座が変わることは数百年に一度なのだ。
この土地の風伯の座を得ようと思うなら、この試験は落とせない。
私は唇をかみ締めた。
絶対、あの人に春のそよ風を届けるんだ!

【632】

僕は書き続ける。
時には書いたものが僕を傷つけたり、思ってもいないことを書いてたり、読むのが嫌なほど下手だったり、書けなかったりするけれど、それはきっと書きたいと思った一番最初の気持ちを思い出すための復習の小テストみたいなものだと思うんだ。



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 【630】

 屋敷の最奥に忘れられし鏡。
 布をかけられたまま磨く者も映すものもなく、動かぬ時間を数えることすらないままに、朽ちていくのだと諦めて。
 この身が物であるならば、何故虚しさを感じるのか。
 ふとそんな思いが眠りの合間に陽炎のように立ち上っては、答えをつかむ前に消えていく。
 だから、突然吹きつけた風も、なにかの幻のように思っていた。
 布越しにきらめきを感じ、風に布が吹き払われる。
 開けた視界に映った部屋は記憶よりも古びて、それでも開け放たれた襖から差し込んでくるそれが、日の光であると、やっと気付いた。
「意外と物が残ってるもんだな。お袋の道具かな」
 そう言いつつ振り返った浪人風の男の言葉で、彼が持ち主の息子であると気付く。
 すっかり大人になってはいたが、確かに笑んだ目元に面影が残っていた。
 この身に姿を映しては、はしゃいでいた子供。
 時間が動き出す。懐かしさが溢れ、同時に自分がどれだけ孤独だったのかを悟る。
 その、もう二度と味わいたくない虚無の時に体が震える。
 だから、彼が近づいた時、それを伝える姿を欲した。
「・・・もう一人にしないで」
 彼の手をつかむ自分の白く細い指が見える。
 こちらを驚いて見つめる彼の目に、泣きそうな少女の姿が映っている。
 それは、初めて見る自分の姿だった。


お題:「屋敷」、「鏡」、「浪人」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578

初めて人の姿になった鏡の付喪神。


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 【629】

 山あいの隠れ里では、早朝、とろりと濃い霧が村を包み込む。
 俺はその霧に濡れるのもかまわず、大きな枇杷の木の根元に寝転んでいた。
 見上げれば、寒空の下でも健気に枇杷の花が咲いている。
 それはまるで霧をそのまま固めたように白く可憐で儚げに見える。
 だが、それは寒さをものともせず、目立たないがしたたかに咲き誇り、やがて温かな太陽の色の実を成すのだ。
「・・・まるであいつのようだな」
 ぽつりと我知らず零れた声が合図であったかのように、霧を裂いて小柄が飛んできた。
 それを右手を軽く持ち上げ、指の間にしっかりと挟んで止める。
 まったく。
 この霧の中をわざわざ出迎えに来てやったのにこの仕打ちだ。
「帰還の挨拶にしちゃ、あぶねえじゃねえか」
 霧の向こうにそう声をかけると、旅姿のあいつが姿を現した。
 俺の指にはさまれた己の小柄を見て、軽く眉をひそめる。
「また止められた」
「当たり前だ。止めねば、怪我をするだろうが」
 俺が苦笑して小柄を返してやると、悔しそうな表情でそれを受け取る。
 幼い頃にした「いつでも一本取りに来い」という約束を、ことあるごとに実行するのは困ったものだ。
 だが。
「おかえり」
「ただいま」
 昔は泣き虫で鈍くさかった幼馴染は、もういっぱしの忍びの顔をしていた。


お題:「霧」、「小柄」、「枇杷」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
今日はあやかしではなく、忍風味です。
お題の「枇杷」を調べたら、花期は冬だそうなのでそこから連想してみました。


ご訪問、拍手ありがとうございます。
瑠璃丸に「おすわり!」って言いたいと聞いて、ついボットの反応語に「おすわり」を入れてしまいました(^^;)。


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HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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