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宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

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【703】 水面(みなも)を何度覗いても

水面を何度覗いても、もうそこに君の姿は映らない。魔法は消え失せて、僕らの距離を縮めていた奇跡はもう起こらない。そうなって初めて僕は君がどこにいるのか知らないことに気づく。だからやっと僕は立ち上がり歩き出した。幻ではない君を探すために。この手で君に触れるために。

お題:お題は『にぎやけし大通りの裏側・水面(みなも)を何度覗いても・俺を誰だと思ってる・なにこの消し炭・最後の第一歩』です http://t.co/OzqpAdbH より。
声を交わせても姿が見えても幻のような関係。


【704】 現在(いま)

君が元気なのを垣間見るだけで僕は十分なんだ。
今でも泣いている君を見ると胸が痛むけど。
本当は笑顔だけじゃなく涙も怒りも全部包み込んであげたかったけど。


【705】 不意打ち

「何考えてんの?」
くわえてるのは電子タバコ。
コーヒーは量を減らした。
最初はただのおじさんだと思ってたけど、一緒に働いてるうちにあたしの言葉がおじさんを変えてることに気づく。
でも、ちょっとにやっとして「この年齢(とし)で君を好きになっていいのかな?」って言うのは反則!

お題:『この年齢で君を好きになっていいのかなって』or『指が、エロい 』【穏やか】 #kuroyagi http://t.co/aZ8NJ49D より。
診断メーカーのお題にもオジプラスの波が!(^^;)


ツイッターで発信するのは短くて手軽でつい数が増えてしまいますね(^^;)
時々まとめて載せますので、ご了承くださいw


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【702】

「瓦版屋!」
 呼ばれて振り向くと、そこにずいぶんべっぴんの娘が立っていた。
 だが、酔狂なことに娘は若い武者の格好をして、腰に刀まで差している。町娘ならこんな格好はしない。武家の、しかもある程度裕福で、嫁にいくことを急かされていない娘だろうと俺はあたりをつける。
 商売がら、なんにでもついそうやって探る癖がついている。
「何かご用で?」
 娘は先程まで俺が配っていた瓦版を、問うた俺の目の前につきだした。
 ある長屋で起きた神隠しのねただ。いなくなったのは、半年前に越してきた浪人。残されていたのは紅葉の彫り込まれた小柄(こづか)とそれに縫いとめられた一枚のお札。血の跡もなく、多少部屋は荒れていたものの物盗りでもないらしいということで、神隠しではないかと俺が書いたものだ。
「ここに書かれていることは真実か?」
「瓦版屋を捕まえて真実かと問いますかえ?」
 多少の誇張はあるにせよ、基本は真実だ。ましてや俺は同心の旦那と顔馴染みだ。情報源はお墨付きだぜ。
「仮名草紙を売ってるつもりはありませんぜ?事実しか書いちゃいませんや」
「では、この紅葉の小柄のことも」
「疑うなら、八丁堀の同心の旦那にお聞きなせえよ」
 うんざりと返事をしたときだった。
 娘は急に俺に駆け寄ると、両の二の腕をがしりとつかんだ。
 剣術をやっているからか、力はひどく強い。
「あいててて!」
 思わず声をあげた俺に驚いて娘は手を離すと、自らを落ち着かせようとしたのか、深呼吸をした。
 そしてもう一度俺に向き合うと、今度はしっかりと目を見た。
「私をその長屋に連れていってはもらえぬだろうか」
「へ?浪人さんの縁者でいらっしゃるんで?」
 俺の言葉には答えず、娘は深く頭を下げた。
「頼む!」
「・・・まあ、それぐらいならさしてもらいますがね」
 娘の顔が明るくなった。笑うと結構可愛らしいねえ。
「ありがとう!恩に着る!」
「へえ、まあ、使い賃は、いろいろ話していただくってことで」
「何?」
 俺の言葉に目を見開いた娘に、俺はにやりと笑って見せた。
 瓦版屋をなめちゃいけねえやな。

 件の長屋に向かう道すがら、娘は嫌々だろうが少しだけ話をした。
 浪人は家を出た兄ではないかと思っているのだという。
「兄は紅葉の小柄を持っていた」
「はあ、小柄は奉行所ですぜ?」
「いや、兄がいた場所を見たいのだ」
「左様で。ああ、こちらですよ」
 それはありふれた長屋だ。井戸の所には神隠しを調べるうちに仲良くなった女衆が今日も喋っている。
「あれ、瓦版屋さんじゃないの」
「久しぶり」
 これでも受けはいい方だ。愛想よく挨拶して、俺は浪人がすんでいた部屋の戸を開けた。
 まだ道具が残っている。一振りだけだが刀すら。
 前に人のいい大家が半年くらいは待ってみると言っていたのを思い出す。畳には小柄の刺さっていた跡が残っている。
「道具はそのままだそうですぜ?どうです?お兄さんですかえ?」
 同心の旦那は身元がわからないと言っていたし、これでわかれば旦那に恩が売れるよな、と思っていた俺は、次の瞬間、驚いて息を止めた。
 娘の姿が陽炎のように揺らいでいる。
 髪がうねり、瞳は紅く輝いている。
「兄上!お迎えに上がりました!札を避けられたなら、まだここにおられるのでしょう?」
「・・・昼日中に呼びおって。もうここには居られぬではないか」
 若い男の声がした。
 刀がぼんやりと輝いたかと思うと、形を失い、人の形になった。
 娘によく似た、若い男だ。
 それを見る娘の瞳から涙がこぼれ落ちたのを見て、探していたのは彼なのだと理解する。
「祓い屋の目をくらますために深い眠りにつかれたのはわかっておりました。私が呼び覚まさねばならぬと思い、お探ししておりました」
 そして俺の方を見て、娘は深々と礼をした。
「巻き込んですまない。許されよ」
 声が終わらぬうちに、首の後ろに衝撃を感じる。すうっと意識が遠ざかる。気を失う寸前、娘が頭を下げたのが見えた気がした。

 気がつくと、俺は番屋に寝かされていた。
「おう、起きたか。命があってよかったな」
 旦那は笑って茶を入れてくれた。
 聞けば、なかなか出てこないことを不審に思ったおかみさんたちが覗き込むと、俺だけが倒れていて一緒に来た女の姿はなかったのだという。
「刀がなくなっておってな。物盗りの女だったんだろう。口を封じられなくて運がよかったんだぜ」
「ご迷惑おかけしました」
「ああ、気にすんな。今日はさっさと寝ちまいな」
「そうさせてもらいやす」
 茶を飲み干して俺は立ち上がった。
 外に出ると、息が白くなる。
 真相はわかった。だが、瓦版にゃ書けねえなあ、と俺はため息をついた。
 あまりに荒唐無稽な事実は、作り物だと思われて今後の商売に支障をきたす。
「ははっ、結局丸損だな」
 まあ、たまにはそんな体験も悪くねえさ。
 べっぴんのあやかしは恩返しに来るだろうか?などとつらつら考えながら、俺は家路についた。


お題:「瓦版」、「小柄」、「武家」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
瓦版屋の長い一日(ほとんど気を失っていた時間w)
小柄は、手の中指の先から手首くらいの長さの小さな刃物です。時々時代劇でお侍が悪人に投げますね。
瓦版の内容の真偽については、想像です。
うちの瓦版屋がこんな風なだけかもしれません(^^;


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【701】 

 星空が頭上に広がっていた。
 ちゃぽん、と音がして丸いものが水面に浮かぶ。それは河童の頭だった。河童は浮いたまま、ぽつりと呟いた。
「あー、綺麗だなあ」
「そうですなあ」
 岸辺から応える声がする。
 草の中に隠れるように座っていたのは豆腐小僧。
 両手で持っている盆には真っ白い豆腐がふるふると揺れている。
「住み処離れてうろうろしてるなんざ珍しいなあ。豆腐が崩れるから、遠出嫌いじゃねえの?」
「・・・そうですなあ」
 豆腐小僧は空を見上げて、ぼうっとしたまま生返事を返す。
 河童は首をかしげ、やがて、理由に思い至る。
「お絹ちゃん、輿入れだったっけか?」
 豆腐がふるんと揺れた。
「ざる豆腐小僧・・・北陸の方だっけ?」
「はあ・・・綺麗でしたなあ・・・」
 豆腐小僧は星を見上げたまま、ぽつりと呟いた。
 幼なじみの嫁入りを見送りここに一人で来たは、色々溢れる思いを捨てに来たのか。それとも・・・。
 ま、いいさね。
 奴も男さ。
 自分でケリをつけにゃならねえ思いも、時にはあるさ。
 河童は水面に浮かんだまま、自分も視線は空に向けた。
「綺麗だなあ」
「・・・そうですねえ・・・」
 それきり黙って、二人は星を眺めていた。


お題:「星空」、「豆腐」、「河童」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578

豆腐小僧の幼なじみは絹豆腐のお絹ちゃん。
地方から出てきたざる豆腐と所帯をもって、ざる豆腐の在所へ行くようです。
なぜかドラマチックになっちゃった豆腐小僧www

Twitterのフォロワーさんに箱ドットのアイコンを作っていただきました♪
前に翡翠をいただいていたんですが、猫又だと言うことで尻尾二本バージョンと、琥珀と瑠璃丸も!
ありがとうございます(^^)
愛されてるなあ、お前ら。

翡翠尻尾二本バージョン


琥珀


瑠璃丸



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【699】 男子の懇願

「冬に女子にズボンを許す代わりに、男子も夏にスカート履かせて下さい!」
「一理ある」
「だろ?!」
「とでも言うと思ったか!男子がスカートなんかはいてみろ。すね毛やら筋肉やらが見苦しいだろうが!」
「剃るから!俺たち、剃るから!」
「何でそんなに必死なんだよ・・・」

【700】 嘘つき

「僕は嘘つきだ。だから、僕の言葉を本気にしちゃダメだよ。好きだって言ったのも嘘だったんだよ。君のことなんか最初から好きじゃない」
君を泣かせたとしてもそれは必要な嘘だった。
君が去って僕は一人。
笑って、これも嘘だよ、って言えたらどんなによかっただろう。
ごめんね。

お題:『冬に女子にズボンを許す代わりに、男子も夏にスカート履かせて下さい。』or『これも、嘘だよ 』【わがまま】 #kuroyagi http://t.co/aZ8NJ49D
ここの診断メーカー、最近ギャグっぽいです(^^;)。

ついのべたまっちゃって、どう載せようかと四苦八苦です。馬鹿みたいに量産するから・・・orz


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【698】

 屋根の上で蜜柑色の三日月を見上げていると、烏天狗がばさばさと空から舞い降りてきた。
「よう、犬神のダンナ。今日はまたやけにおとなしいじゃねえか」
 人の姿の烏天狗は、ちょこんと俺の横に座り込む。
 口は悪いが修験者の格好をしたこのあやかしはどう見ても十そこそこの童の姿で、きりっとした目元や生意気そうな口を置いておいても案外可愛らしい。
 それを言ってつつかれるほど趣味は良くないから何もいわぬが。
「お前は俺を何だと思っているのだ。そう始終刀を振り回したりはしておらぬ」
「そうかい?この間はなにやら酔っ払って猫又とケンカしてたそうじゃないか。壁に大穴開けたって?」
「・・・うるさい」
 あれはこいつの兄貴分である天狗のやつが悪いのだ。
 俺は強いほうだと思うが、やつはザルよりひどいうわばみで、おかげでしこたま飲まされた俺は、どうやら長屋で酒臭いと文句を言った翡翠と喧嘩をしたらしい。
 翌日俺たちは琥珀に久しぶりに怒鳴られ、壁の穴を直さねばならなくなった。
「これが江戸の長屋住まいだったら、きっと一棟ぶち壊して大家泣かせてただろうなあ」
「黙れ」
「へいへい」
 烏天狗はにやにやして懐からだまって包みを取り出した。
「なんだ?」
 開けるとやっと出たばかりのたらの芽が入っている。
「どうしたのだ?」
「天狗のアニキがよ、悪かったって。わびの品だってさ」
「そうか」
 大柄で豪放に見えるが、意外と神経の細かいいい奴なのだ。
 それゆえ良く憂さ晴らしの酒の相手をさせられるのだが。
「そういえば、もらい物の大根だの白菜だのがあったな。持ってゆけ」
「え?いいよ。おいら使いで来ただけだし」
「では、天狗に使いをしてくれ。また酒を飲みに山を降りて来いと伝えてくれるか?土産はその駄賃だ」
「んじゃ、ありがたく」
 烏天狗が笑う。
 俺は立ち上がると屋根から軽々と飛び降りた。
 何か童が好きそうなものも持たせてやれないか、と思案しながら。


 お題:「三日月」、「蜜柑」、「大家」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
農家のかやぶきの屋根に座り込んでしゃべる瑠璃丸と烏天狗の坊主。
寒いのは平気なので、日が暮れたころ、三日月に見守られつつのんびりと。
三月ですね。
もうすぐ春。そろそろタラの芽やふきのとう、梅の話題が聞こえてこないかな。
桔梗堂も三月からは春めいて、のほほん、ほのぼのモードで行きたいと思っております。
最近切ないの多かったし(^^;)

拍手、ご訪問ありがとうございます。
そのカウンターや拍手がとても励みになってます。
そういえば、昨日の。
瑠璃や琥珀や翡翠でにやにやしていただけて、本望です♪


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オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
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