忍者ブログ

宵月楼-しょうげつろう-

あやかし風味。ミステリー皆無。恋愛要素多少混入。

[358]  [357]  [356]  [355]  [354]  [353]  [352]  [351]  [350]  [348]  [347

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【805】

 朝焼けが空を染める。
 少しまだ肌寒い空気を吸い込んで、妖狐の琥珀は空を見上げた。
 朝焼けは天気が悪くなる前兆と言うが、その茜色は不吉と言うには美しく、どこか物悲しいが暗くはなく、思わず笑みを浮かべるほどには琥珀はその色が気に入っていた。
 むしろ、雨になる前に一時目を楽しませてくれる粋が、いいではないか。
「おはようございやす」
 低い声に目を戻すと、強面の豆腐売りが天秤棒を担いで歩いてきた。二の腕に麒麟の彫り物をした大柄な男だが、真面目な商売の姿勢と豆腐の味が良いことで、ここいらではそこそこ人気がある。
 琥珀の家は村から少し外れているが、同居している猫又の翡翠が豆腐はこの男からしか買わぬと決めているからか、わざわざ足を向けてくれるのだ。
「よう、早ぇな」
「へえ、豆腐売りは朝が勝負なんで。旦那こそ、今日は早起きじゃあないですか」
「たまにはな」
 長い髪を気にもせず頭をかいて、琥珀はあくびをした。
「もしかして、寝てねえんで?」
「・・・今から寝るだけだ」
「深酒もほどほどにしなせえよ。いつもの、翡翠さんに渡しておくんなさい」
「おう」
 厨から桶を出して豆腐を受け取ると、銭を払う。
 豆腐売りはにこりともせずに頭を下げると村の方へ歩いていった。
「・・・ほんと愛想がねえ野郎だな」
 手に豆腐を入れた桶を持ってそれを見送ると、琥珀はもう一度あくびをしてきびすを返した。
「さて、寝るか」
 朝焼けはもう薄れて、朝日が射し始めていた。


お題:「朝焼け」、「琥珀」、「麒麟」で創作しましょう。 #jidaiodai http://shindanmaker.com/138578
琥珀さん、徹夜明けw


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。
にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

拍手[0回]

PR

桜鬼/降臨/さくら さくら HOME あやしの筆

HN:
宵月楼 店主
性別:
非公開
自己紹介:
オリジナルの短い文章を書いています。アニメ、ゲーム、小説、マンガ、音楽、手作り、すべてそれなりに広く浅く趣味の範囲で。
カウンター
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

忍者ブログ [PR]
template by repe