宵月楼－しょうげつろう－

【216】

明け方、ぼんやりと明るくなる窓の外を見ていると、不意に猫の影が横切った。
思わず起き上がり、畳の上を四つんばいで窓に近づく。
だが、力の入らない手で窓を開けてみても、そこには何もいない。
でも、僕は笑った。
大事な約束を思い出したから。もうすぐ、君が迎えに来てくれる。

お題：
「早朝の畳の上」で登場人物が「思い出す」、「猫」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

【217】

三日月から滴る雫を手に受けて、あなたの髪を洗おうか。
黒々と流れる洗い髪に、似合う星はどれだろう。
さそりの紅玉、白鳥の真珠、それとも天狼星の瑠璃色か。
望みのままに捧げよう。
今宵のあなたは夜を統べるにふさわしい。

お題：
「三日月」、「瑠璃」、「洗い髪」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]

【214】

深い闇に支配されたその部屋に閉じ込められたのは、強い魔力を持った魔女。
目も耳も口も意味をなさないその部屋で、彼女はそっと内側から扉をノックし続ける。
やがて、音がかきけされるほど激しい雨の降る晩、彼女は忽然と姿を消した。
外側から、鍵が開けられていた。

お題：
「深夜の密室」で登場人物が「始める」、「雨」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

【215】

浜辺にべっ甲でできた根付が流れ着いていた。
余程波に洗われたのか艶やかな飴色に輝いている。
しかも、かわいらしい兎の形そのままに、手の上でぴょんと跳ねた。
付喪神なのか。
「うちに来るか？」
そう聞くと、兎はうれしそうに耳をふるりと振るわせた。

お題：
「浜辺」、「飴」、「付喪神」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578

これ、ちょっと気に入っています（＾＾）。
浜辺で拾った兎の根付は、きっと拾われて大切に使われるだろうなと。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]

【211】

雷の子が落っこちたのは、まだ早朝の河川敷
散歩をしていた黒犬に頬をぺろりとなめられて
好きにされるわけにはいかぬとにらみつけてはみたものの
心細さに涙がにじむ
空はきれいに晴れ渡り
雷雲欠片も見つからず
雷の子は途方にくれて
終いにわあわあ泣き出した

お題：
「朝の河川敷」で登場人物が「好きにされる」、「雷」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927


【212】

長屋に帰ると、大家がしかめつらしく「今月の家賃は？」なんていいやがるから、適当に言い訳しつつ、囲炉裏に放り込んだ栗のような勢いで逃げ出した。
近所の神社の境内で息を整え、ふと見ると空はどこまでも広い。
いっそ、踏み倒して旅にでも出るかな。

お題：
「境内」、「囲炉裏」、「大家」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578

【213】

胸のここんとこをさ、ぱかっと開く扉がついてるといいなあって思うんだ。
僕の本当の気持ち、ここを開けて直接見せたいなって。
そしたら、ほんとか嘘かなんて一目瞭然でしょ？
そりゃ綺麗な気持ちばっかりじゃないけど、でも君に伝えたい大事な部分だけは自信があるんだよ、僕。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]

【209】

出口のない搭のてっぺんで、今夜も泣き出した彼女の瞳から氷のような金剛石の粒が零れ落ちる。
唯一外と繋がった窓から見える夜空は鉄格子に区切られ、いたるところに貼られた札がすべての生命を寄せ付けず、この密室に捕らわれた彼女は、永劫、富を生み出す為に捕らわれたまま。

お題：
「深夜の密室」で登場人物が「泣き出す」、「氷」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

どこかで見たような情景だと思った方は、たぶん「幽白」を読んだことがある人です（＾＾；）。

【210】

降る雨に下を向いていたのが良くなかった。
誰かがぶつかったと思うた時には、もう印籠はなくなっていたのだ。
腰の刀を抜こうにも武家とは名ばかりの腕ではとても盗人をとらえることなど出来ぬ。
あれだけは高価なものなのだったのだがな。
惜しいことをした。

お題：
「雨」、「印籠」、「武家」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578

のんびりしたお侍のようです。
こういう人だから、きっと印籠は巡り巡って手元に戻ってくるんじゃないでしょうか。
「ああ、戻ってきたのか」
とか、驚きもせず受け入れそう（＾＾；）。
実は印籠は付喪神（つくもがみ／長い間大事に使われた品物が魂を持ったあやかし）で、自分で帰ってくるという裏設定をつけていたんですが、そこまでは１４０字に入りきらなかったです（＾＾；）。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]

【207】

「逢魔が刻？」
不思議そうな顔で繰り返す君に、僕はニヤリと笑って見せる。
「黄昏の魔法。夢と現の境。人とあやかしの入り交じる時間。ほらね」
僕の耳が尖って柔らかい毛に覆われる。
目が緑に染まり、光彩が縦に切れる。
怖がるかな？
でも君は、ただ笑って「知ってたよ」と言った。

お題：
「夕方の屋上」で登場人物が「笑い合う」、「猫」という単語を使ったお話を考えて下さい。 http://shindanmaker.com/28927

猫又くん、正体を現すの巻。
でも、女の感をなめちゃいけません。特に恋する女の子のね（＾＾）

【208】

「関所を抜けるは、女の身には無理なこと。手形が無い限り江戸を出るなど叶いませぬ」
流れてきた雪女は言う。
もうすぐ春。
彼女には暑すぎるのだが、と思案すれば、行灯の炎がふわりと揺れた。
「天狗か」
「我が送ろう」
それはよい。
燕のように空を駆けよう。

お題：
「関所」、「行灯」、「燕」で創作しましょう。 http://shindanmaker.com/138578

あやかしなら自力で何とかしなさい、というツッコミはなしでお願いします（＾＾；；；）。
たぶんね、春近くなって妖力が弱まって、化けるのもやっとな状態なんじゃないかと。
早く北に帰らないと溶けちゃうし、と駆け込んだのが江戸の妖怪の中でも実力者のところで。
無愛想だけど実は人のいい天狗が送ってくれることになったんだと、面白いかなと思いました。
北は酒がうまいし、天狗も何ヶ月か北で暮らすといいですな。


参加しています。もしよろしければクリックお願いします。

にほんブログ村

[0回]